相続不動産を早期売却するメリットとは?売る時の流れや注意点も解説

相続不動産を早期売却するメリットとは?売る時の流れや注意点も解説
執筆者: 中西孝志

はじめに

「実家を相続したが遠いので管理が面倒」「固定資産税がかかるし、なるべく早く手放したい」といった理由で、早期売却を検討している方も多いのではないでしょうか。

本記事では、相続不動産を早期売却するメリットを整理したうえで、売却までの流れと注意点を分かりやすく解説します。相続したばかりで「何から始めればいいか分からない」という方は、まず全体像を掴むところから始めてみてください。

第1章 相続不動産を早期売却するメリット

相続不動産をどう扱うかで迷ったとき、「とりあえず様子を見る」「後で考えよう」と判断を先延ばしにしてしまう方は少なくありません。しかし、住む予定のない不動産を保有し続けることで、時間が経過するほど負担が増える傾向にあります。ここでは、相続不動産を早期売却するメリットを見ていきましょう。

1-1 固定資産税を支払わずに済む

相続した不動産を所有している限り、住んでいなくても毎年固定資産税や都市計画税の支払いが発生します。居住や賃貸といった利用目的があれば良いですが、使う予定がなければただ固定資産税を支払っているだけの状況に陥ってしまいます。

固定資産税額は、固定資産課税明細書に記載されている固定資産税評価額に1.4%の税率をかけて求められます。例えば、固定資産税評価額が2,000万円の不動産を相続した場合の固定資産税額は以下の通りです。

2,000万円×1.4%=28万円

たとえ使用予定がなくても、不動産を所有しているだけで固定資産税として数十万円を支払わなければなりません。そのため、売却を検討しているなら、先延ばしにせず早めに行動することが大切です。

1-2 空き家の場合は管理の負担をなくせる

空き家の場合、税金に加えて管理面での負担も無視できません。定期的な換気や清掃、庭木や雑草の手入れ、老朽化に伴う修繕、防犯対策など、最低限の管理を行うだけでも時間と費用が必要になります。これらを怠ると、近隣住民からの苦情や行政からの指導に繋がる可能性もあり、精神的にも負担がかかるでしょう。

さらに、管理不十分な空き家は「特定空き家」に指定されるリスクがあります。特定空き家に指定されると、住宅用地として受けられていた固定資産税の軽減措置が解除され、土地の固定資産税が増額される恐れもあります。結果として、「何も活用していない不動産なのに、以前より税負担が重くなる」という状況に陥るケースも珍しくありません。

相続不動産を早期に売却すれば、こうした固定資産税や管理費用、将来的な税負担増加のリスクを早い段階で断ち切ることが可能です。今後住む予定がなく、将来的にも活用の見込みがない不動産であれば、早期売却はコストとリスクを抑えるための合理的な選択肢と言えるでしょう。

1-3 特例制度を活用して節税できる

相続不動産を売却して利益が出た場合は譲渡所得税が課されますが、相続によって取得した不動産については、一定の条件を満たすことで税負担を軽減できる特例制度が用意されています。

ただし、以下のような特例制度は「相続後、一定期間内に売却すること」を要件としているため、適用するためには早めに売却する必要があります。

1-3-1 空き家特例

空き家特例とは、一定の条件を満たして相続不動産を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。

特例が適用されれば、売却によって利益が出た場合でも、譲渡所得税がかからない、もしくは大幅に軽減される可能性があります。そのため、相続不動産の売却において非常にメリットの大きい制度と言えます。

ただし、空き家特例はすべての相続不動産に使える訳ではありません。主な要件として、被相続人が生前に居住していた住宅であること、一定の築年数・構造要件を満たしていること、区分所有建物(マンション)ではないことなどが定められています。また、売却期限についても制限があり、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却を完了させる必要があります。

この期限を過ぎてしまうと、他の要件を満たしていても空き家特例は適用できません。そのため、特例を活用した節税を考えているなら、相続不動産の売却は早めに取り組む必要があります。

1-3-2 取得費加算の特例

取得費加算の特例とは、相続によって取得した不動産を売却した際に、支払った相続税の一部を取得費に上乗せできる制度です。取得費が増えることで譲渡所得が圧縮され、譲渡所得税の負担を軽減できます。

