目次
はじめに
相続によって取得した不動産を売却する際、登記手続きや仲介手数料、税金などさまざまな費用がかかります。また、売却にかかる費用の算出方法には複雑なルールがあり、節税につながる制度を活用できるかどうかで納税額が大きく変わるため注意しましょう。
本記事では、相続不動産の売却にかかる費用と計算方法を解説します。これから売却を検討している方は参考にしてください。
第1章 相続不動産を売却する前に知っておくべきこと
売却前の準備が不足していると、スムーズに手続きが進まないこともあります。相続した不動産を売却する前に、まずは前提条件を押さえておきましょう。
では、売却に着手する前に確認しておきたいポイントを紹介します。
1-1 相続登記が完了していないと売却ができない
相続した不動産を売却する場合、売却するためには相続登記を済ませて所有者としての名義を変更する必要があります。相続登記とは、不動産の名義を被相続人(亡くなった方)から相続人へ正式に移す手続きのことです。
相続登記が完了していない状態では、不動産の売買契約を結ぶことも、登記簿上での名義変更もできません。また、2024年4月からは相続登記が義務化され、正当な理由なく放置した場合には10万円以下の過料が科される可能性もあります。
売却を検討している場合は、まず速やかに相続登記を済ませることが大前提です。
1-2 売却時は税金がかかる
相続不動産を売却すると、売却益が発生した場合に譲渡所得税が課税されます。譲渡所得とは、売却価格から不動産の取得費や譲渡費用を差し引いた金額のことです。
不動産の取得費が不明な場合や売却益が大きい場合には、税額も高くなる可能性があるため注意しましょう。特に、相続で取得した不動産は取得費の確認が難しく、税負担が大きくなるケースも珍しくありません。
そのため、売却前に税金の概算額を把握しておくことが重要です。
1-3 相続不動産の売却は確定申告が必要
相続不動産を売却して利益が出た場合、翌年の確定申告で内容を申告する義務があります。
確定申告を怠ると、延滞税や加算税などのペナルティが課される可能性があるため注意が必要です。また、売却益がなかった場合や特別控除の適用によって非課税になった場合でも、税務署に申告しなければならないケースがあるため、専門家に相談して確認しながら進めると安心でしょう。
第2章 相続不動産の売却にかかる費用
相続不動産を売却する際は費用が発生します。手元に残る金額を正確に把握するためには、費用がどれくらいかかるかを事前に理解しておくことが不可欠です。
では、相続不動産売却時にかかる費用を解説します。
2-1 登記費用
売却に先立って必要となるのが相続登記です。手続きが複雑なため、司法書士に依頼することが一般的で、登記費用には登録免許税や司法書士への報酬がかかります。
司法書士への報酬は5万円〜10万円程度、登録免許税は「不動産の課税標準額×0.4%(税率)」が目安です。
また、売却後には買主への所有権移転登記が必要となりますが、こちらの登記費用は原則として買主側の負担となります。
2-2 仲介手数料
不動産会社に売却を依頼した場合、契約成立時に仲介手数料を支払うことになります。
仲介手数料は法律で上限が定められており、売却価格が400万円を超える場合は「売却価格×3%+6万円+消費税」が一般的な手数料です。
例えば、3,000万円で売却した場合、仲介手数料はおおよそ105万円程度になります。不動産会社によっては無料査定やサービス割引がありますが、手数料の安さだけではなく、信頼性や販売力も重視して選びましょう。
2-3 譲渡所得税
不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が発生します。
売却益(譲渡所得)に対して、所得税や住民税、復興特別所得税が課税されるもので、所有期間が5年以下か5年超かによって税率が変わります。
| 5年以下の所有(短期譲渡所得) | 約39%の税率 |
|---|---|
| 5年超の所有(長期譲渡所得) | 約20%の税率 |
相続による取得は、被相続人が取得した日が起点となるため、被相続人が長年所有していた不動産であれば、多くのケースで長期譲渡所得の扱いになるでしょう。
売却益が大きいと納税額も高額になるため、節税対策が必要です。
第3章 譲渡所得の計算方法と取得費がわからない場合の対処法
相続不動産を売却する際、譲渡所得税を正しく計算するには、取得費(購入時の金額)が必要です。しかし、相続した不動産は数十年前に取得されたケースも多く、資料が残っていないことも珍しくありません。
ここからは、譲渡所得の計算方法と取得費が不明な場合の対応策を解説します。
