贈与を受けた後の不動産登記は自分でできる?流れや注意点を解説

贈与を受けた後の不動産登記は自分でできる?流れや注意点を解説
執筆者: 日野修亮

はじめに

親などから不動産の贈与を受ける際、トラブル回避のために贈与登記を行う必要があります。しかし、「贈与登記って自分でもできる?」「登記しないとどうなる?」「手続きに必要な書類や費用は?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、不動産の贈与を受けた時に必要な登記手続きについて、流れや必要書類、費用を解説します。贈与登記を自分で行うメリット・デメリットも説明しているので、不動産の贈与を控えている方はぜひ参考にしてください。

第1章 贈与登記とは?しないとどうなる?

不動産の贈与を受けた時には、単に口約束や契約書を交わすだけでなく、登記簿上の名義を変更する贈与登記が必要です。贈与登記は法務局に所有者が変わったことを届け出る手続きで、これを行うことで初めて、第三者に対して「この不動産は自分のものだ」と主張できるようになります。

面倒に思えるかもしれませんが、贈与登記をしないままにしておくと、後からトラブルに繋がる可能性があります。ここでは、贈与登記を怠った場合に実際に起こりうるリスクを解説します。

1-1 第三者に登記されてしまう

贈与を受けた不動産の名義が、登記簿上ではまだ贈与者のままになっていると、他人に先に登記されてしまうリスクがあります。

例えば、父親から子へ土地を贈与する約束をして契約書も交わしたものの、登記をしていなかった場合。その後、父親がその土地を第三者に売却し、その買主が所有権移転登記を済ませてしまったら、登記をした第三者の方が法的に優先されてしまうのです。

これは、民法において「登記をした者が優先される」というルールによるもので、たとえ先に契約していたとしても、登記をしていなければ効力を主張できません。

1-2 相続時に相続財産の一部とみなされる

贈与登記をしていなければ、贈与者が亡くなった際に、その不動産が相続財産とみなされてしまいます。

例えば、生前に父親から子供へ土地が贈与されていた場合でも、登記を行っていなければ登記簿上の名義は父親のままです。その結果、相続人全員で遺産分割協議を行う際に「この土地は本当に贈与されたものなのか」と疑問を持たれ、他の相続人と争いになる可能性があります。

たとえ贈与契約書が存在していたとしても、登記を済ませていなければ確実な証拠とは見なされにくく、登記された名義が基準として扱われます。そのため、贈与されたはずの不動産が遺産分割の対象になってしまい、希望どおりに引継げなくなる恐れがあります。

第2章 自分で不動産の贈与登記をする流れ

不動産の贈与登記は、専門家に依頼しなくても自力で手続きを進められます。自分で不動産の贈与登記をする流れは以下の通りです。

STEP① 贈与対象の不動産を調査する

最初に行うべきは、不動産の現在の権利関係を正確に把握することです。そのためには、法務局の窓口やインターネットの登記情報提供サービスなどで登記事項証明書を取得し、名義や権利関係の情報を確認する必要があります。

登記事項証明書には、不動産の所有者や所在地、地番などの基本的な情報に加えて、抵当権や賃借権などの担保・使用権の設定があるかも記載されています。贈与登記を行う際は、まず贈与者が登記簿上の所有者であることを確認しなければなりません。名義が異なっていた場合は、そのままでは贈与登記を進められないため、別途名義変更や相続登記などの手続きが必要です。

STEP② 必要書類を集める

贈与登記を行うためには、贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)の双方が、あらかじめ必要な書類を準備しておく必要があります。どの書類が必要になるかは、登記の状況や贈与者・受贈者の事情によって異なる場合もありますが、以下のような書類を用意するのが一般的です。

贈与者(あげる人)
  • 登記済権利証または登記識別情報通知書
  • 印鑑証明書
  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 戸籍謄本(氏名の変更がある場合)
  • 住民票または戸籍の附票(住所の変更がある場合)
  • 実印
受贈者(もらう人)
  • 住民票
  • 認印
  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 収入印紙(200円)

書類を取得する際は、平日の日中に役所や法務局への訪問が必要な場合もあるため、スケジュールに余裕をもって準備を進めましょう。

STEP③ 贈与契約書を作成する

贈与登記を行うためには、贈与者と受贈者の間で正式に贈与契約書を作成する必要があります。契約書には、贈与がいつ行われたのか、誰が誰に対して、どの不動産を贈与したのかが明確に分かるように、贈与者・受贈者の氏名と住所、贈与の日付(登記原因日)、対象不動産の正確な表示(登記事項証明書と一致させる)、贈与の合意内容を記載します。