この特例を利用できるのは、相続税を実際に支払っている場合に限られます。また、売却期限も明確に定められており、相続税の申告期限(相続開始の翌日から10ヶ月後)の翌日から3年以内に売却する必要があります。

なお、取得費加算の特例と空き家特例は併用できません。どちらか一方しか選択できないため、売却時には適用要件や節税効果を比較し、どの特例を利用するのが有利かを慎重に判断する必要があります。

第2章 相続不動産を売却する流れ

相続不動産を売却する流れは以下の通りです。

  1. 遺言書がないかを確認する
  2. 相続財産と相続人を明確にする
  3. 遺言書がない場合は遺産分割協議を行う
  4. 相続登記を行う
  5. 不動産会社に査定を依頼する
  6. 不動産を売却する
  7. 確定申告を行う

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

STEP① 遺言書がないかを確認する

遺言書がある場合、原則としてその内容が優先されます。そのため、相続が発生したら最初に遺言書の有無を確認する必要があります。

後から遺言書の存在が発覚した場合、遺産分割協議を終えていてもその内容は無効になります。売却手続きが最初からになる可能性があるため、最初に遺言書があるのかを丁寧に確認しましょう。

STEP② 相続財産と相続人を明確にする

次に、誰が相続人か、そしてどのような財産があるのかを明確にします。戸籍を収集して法定相続人を確定し、不動産や預貯金、借入金などの相続財産を整理します。不動産については、登記簿謄本や固定資産税評価証明書を取得し、所在地や評価額、権利関係を確認しておくことが重要です。

STEP③ 遺言書がない場合は遺産分割協議を行う

遺言書がない場合、相続不動産を売却するためには、相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産を誰が取得するのかを決める必要があります。遺産分割協議とは、相続財産の分け方について相続人全員で合意する話し合いのことです。

遺産分割協議がまとまっていない段階では、相続人が単独で不動産を売却することはできません。売却を進めるためには、まず「誰の名義で売却するのか」を明確にすることが不可欠です。

また、遺産分割協議では、相続人の一人でも欠けた状態で話し合いを行うと、その協議は無効となります。遠方に住んでいる相続人や、連絡が取りづらい親族がいる場合でも、必ず全員の合意を得なければなりません。

なお、売却を前提とする場合は、共有名義のままにするのではなく、単独名義にする、または換価分割とすることで、後の売却をスムーズに進めやすくなるでしょう。

STEP④ 相続登記を行う

相続登記とは、被相続人名義となっている不動産を、相続人名義へ変更する手続きのことを指します。不動産は、相続登記が完了していなければ原則として売却できません。名義が被相続人のままでは、売買契約の締結や所有権移転が行えないため、売却手続きがそこで止まってしまうのです。

また、2024年から相続登記は義務化されており、正当な理由なく期限内に手続きを行わない場合、過料の対象となる可能性もあります。売却を検討していない場合でも、相続登記は放置せず、早めに対応する必要があります。

STEP⑤ 不動産会社に査定を依頼する

相続登記が完了したら、次に行うのが不動産会社への査定依頼です。早期売却を希望する場合でも、まずは不動産の適正な相場を把握することが欠かせません。

査定を受けることで、「いくらで売れそうか」だけでなく、「どのくらいの期間で売却できそうか」「どのような売却方法が適しているか」といった見通しを立てられます。

STEP⑥ 不動産を売却する

査定内容や売却方針に納得できたら、不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を開始します。仲介による売却では、不動産会社が広告掲載や内覧対応、条件交渉などを行い、買主を探していきます。

売却活動の中で購入希望者が見つかると、価格や引き渡し時期などの条件を調整し、合意に至った段階で売買契約を締結します。その後、代金の決済と不動産の引き渡しを行えば、売却手続きは完了です。

STEP⑦ 確定申告を行う

相続不動産を売却した場合、売却によって利益が出たかにかかわらず、翌年に確定申告が必要なケースが多くなっています。特に空き家特例や取得費加算の特例を利用する場合は、確定申告を行わなければ制度を適用することはできません。申告期限は、不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日までです。この期限を過ぎると、特例が適用できなくなったり、延滞税や加算税が課されたりする可能性があります。