3-1 【取得費がわかる場合】譲渡所得の計算方法
譲渡所得は、以下の計算式で求めます。
| 譲渡所得 = 譲渡価格 -(取得費 + 譲渡費用) |
| 譲渡価格 | 売買契約で決めた売却額のこと消費税を含まない金額で計算される |
|---|---|
| 取得費 | 購入価格のほか購入時に支払った仲介手数料・登記費用・不動産取得税など |
| 譲渡費用 | 売却時にかかる仲介手数料、建物解体費、測量費、契約書に貼る印紙代など |
例えば、譲渡価格が3,000万円で、取得費が1,000万円、譲渡費用が100万円であれば、譲渡所得は1,900万円となります。
譲渡所得が多くなるほど税額も増加するため、正確に計算を行いましょう。
3-2 【取得費が不明な場合】概算取得費を使った計算方法
相続した不動産の取得費が不明な場合は、概算取得費で計算する方法があります。
これは、譲渡価格の5%を取得費とみなす制度です。例えば、売却価格が4,000万円であれば、概算取得費は200万円となります。
概算取得費を使用する方法は手軽ですが、実際の取得費が5%より多い場合は、税金を多く払うことになり不利です。そのため、購入時にかかった費用の詳細が不明なケースでの「やむを得ない選択肢」といえるでしょう。
3-3 過去の資料から取得費を調べる方法
取得費は、以下の資料から調べることが可能です。
- 売買契約書
- 領収書
- 不動産売買の重要事項説明書
- 登記済証
- 住宅ローンの契約書
万が一手元に見つからない場合でも、以下の方法で調査できるため確認しましょう。
- 法務局で登記情報を取得し、過去の所有者や売買時期を確認する
- 当時の不動産会社に問い合わせ、契約履歴を確認する
- 金融機関に住宅ローン契約書や融資実行額を照会する
- 家族・親族が保管している資料を探す
また、固定資産税の評価証明書や市町村の課税明細書から、おおよその取得価格を類推できる場合もあります。
古い資料でも有効となることがあるため、わずかな手がかりも見逃さず探しましょう。
3-4 税理士などの専門家に相談する
取得費の算出や譲渡所得税の計算に不安がある場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
特に、相続不動産の場合、古い物件で取得費の証明が困難なケースが多く、自己判断で概算取得費を用いた結果、過剰な税金を支払ってしまうリスクもゼロではありません。
専門家への報酬は発生しますが、適切な節税効果と安心感を得られるため、費用以上の価値があります。可能であれば、相続不動産の売却に詳しい専門家を選ぶとよいでしょう。
第4章 費用を抑えるために知っておきたい制度
相続不動産の売却には、取得費や登記費用などの費用がかかりますが、節税につながる制度も用意されています。適切に利用することで費用を抑えることも可能となるでしょう。
ここからは、代表的な2つの特例制度を解説します。
4-1 3,000万円特別控除
3,000万円特別控除は、被相続人が住んでいた住宅を相続し、その後売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。
控除対象となるのはマイホームに該当する物件で、以下の条件を満たす必要があります。
- 被相続人が居住していた不動産であること
- 自分が住んでいる家屋か住まなくなってから3年以内に売却していること
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
3,000万円特別控除を活用することで、譲渡所得税が非課税または大幅に軽減される可能性があります。ただし、3,000万円特別控除は、確定申告を行わなければ適用を受けることができないため、忘れずに手続きしましょう。
4-2 取得費加算の特例
相続税を支払った場合、その一部を取得費に加算できる制度です。これにより譲渡所得を減らし、税負担を軽減することが可能になります。
取得費加算の特例を適用できる条件は以下のとおりです。
- 相続や遺贈で財産を取得していること
- 相続開始から3年10ヶ月以内に売却すること
- 財産の取得者に相続税が課税されていること
取得費加算の特例は、3,000万円控除と併用可能なケースもあります。ただし、個別の事情により異なるため、事前に専門家に確認してから申告を行うことをおすすめします。
第5章 相続不動産を売却する際のポイント
相続不動産の売却には多くの手続きや調査が必要です。準備不足のまま進めると、思わぬ税負担や売却の遅れにつながる可能性があります。
では、相続不動産を売却する際のポイントをFAQ形式で解説します。
5-1 共有名義になっている不動産は売れますか?