作成した贈与契約書の原本は登記申請時に法務局に提出しますが、控えはトラブル防止のために双方が保管しておくと安心です。

STEP④ 登記申請書を作成する

贈与登記を行うには、法務局に提出するための登記申請書を作成する必要があります。登記申請書は贈与によって不動産の所有者が変わることを申請するための書類で、内容に不備があると手続きが受理されません。

また、登記申請書には登記の目的や原因と日付、不動産の表示、贈与者と受贈者の氏名・住所、添付書類の一覧、登録免許税額などを正確に記載します。不動産の表示は登記事項証明書の記載と完全に一致させる必要があるため、表記ミスには十分注意が必要です。

STEP⑤ 書類を法務局に提出して登記識別情報を受け取る

登記申請書と必要書類一式が揃ったら、不動産の所在地を管轄する法務局に提出しましょう。提出方法は、窓口へ持参する方法と、郵送による申請の2通りがあります。オンライン申請は司法書士などの専門家が利用するため、自分で行う場合は窓口または郵送が一般的です。

法務局に申請が受理されると、内容に不備がなければおよそ1週間〜2週間で登記が完了します。完了後には、登記が完了したことを知らせる登記完了通知と、新たに不動産の名義人となった受贈者宛に登記識別情報通知書が発行されます。

登記識別情報は、不動産を売却したり担保に入れたりする時に必要になります。目隠しシールを剥がさず、第三者に見られたり紛失したりしないよう、大切に保管しておくことが重要です。

第3章 自分で不動産の贈与登記をする際にかかる費用

不動産の贈与登記では、登記に必要な費用だけでなく、複数の税金が発生します。手続き自体は自分で行えば報酬はかかりませんが、税金だけで数十万円〜数百万円単位になるケースも珍しくありません。ここでは、贈与登記をする際にかかる費用を解説します。

3-1 贈与契約書に貼付する印紙代

贈与契約書は印紙税法上の課税文書に該当するため、無償での贈与であっても200円の収入印紙を貼付し、消印を行う必要があります。贈与者と受贈者に1枚ずつの計2通の贈与契約書を作成する場合は、合計400円分の印紙を用意しましょう。印紙の貼り忘れがあった場合、後日に過怠税が課される可能性があるため注意が必要です。

3-2 登録免許税

登録免許税とは、不動産の名義変更や抵当権の設定など、登記手続きを行う際に国へ納める税金です。贈与による所有権移転登記の登録免許税は、以下の計算式で求められます。

登録免許税=固定資産評価額×2%

固定資産評価額とは、市区町村から発行される固定資産評価証明書に記載されている金額のことを指します。売買価格や時価ではない点に注意が必要です。例えば、固定資産評価額が1,000万円の土地を親から贈与された場合、登録免許税は以下のように計算します。

1,000万円×2%=20万円

このように、不動産の評価額が高くなるほど、登録免許税も高額になります。なお、登録免許税は、法務局へ提出する登記申請書に収入印紙を貼付する方法で納付するのが一般的です。

3-3 不動産取得税

不動産取得税とは、土地や建物などの不動産を取得したときに、都道府県に納める地方税です。売買だけでなく、贈与によって不動産を取得した場合も、原則としてこの不動産取得税が課税されます。不動産取得税の基本的な計算方法は以下の通りです。

不動産取得税=固定資産評価額×3%(住宅・土地の場合)

固定資産評価額とは、実際の取引価格ではなく、市区町村が定める評価額を用います。例えば、固定資産評価額が1,000万円の土地を贈与によって取得した場合の不動産取得税は、以下の計算式で求められます。

1,000万円×3%=30万円

このように、登録免許税とあわせて数十万円単位の税負担が生じるケースも少なくありません。ただし、不動産取得税には住宅用不動産を中心とした軽減措置が設けられており、一定の要件を満たすことで税負担が軽くなります。

軽減措置が適用されるかどうかは、不動産の種類や取得時期、自治体ごとの運用によって判断が分かれます。そのため、正確な金額を知りたい場合は、事前に管轄の都道府県税事務所へ確認しておくと安心です。

3-4 贈与税

贈与税とは、個人から財産をもらった時に、受け取った側に課される税金です。不動産を親や祖父母から贈与された場合も例外ではなく、登記とは別に、贈与税の申告と納税が必要になります。

贈与税には、暦年課税と相続時精算課税という2種類の制度があり、どちらを選択するかによって税額や将来の相続税への影響が異なります。

3-4-1 暦年課税

暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額に対して課税される制度です。暦年課税では、毎年110万円の基礎控除が設けられており、この範囲内であれば贈与税はかかりません。暦年課税における課税対象額は、以下の計算で求めます。