相続不動産の売却に関する確定申告は、計算や書類が複雑になりやすいため、必要に応じて税理士などの専門家に相談すると安心です。売却前から確定申告までを見据えて準備しておくことで、税務面のトラブルを防ぎ、相続不動産の早期売却をスムーズに完了させられるでしょう。

第3章 相続不動産を早期売却する際の注意点

相続不動産を早期売却する際の注意点は以下の通りです。

3-1 相場を把握しないまま売却しない

相続不動産を早期に売却したいと考えるあまり、十分に相場を確認しないまま売却を進めてしまうと、本来よりも安い価格で手放してしまう恐れがあります。早く売りたい気持ちが強いと「この価格でも仕方ない」と判断してしまいがちですが、損をしてしまうかもしれません。

早期売却を目指す場合でも、まずは複数の不動産会社に査定を依頼し、相場感を把握することが重要です。複数社の査定結果を比較することで、適正価格が見えてくるでしょう。

3-2 共有名義にすると売却活動に時間がかかる

相続人が複数いる場合、不動産を共有名義で相続するケースがあります。しかし、共有名義の不動産は、早期売却と相性が悪い点に注意が必要です。

共有名義の不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要となります。相続当初は問題がなくても、時間が経つにつれて「今は売りたくない」「価格に納得できない」といった意見の食い違いが生じることも少なくありません。共有者の1人でも反対すると、売却手続きは進められなくなります。

また、共有者が遠方に住んでいたり、連絡が取りづらくなったりすると、契約書の確認や署名・押印だけでも時間がかかります。結果として、売却のチャンスを逃し、想定していた早期売却が実現できなくなるケースもあります。早期売却を前提とする場合は、遺産分割の段階で共有名義を避け、単独名義にする、または換価分割を行うことをおすすめします。

第4章 早期売却をしたいならすぐに不動産会社に相談しよう

相続不動産を早期に売却したい場合、重要なのは売却活動を始める前から不動産会社に相談しておくことです。相続不動産の売却は、名義変更や遺産分割といった手続きと密接に関係しており、準備が遅れるほど売却までに時間がかかってしまいます。

特に、相続登記が完了していなかったり、相続人の整理ができていなかったりすると「売りたいのに売れない」状態に陥ってしまいます。早期売却を目指すのであれば、売却と相続手続きを切り離して考えるのではなく、同時進行で進める視点が欠かせません。

住まいの賢者では、司法書士法人と連携する不動産会社として、相続開始から売却完了までトータルでサポートしています。無料相談も実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

まとめ

相続不動産の早期売却は、固定資産税や管理負担を早く手放せるだけでなく、空き家特例や取得費加算の特例を活用できる可能性がある点が大きなメリットです。ただし、これらの特例には期限があり、売却を先延ばしにすると節税の機会を逃してしまうおそれがあります。

早期売却を成功させるためには、相場を把握したうえで売却方針を立て、遺産分割や相続登記といった手続きを正しい順番で進めることが重要です。特に相続登記は売却の前提となるため、早めの対応が欠かせません。

住まいの賢者では、司法書士法人と連携する不動産会社として、相続登記や査定など幅広くサポートします。早期売却を実現するためにも、不動産を相続したらお早めにご相談ください。

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相続不動産の早期売却に関してよくある質問

ここでは、相続不動産の早期売却に関してよくある質問に回答します。

遺産分割協議が終わっていなくても売却できますか?

相続人全員が売却に同意していれば、遺産分割協議が完了していない段階でも売却することは可能です。ただし、遺産分割が終わっていない不動産は相続人全員の共有状態となるため、売却するには相続人全員の同意が必要になります。また、売却にあたっては、被相続人名義のままでは手続きを進められないため、一度相続登記を行い、共有名義に変更したうえで売却するのが一般的です。

相続不動産を早期売却したら短期譲渡所得として扱われますか?

譲渡所得が長期か短期かの判断は、相続人が取得した日ではなく、被相続人がその不動産を取得した日を基準に判定されます。そのため、被相続人が5年以上前に取得していた不動産であれば、相続後すぐに売却した場合でも長期譲渡所得となり、税率は低くなります

この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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