共有名義の場合、共有者全員の同意がなければ売却できません。
例えば、兄弟姉妹で不動産を共有している場合、一人でも反対すると売却はできません。
共有者の人数が多いほど調整が煩雑になるため、あらかじめ話し合いの場を設け、意見をまとめておくことが重要です。可能であれば、共有者間で不動産の分割協議を行い、売却前に単独名義に変更する方法もあります。
また、名義変更には贈与税や登録免許税がかかることもあるため、税理士や司法書士に相談しながら進めましょう。
5-2 名義の確認はどこでできますか?
相続した不動産の名義は、法務局で登記事項証明書(不動産登記簿謄本)を取得することで確認できます。最寄りの法務局で申請するか、オンラインで請求も可能です。
登記事項証明書には、所有者の氏名や住所、不動産の権利関係が記載されています。登記情報が古い場合、名義が故人のままになっていることもあるため、相続登記を済ませてから売却の手続きに入りましょう。
5-3 売却するタイミングはいつがおすすめですか?
節税面を考えると、相続発生から3年以内の売却がおすすめです。
この期間内であれば、取得費加算の特例や3,000万円控除などの優遇制度が適用しやすく、税負担を軽減できる可能性が高まります。
また、築年数の古い不動産や空き家は時間が経つほど資産価値が下がる傾向があるため、売却を検討しているのであれば、早めに動くことが得策です。不動産市場の動向もあわせてチェックしておくと、より有利な売却時期を見極めやすくなります。
5-4 売却の前にやっておくべきことはありますか?
まずは、不動産の調査と相続登記の2点が最優先です。
土地・建物の状況や権利関係を把握するために、登記簿や固定資産税課税明細書、測量図などを確認しましょう。建物が古い場合は、耐震性や雨漏りなどの不具合もチェックするべきポイントです。
次に、遺産分割協議が済んでいるかどうかも重要です。協議書が未作成だと、誰が不動産を売却できるかが不明確になり、手続きが進められません。相続人全員で話し合いをして、遺産分割協議書を作成しておきましょう。
第6章 相続財産が売却できたら確定申告をしよう
相続不動産の売却が完了し、譲渡所得が発生した場合は確定申告を行わなければなりません。確定申告を怠ると、追徴課税や延滞税の対象となるため注意が必要です。
ここからは、確定申告に関する基本情報を解説します。
6-1 確定申告で必要な書類一覧
確定申告を行う際に必要となる書類は以下の通りです。
- 不動産売買契約書
- 登記事項証明書
- 譲渡費用の領収書
- 取得費に関する資料
- 住民票
- 相続税申告書控え
- 確定申告書B、譲渡所得の内訳書
書類を揃えることに不安がある場合は、税理士などの専門家に相談することでスムーズな申告が可能になります。
6-2 確定申告の期限と提出先
不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までが、確定申告の提出期間です。
提出先は、納税者の住所地を管轄する税務署になります。期限を過ぎて申告した場合、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課されることがあるため注意が必要です。
控除制度を適用する場合は、添付書類の提出を忘れずに行いましょう。
6-3 相続不動産の売却で確定申告が不要なケース
原則として、相続不動産を売却して譲渡所得が生じた場合は確定申告が必要です。
ただし、以下のケースでは不要になる可能性があります。
- 売却によって損失(譲渡損)が出た場合
- 3,000万円特別控除を適用し、譲渡所得がゼロになった場合
それでも、3,000万円特別控除の適用を受けるためには申告書の提出が必要となるため、完全に「不要」というわけではありません。
状況に応じて税務署または税理士に確認を取り、適切なアドバイスを受けましょう。
まとめ:相続不動産の売却は専門家に早めに相談して節税しよう!
相続不動産の売却には、譲渡所得税や仲介手数料などの費用が発生します。
しかし、3,000万円の特別控除や取得費加算の特例などの制度を活用すれば、税負担を大きく軽減できる可能性があります。節税制度を最大限に活用するには、売却時期や申告のタイミングも含めて戦略的な判断が欠かせません。
相続不動産の売却で損をしないためには、早く動くことと正確な知識が重要です。資産を有効に活用するためにも、わからないことや不安がある場合は、税理士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
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