相続した借地権は売却できる!3つの方法や流れ、注意点を解説

相続した借地権は売却できる!3つの方法や流れ、注意点を解説
執筆者: 中西孝志

はじめに

相続した財産の中に借地権がある場合、「売却できるのか」「どのように手続きを進めればよいのか」と悩む方は多いのではないでしょうか。

結論から言えば、借地権は相続でき、条件を満たせば売却も可能です。ただし、進め方を誤ると地主とのトラブルや想定外の費用負担に繋がる場合もあります。

本記事では、相続した借地権の売却方法や流れを解説します。借地権を相続してお困りの方はぜひ最後までご覧ください。

1章 そもそも借地権は相続できる?

親が亡くなり実家を相続する段階で、「土地は借地だった」と知って戸惑う方は少なくありません。借地権は土地そのものではなく土地を借りて使う権利ですが、借地権は相続できます。ここでは、借地権が相続財産として扱われる理由と、相続税評価額の考え方を整理します。

1-1 借地権は相続財産として扱われる

借地権とは、地主から土地を借り、そこに建物を所有して住んだり使ったりするための権利です。借地権は財産的価値を持つため、預貯金や不動産と同様に相続財産に含まれます。つまり、借地人が亡くなった場合でも借地権は消滅せず、相続人が引き継ぐのが基本です。

また、借地権を第三者へ売却(譲渡)する場合は地主の承諾が必要になりますが、相続で引き継ぐ際は地主の承諾は必要ありません。ただし、遺言によって相続人以外の人に借地権を譲渡する場合は地主から承諾を得る必要があります。

相続人が借地権を引き継ぐ一般的な相続であれば、必要となる手続きはそれほど多くありません。借地権を相続した旨を地主へ伝えたうえで、建物や借地契約の名義を相続人へ変更すれば、基本的な対応は完了します。

なお、相続が発生したことを理由に、地主から土地の返還を求められるケースもありますが、その要求に応じる必要はありません。借地権は相続によって承継される権利であり、相続を理由として一方的に借地契約を終了させることはできないためです。

1-2 借地権の相続税評価額を計算する方法

借地権は相続財産に含まれるため、相続税の申告が必要な場合には、その相続税評価額を算出する必要があります。借地権の相続税評価額を計算する方法は以下の通りです。

借地権の相続税評価額=自用地評価額×借地権割合

自用地評価額とは、その土地を借地ではなく更地として利用している場合の評価額を指します。土地の相続税評価額を求める方法には、路線価方式と倍率方式の2種類がありますが、どちらの方式が適用されるかは、土地の所在地によって異なります。

路線価方式は、土地が面している道路に設定された路線価をもとに評価額を算出する方法です。一方、倍率方式は、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて評価額を求めます。路線価が設定されている地域では路線価方式、設定されていない地域では倍率方式が用いられるのが一般的です。どちらの方式が適用されるかは、国税庁が公開している路線価図などで確認できます。

また借地権割合とは、更地評価額のうち、借地権が占める価値の割合を示したものです。路線価方式の場合、借地権割合は路線価図上にアルファベットで表示されています。アルファベットが示す借地権割合は以下の通りです。

記号ABCDEFG
借地権割合90%80%70%60%50%40%30%

例えば、道路に「300C」と表示されているケースを考えてみましょう。「300」は1㎡あたり30万円を意味し、この数値をもとに補正や面積を考慮して更地の評価額を計算します。そして、アルファベットの「C」は借地権割合が70%であることを示しています。この場合、算出された更地評価額に70%を掛けることで、借地権の相続税評価額を求めることになります。

もし、更地としての相続税評価額が3,000万円で、借地権割合が70%であれば、借地権の相続税評価額は2,100万円となります。なお、この相続税評価額は、あくまで税金を計算するための基準となる金額です。実際に借地権を売却する際の価格とは一致しないことも多いため、「評価額=売却価格」と判断せず、不動産会社による査定を受けて実勢価格を把握しておくことが重要です。

2章 相続した借地権は売却できる!主な3つの方法を紹介

借地権は相続できるだけでなく、条件を満たせば売却することも可能です。ただし、借地権付きの不動産は通常の不動産と比べて権利関係が複雑なため、売却方法によって進め方や注意点が異なります。ここでは、相続した借地権を売却する代表的な3つの方法について解説します。

