税制改正によって広大地評価は廃止!地積規模の大きな宅地とは違う?

税制改正によって広大地評価は廃止!地積規模の大きな宅地とは違う?
執筆者: 木村道哉

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はじめに

相続税の土地評価において利用されていた広大地評価ですが、2018年の税制改正によって廃止され、新たに「地積規模の大きな宅地の評価」へと移行しました。

広大地評価では、一定の要件を満たす土地を大幅に減額して評価できるメリットがありましたが、適用条件が曖昧で専門家によって判断が分かれるなど、不公平感も指摘されていました。改正後の新制度では、明確な基準をもとに土地の規模を考慮して評価する仕組みに変わり、より公平な扱いがなされるようになっています。

本記事では、広大地評価から地積規模の大きな宅地評価へと変わった背景や、それぞれの違いについて解説します。地積規模の大きな宅地の評価の計算方法や、相続の注意点も説明しているので、大きな宅地を相続予定の方はぜひ参考にしてください。

第1章 税制改正によって広大地の評価が廃止されて地積規模の大きな宅地へ

相続税の土地評価において長く利用されてきた広大地評価は、2018年の税制改正で廃止されました。その代わりに導入されたのが、地積規模の大きな宅地の評価です。ここでは、それぞれの適用条件や評価方法の違いを見ていきましょう。

1-1 広大地評価と地積規模の大きな宅地の評価の適用条件

広大地評価を利用するためには、その地域の標準的な宅地に比べて著しく広大であることが求められます。具体的に何㎡以上という明確な基準はなく、開発許可基準面積や最低敷地面積、周辺の地価調査などを参考に総合的に判断されていました。

また、開発行為を行う際に道路や公園といった公共公益施設の用地が必要とされることも条件とされ、特に奥行きが長い土地や間口が極端に狭い土地では道路の設置が必要と判断されるケースが多くあったのが特徴です。また、大規模工場用地に該当する土地や、マンション用地として適している土地については広大地評価の対象外でした。

一方、現在の地積規模の大きな宅地の評価では、適用条件が明確に定められています。具体的には、三大都市圏(首都圏・近畿圏・中部圏)にある場合は500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の宅地であることが基本的な条件です。さらに、路線価地域では普通住宅地区または普通商業・併用住宅地区に所在する必要があり、倍率地域では一定規模以上であれば適用可能とされています。

このように、新制度では基準が明文化されており、旧制度のような解釈のばらつきが少なくなった点が大きな特徴です。

1-2 広大地と地積規模の大きな宅地の評価方法の違い

旧制度である広大地評価では、土地の評価額を以下の算式で求めていました。

広大地の価額=路線価 × 広大地補正率 × 地積

このとき用いられる広大地補正率は次の通りです。

広大地補正率=0.6-0.05×(地積÷1,000㎡)

ただし補正率は0.35が下限とされており、地積が大きいほど補正率が小さくなり、評価額が減額される仕組みでした。倍率地域の場合は、標準的な形状を仮定した1㎡あたりの価額を路線価の代わりに用いて同じ計算を行います。

一方、2018年の改正で導入された地積規模の大きな宅地の評価では、路線価地域では以下の算式が使われます。

評価額=路線価 × 奥行価格補正率 × 不整形地補正率 × 規模格差補正率 × 地積

倍率地域の場合は、固定資産税評価額に倍率を乗じた額もしくは各種補正率と規模格差補正率を用いて算定した額のいずれか低い方を採用します。規模格差補正率は、土地の規模や所在地域に応じて段階的に設定される仕組みで、規模が大きいほど補正率が小さくなり、評価額が減額される仕組みです。

つまり、広大地評価は一律の補正率で大幅減額を可能にしていたのに対し、地積規模の大きな宅地の評価では地域や規模に応じた段階的な基準が設けられ、公平性と合理性が高められているのが大きな違いです。

詳しい評価方法については、第3章で解説しているので、併せて確認してみてください。

第2章 広大地評価が税制改正で廃止された理由

広大地評価は、相続税の土地評価において大幅な減額が可能になる制度として、多くの納税者に利用されてきました。しかし、以下のような理由で2018年の税制改正によって廃止され、その役割は地積規模の大きな宅地の評価へと引き継がれています。

2-1 土地の形状が考慮されず不公平感があったから

広大地評価では、土地の面積が大きいかどうかを基準に評価額を減額する仕組みが採用されていました。しかし、この制度は土地の形状や利用状況を十分に考慮していなかったため、不公平感が生まれやすいという欠点がありました。