課税対象額=不動産の評価額−110万円(基礎控除)

親から子へ不動産を贈与するケースでは、この課税対象額に対して、直系尊属用の特例税率が適用されます。例えば、評価額1,100万円の土地を親から子へ暦年課税で贈与した場合、
課税対象額は1,100万円−110万円=900万円です。この金額は、直系尊属の特例税率では30%の税率区分に該当します。さらに、控除額を差し引いた結果、贈与税の金額は約200万円です。

このように、特例税率が適用されるとはいえ、不動産のように高額な財産を一括で贈与すると、一度の贈与で数百万円単位の贈与税が発生する可能性が高くなっています。

3-4-2 相続時精算課税

相続時精算課税とは、60歳以上の親から18歳以上の子へ贈与する場合に選択できる特例制度です。この制度を選ぶと、累計2,500万円までの贈与については贈与税がかからず、それを超えた部分のみが一律20%の税率で課税されます。

ただし、贈与した不動産が将来の相続時に、相続財産として持ち戻され相続税の計算対象になる点に注意が必要です。贈与時に税金がかからなくても、相続時にまとめて相続税が発生する可能性があるということになります。

さらに、一度この制度を選択すると、その親からの贈与については暦年課税へ戻すことができません。翌年以降に少額の贈与を受けたとしても、110万円の基礎控除は使えなくなるため、長期的に見ると不利になるケースもあります。

相続時精算課税は、不動産のような高額資産を一括で贈与したい場合には有効な制度である一方、将来の相続税まで含めた慎重な判断が欠かせません。贈与登記を進める前に、必ず暦年課税との税額シミュレーションを行ったうえで選択することが重要です。

4章 贈与登記を自分でするメリット・デメリット

ここでは、自分で贈与登記を行う場合のメリットとデメリットを解説します。

4-1 贈与登記を自分でするメリット

贈与登記を自分で行うことで、専門家への依頼費用を削減できます。贈与登記を司法書士に依頼した場合、数万円から十数万円程度の報酬の支払いが必要ですが、自分で行えばこの費用は発生しません。

4-2 贈与登記を自分でするデメリット

自分で贈与登記を行う場合、登記事項証明書や住民票などの書類を集め、贈与契約書や登記申請書を作成し、法務局へ提出する必要があります。これらの手続きは平日に行う必要がある場合が多く、仕事を休んだり、複数回役所へ足を運んだりしなければならないケースも少なくありません。

また、手続きのミスが原因でトラブルに発展するリスクがある点にも注意が必要です。登記申請書の記載ミスや添付書類の不足によって登記が受理されない、登録免許税の計算を誤って不足額を追加で納付しなければならなくなる可能性もあります。

5章 スムーズに贈与登記を終えたいなら司法書士への相談がおすすめ

不動産の贈与登記は自分で手続きすることも可能ですが、登記だけでなく贈与税・不動産取得税・将来の相続まで影響する重要な手続きです。自己判断で進めた結果、登記のやり直しや想定外の税負担、家族間トラブルに繋がるケースも少なくありません。

司法書士に依頼すれば、贈与契約書の確認から登記申請、法務局への提出までを一括で任せられ、記載ミスや書類不備による差し戻しのリスクを減らせます。抵当権付きや共有名義など手続きが複雑なケースにも対応できるため、スムーズに贈与登記を終えたいなら司法書士に相談しましょう。

まとめ

不動産の贈与登記は、自分で行うことも可能ですが、登記手続きだけでなく、登録免許税・不動産取得税・贈与税といった税金の負担や、将来の相続への影響まで考慮が必要な手続きです。特に親から子への贈与では、暦年課税と相続時精算課税の選択によって、税額に大きな差が生じるケースもあります。自分で手続きを行えば費用は抑えられる一方で、書類不備によるやり直しや、税金の申告漏れ、将来の家族間トラブルに繋がるリスクも否定できません。そのため、少しでも不安がある場合は、最初から専門家に相談しておく方が安心して手続きを進められるでしょう。

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この記事の執筆者

日野 修亮(ひの しゅうすけ)

日野 修亮(ひの しゅうすけ)

グリーン司法書士法人 司法書士/シニア相続コンサルタント

相続や不動産に関するご相談を通じて、お客様の不安を安心に変えることを使命とし、誰にでもわかりやすい言葉でのご説明を心がけている。法律面のみならず、ご家族の関係や想いにも配慮しながら、最適な手続きを丁寧にご提案することを大切にしている。

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