2-1 地主以外に借地権付き建物を売却する

立地条件や建物の状態が良ければ、地主以外の第三者に借地権付き建物を売却できる可能性があります。この方法のメリットは、市場原理が働くため、他の方法と比べて比較的高い価格で売却できる可能性がある点です。特に都市部や需要の高いエリアでは、借地権付きであっても一定の評価を受けやすくなります。

一方で、借地権付き建物は、土地の所有権と建物をあわせて売却する場合と比べると、売却しづらい側面があるのも事実です。買主は土地を所有できず、地主との借地関係を引き継ぐことになるため、購入をためらわれやすく、結果として売却までに時間がかかったり、売却価格が相場より低くなったりする場合もあります。

また、借地権付き建物を地主以外に売却する場合には、事前に地主の承諾を得なければなりません。承諾を得られた場合でも承諾料を支払う必要があるため、売却時のコストとして考慮しておくことが重要です。

2-2 地主に借地権付き建物を売却する

相続した借地権の売却方法として、地主に対して借地権付き建物を買い取ってもらう方法もあります。これは、借地人が所有する建物と借地権を、土地の所有者である地主にまとめて売却する形です。

この方法のメリットは、借地権譲渡に関する承諾手続きが不要になる点です。第三者に売却する場合と異なり、地主自身が買主となるため、承諾を得るための交渉や承諾料の支払いが発生しません。売却相手が明確であることから、条件が合えば比較的スムーズに話が進む可能性があります。また、地主に売却すれば、借地関係そのものが解消されるため、将来的な地代の支払いや契約更新、地主との関係性をめぐる不安から解放される点もメリットと言えるでしょう。

一方で、地主には買い取る義務がなく、価格も第三者に売却する場合より低くなりやすいというデメリットがあります。そのため、価格よりも手続きの簡便さや早期の処分を重視する場合に向いている方法と言えるでしょう。

2-3 地主から底地を購入した後に不動産を売却する

相続した借地権の売却方法として、地主から土地(底地)を購入し、完全な所有権にしたうえで売却する方法もあります。土地と建物をあわせて所有する状態になれば、借地権という制約がなくなり、通常の不動産として売却できます。

この方法のメリットは、借地権付きのまま売却する場合より高値で売れる可能性がある点です。また、底地を取得すれば地代の支払いも不要となるため、売却までの維持負担を抑えられるケースもあります。

一方で、地主が底地の売却に応じるとは限らないうえに、購入資金の準備も必要です。交渉や資金計画のハードルが高いため、誰にでも適した方法ではありませんが、条件が整えば有力な選択肢となるでしょう。

3章 相続した借地権を売却する流れ

借地権の売却は、通常の不動産売却と比べて地主対応が加わる分、手順がやや複雑です。ただし、流れを理解しておけば、必要以上に身構える必要はありません。ここでは、相続した借地権を売却する際の一般的な流れを解説します。

3-1 不動産会社に査定を依頼する

まずは、不動産会社に相談し借地権の査定依頼をしましょう。地域特性や土地の面積(坪数)、建物の築年数や状態、近隣における売買成約事例など、複数の要素によって左右されます。単純に立地や建物の条件だけで相場を判断するのは難しく、過去の取引事例を踏まえた現実的な評価が欠かせないのです。

また、借地権を売却する際は、地主に承諾料を支払うのが一般的です。そのため、査定では物件そのものの価値だけでなく、こうした費用を加味したうえで、最終的にどの程度の金額が残るのかを確認しておくことが欠かせません。

借地権の売却を検討する際は、借地権の取り扱い実績がある不動産会社に相談し、価格の目安だけでなく、売却の現実性や想定されるコストまで含めた説明を受けるのが望ましいでしょう。

3-2 地主の承諾を得る

相続した借地権付き建物を地主以外の第三者に売却する場合には、事前に地主の承諾を得る必要があります。借地権は土地の所有権ではないため、借地人が自由に第三者へ譲渡できる訳ではなく、地主の同意を前提として売却手続きを進めるのが原則です。

また、地主の承諾は口頭だけで済ませるべきではありません。後々のトラブルを防ぐためにも、承諾を得た事実は書面で残すことが重要です。地主との交渉が不安な場合は、不動産会社や司法書士に同席してもらうのが望ましいでしょう。

3-2-1 承諾料の計算方法

地主から借地権譲渡の承諾を得る際には、承諾料の支払いを求められるのが一般的です。承諾料の金額に法律上の明確な基準はありませんが、借地権価格10%前後が目安とされています。例えば、借地権価格が500万円の場合、承諾料の目安は50万円ということになります。