例えば、細長い土地や奥行きが深い土地など、開発の際に道路や公園などを整備する必要がある場合には、土地の利用価値は下がります。一方で、形が整っていてそのまま宅地分譲できるような土地であっても、面積が広いという理由だけで同じ割合の減額が適用されていました。その結果、立地条件や形状によって実際の利用価値が大きく異なるにもかかわらず、評価額に差が出ないケースが多く見られたのです。

2-2 専門家によっても解釈にばらつきがあったから

広大地評価の大きな課題は、適用条件があいまいだったことにあります。制度上は「標準的な宅地に比べて著しく広大であること」や「開発行為の際に公共用地が必要であること」といった要件が示されていましたが、具体的な数値や明確な基準がなく、判断が専門家の解釈に委ねられていました。

その結果、同じような規模・形状の土地であっても、ある税理士は「広大地に該当する」と判断し、別の専門家は「対象外」とみなすといったケースが少なくありませんでした。

こうした運用の不透明さや解釈のばらつきは、制度そのものへの信頼性を損なうものだったため、2018年の税制改正で地積規模の大きな宅地の評価へと移行する決定が下されたのです。

第3章 地積規模の大きな宅地の評価の計算方法

先述の通り、地積規模の大きな宅地の評価は、評価額=路線価 × 奥行価格補正率 × 不整形地補正率 × 規模格差補正率 × 地積によって求められます。路線価や奥行価格補正率、不整形地補正率は国税庁が公表しているもので、土地の場所・形状・規模によって異なります。また、規模格差補正率の計算方法は以下の通りです。

規模格差補正率 = (A × B + C)/ 地積規模の大きな宅地の地積(A) × 0.8

ここでは、地積規模の大きな宅地の評価の計算方法を見ていきましょう。

3-1 三大都市圏に所在する宅地

三大都市圏に所在する宅地における、地積に応じたBとCの値は以下の通りです。

地積普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
BC
500㎡以上1,000㎡未満0.9525
1,000㎡以上3,000㎡未満0.9075
3,000㎡以上5,000㎡未満0.85225
5,000㎡以上0.80475

出展:国税庁「No.4609 地積規模の大きな宅地の評価」

路線価が20万円、奥行価格補正率が0.95、不整形地補正率が1.0、地積1,200㎡の場合をシミュレーションしましょう。規模格差補正率は、(1,200 × 0.90 + 75)÷ 1,200 × 0.8 = 0.77です。それを地積規模の大きな宅地の評価の計算式に当てはめると、以下のようになります。

200,000円 × 0.95 × 1.0 × 0.77 × 1,200㎡ = 175,560,000円(1億7,556万円)

規模格差補正率を使わなければ、200,000円 × 0.95 × 1,200㎡ = 228,000,000円(2億2,800万円)となるため、約5,240万円の評価減が認められる計算になります。

3-2 三大都市圏以外の地域に所在する宅地

三大都市圏以外に所在する宅地における、地積に応じたBとCの値は以下の通りです。

地積普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
BC
1,000㎡以上3,000㎡未満0.90100
3,000㎡以上5,000㎡未満0.85250
5,000㎡以上0.80500

出展:国税庁「No.4609 地積規模の大きな宅地の評価」

路線価が20万円、奥行価格補正率が0.95、不整形地補正率が1.0、地積1,200㎡の場合を想定します。規模格差補正率は、(1,200 × 0.90 + 100)÷ 1,200 × 0.8 = 0.78です。この数値を地積規模の大きな宅地の評価の計算式に当てはめると、以下のようになります。

200,000円 × 0.95 × 1.0 × 0.78 × 1,200㎡ = 177,840,000円(1億7,784万円)

規模格差補正率を使わなければ、200,000円 × 0.95 × 1,200㎡ = 228,000,000円(2億2,800万円)となるため、約5,244万円の評価減が認められる計算です。

3-3 倍率地域に所在する宅地

倍率地域にある宅地の場合、評価額は以下2種類の計算方法のいずれか低い方が採用されます。

  1. 固定資産税評価額 × 倍率
  2. 1㎡あたりの価額 × 各種補正率(奥行価格補正率・不整形地補正率・規模格差補正率) × 地積

例えば、固定資産税評価額が3,000万円、評価倍率が1.1倍、標準宅地の1㎡あたりの価額が3万円と仮定しましょう。倍率方式では、3,000万円 × 1.1 = 3,300万円です。

地積規模の大きな宅地の評価では、標準宅地1㎡あたりの価額を3万円 × 1.1 = 3万3,000円、奥行価格補正率0.98、不整形地補正率1.0、規模格差補正率0.78(地積1,200㎡、三大都市圏以外1,000〜3,000㎡のケース)、地積1,200㎡のケースを想定します。