3-3 売買契約を締結する

買主が決まったら、事前に合意した条件をもとに売買契約を締結します。借地権付き建物の売買では、通常の不動産取引と異なり、地主の承諾書の有無や承諾料の負担者、承諾が得られなかった場合の対応など、契約条項が重要になります。

そのため、売買契約書の作成は、不動産会社を中心に、必要に応じて司法書士とも連携しながら進めるのが一般的です。売却金額や引渡し時期に加え、借地権特有の条件についても内容を確認し、売主・買主双方が納得したうえで署名・押印を行います。

3-4 借地権譲渡承諾書を作成する

地主が借地権の譲渡に同意した場合には、借地権譲渡承諾書を作成します。借地権譲渡承諾書への記載事項は、譲渡を承諾する旨のほか、承諾料の金額や支払時期などです。後々の認識違いを防ぐためにも、内容は事前にしっかり確認しておきましょう。

3-5 買主に借地権を引き渡す

売買代金の残額を受け取り、建物の引渡しと名義変更を行うことで、借地権を買主へと引き継ぎます。所有権移転登記にかかる費用は、通常は買主が負担します。売主としては、司法書士の案内に従い、実印や印鑑証明書などの必要書類を準備すれば足ります。登記が完了すると、建物と借地権は正式に買主へ移転し、借地権の譲渡に関する一連の手続きは終了となります。

4章 売却が難しい場合は更地に戻しての返還を検討する必要がある

相続した借地権は売却可能ですが、立地条件や建物の老朽化などによっては、どうしても買い手が見つからない場合もあります。その間も管理や地代の支払いといった負担は継続するため、もし売却が難しければ、借地権の地主への返還を検討しましょう。

借地権を返還する際は、原則として建物を解体し、更地の状態で土地を返す必要があります。さらに、建物の解体費用は借地人側が負担するのが一般的です。このように、返還を選択すると、売却のように代金を得ることはできず、費用だけが発生する結果になりやすい点には注意が必要です。

5章 借地権の売却を考えているなら早めに不動産会社に相談しよう

借地権の売却は、条件によって進め方が変わります。第三者への売却が適している場合もあれば、地主への売却や別の選択肢を検討すべきケースもあり、状況に応じて適切な選択が異なるのです。

こうした判断を十分な情報がないまま進めてしまうと、「もっと良い方法があった」「想定より費用がかかった」と後から気づくことになりかねません。売却してから後悔しないためには、事前に不動産会社に相談しておくことが大切です。

早い段階で不動産会社に相談すれば、売却の可否や現実的な価格帯だけでなく、譲渡承諾料などの費用を含めた手取り額の目安も把握できます。また、売却が難しい場合にどのような選択肢があるのかについても、前もって把握することが可能です。

住まいの賢者では、司法書士法人と連携する不動産会社として、複雑な借地権の売却をトータルでサポートしています。無料相談も実施しておりますので、借地権の売却をお考えの方はお早めにご相談ください。

まとめ

借地権は土地の所有権ではありませんが、相続の対象となり、条件を満たせば売却も可能な財産です。相続によって引き継ぐだけであれば地主の承諾は不要である一方、第三者へ売却する場合には承諾が必要になるなど、通常の不動産とは異なる点があります。

また、借地権の売却方法は複数ありますが、個人で最適な方法を判断するのは難しいでしょう。そのため、相続した借地権の売却を検討しているなら、早い段階で不動産会社に相談するのがおすすめです。

住まいの賢者では、経験豊富なスタッフが借地権の売却方法の検討から手続きまで、丁寧にサポートします。借地権を相続したことによる支払いや管理の負担をカットしたい方は、お早めにご相談ください。

不動産の無料相談なら
あんしんリーガル

電話相談は9:00〜20:00(土日祝09:00〜18:00)で受付中です。
「不動産のブログをみた」とお問い合わせいただけるとスムーズです。

相続した借地権に関してよくある質問

ここでは、相続した借地権に関してよくある質問に回答します。

借地権も相続登記が必要ですか?

借地権は登記されていないケースが多く、その場合、相続登記は不要です。一方で、借地上に建っている建物については相続登記が必須です。建物は不動産の所有権として登記の対象となるため、相続によって取得した場合には、名義を相続人に変更しなければなりません。

借地権を相続した場合、確定申告は必須ですか?

相続財産が基礎控除額以下の場合は相続税がかからないため、原則申告する必要はありません。ただし、配偶者の税額の軽減や小規模宅地等の特例などを適用する際は、確定申告する必要があります。

この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

⇒ 執筆者一覧はこちら