これを計算式に当てはめると、33,000円 × 0.98 × 1.0 × 0.78 × 1,200㎡ = 30,270,240円(3,027万240円) となります。低い方を採用するため、相続税評価額は3,027万240円です。

第4章 地積規模の大きな宅地を相続する際の注意点

地積規模の大きな宅地を相続する際の注意点は以下の通りです。

  • 共有分割にするとトラブルになりやすい
  • 遺産分割をすると適用できない場合が多い
  • 面積は筆単位ではなく画地単位で判定される

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

4-1 共有分割にするとトラブルになりやすい

相続した大きな土地を複数の相続人で共有する方法は、一見すると公平に思えるかもしれません。しかし、共有状態のままでは活用や売却の度に相続人全員の同意が必要となり、意見の食い違いからトラブルに発展しやすいのが実情です。

例えば、ある相続人は土地を売却して現金化したいと考えていても、別の相続人は将来の活用を見据えて保有を希望するかもしれません。こうした意見の対立が長引けば、相続手続きが進まず、土地が塩漬け状態になってしまう可能性もあります。さらに、共有のままでは不動産を担保にローンを組むことや、建物を新築することも難しくなるケースがあります。

地積規模の大きな宅地は金額が大きい分、相続人同士の利害がぶつかりやすいため、共有分割は避けるのが無難です。換価分割や代償分割といった方法を取り入れることで、将来的なトラブルを未然に防げます。

4-2 分割して利用すると適用できない場合が多い

地積規模の大きな宅地の評価は、一定の面積を有する一体の宅地であることが前提です。そのため、相続人同士で土地を細かく分割してしまうと、各宅地の面積が要件を満たさなくなり、特例の適用が受けられなくなってしまいます。具体的には、共同相続した大きな土地に相続人がそれぞれ住宅を建てるなどが該当します。

例えば、1,200㎡の土地を2人の相続人で600㎡ずつに分けた場合、三大都市圏では500㎡以上が条件なので要件を満たしますが、地方圏では1,000㎡以上が条件となるため、分割後の土地は対象外になってしまいます。こうしたケースでは、本来であれば特例によって評価額を下げられるはずが、分割方法の選択によって大きな税負担を抱えることになりかねません。

また、この特例の判定は相続税の申告期限時点の状況を基準に行われます。遺産分割を検討する際には、まず適用要件を満たすかどうか確認し、節税メリットを損なわない方法を選ぶことが重要です。

4-3 面積は筆単位ではなく画地単位で判定される

地積規模の大きな宅地に該当するかどうかを判断する時に気をつけたいのが、面積の数え方です。基準になるのは登記簿上に区切られている筆ごとの面積ではなく、実際にひとつの宅地として利用している画地単位です。

筆とは、登記簿で管理されている土地の区切りのことを指します。一方の画地は、現実に一体として使っている土地の単位を指します。塀や道路で区切られず、庭や駐車場としてまとめて使っていれば、複数の筆に分かれていても一つの画地とみなされるのです。

そのため、登記簿上では500㎡に満たない土地が2筆に分かれていても、実際に一つの宅地として利用していれば合計して判定されます。逆に、登記上は1筆であっても、形が複雑で実際には別々に利用しているような場合には、一体の宅地と見なされない場合があります。

まとめ:地積規模の大きな宅地を相続予定の方は専門家に相談しよう

広大地評価は2018年に廃止され、現在は地積規模の大きな宅地の評価が適用されています。旧制度は大幅な減額が可能でしたが、基準が曖昧で不公平感がありました。新制度では面積基準や補正率が明確になり、公平で合理的な評価ができるようになっています。

ただし、共有分割や遺産分割の方法によっては適用が受けられないことや、筆ではなく画地で判定されるため誤解が生じることなど、注意すべき点も少なくありません。相続税額に大きく影響する制度だからこそ、早めに専門家へ確認しておくことが大切です。

住まいの賢者では、司法書士法人グループに参加する不動産会社として、相続や土地活用に関する相談を承っています。相続予定の土地が制度の対象になるか不安な方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者

木村 道哉(きむら みちや)

木村 道哉(きむら みちや)

グリーン税理士法人 代表社員/税理士/弁護士

早稲田大学法学部卒。都内大手税理士法人のインハウスロイヤーとして経験を積んだ後、木村道哉税理士事務所を開業。資産税(相続税・贈与税)を中心とした申告業務に携わり、相続人間に紛争が生じた場合の相続税申告業務に詳しい。

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