目次
はじめに
土地や建物を無償で貸し借りする「使用貸借」は、親族間でよく見られる契約形態です。しかし、貸主や借主が亡くなった際に、その契約がどのように扱われるのかは、意外と知られていません。
この記事では、使用貸借が相続の対象となるのかや、相続税評価額の計算方法について解説します。相続時のトラブルを未然に防ぎ、適切な税務対応を行うための参考にしてください。
第1章 使用貸借とは
使用貸借とは、貸主が借主に対して無償で物を貸し出し、借主がその物を使用または収益した後、契約終了時に返還する契約形態です。
この契約は2020年の民法改正により、物の引き渡しがなくても合意だけで成立する「諾成契約」となりました。親族や友人間で行われることが多く、契約書を作成せずに口頭で締結されるケースもあります。
第2章 使用貸借は相続の対象となる?
使用貸借契約は、当事者の死亡によってその効力がどのなるのかが重要な論点となります。特に、貸主または借主が死亡した場合に契約が継続するのか終了するのかは、相続人にとって大きな関心事でしょう。
2-1 借主死亡時に使用貸借は原則として終了する
使用貸借契約は借主が死亡した場合、原則として終了します。使用貸借は貸主と借主の信頼関係に基づく契約であり、借主の死亡でその関係が失われると考えられるためです。借主の相続人が契約を引き継ぐことは、通常できません。
ただし、例外的に使用貸借契約が継続される場合もあります。例えば、土地の使用貸借契約が建物の所有を目的としており、借主の死亡後も相続人が建物を使用し続ける必要があると認められるケースです。
このような場合、裁判所は当事者間の意思や契約の目的を考慮して、契約の継続を認めるかどうかを判断します。
2-2 貸主死亡時には使用貸借は継続する
貸主が死亡した場合、使用貸借契約は原則として継続されます。貸主の地位は相続人に引き継がれ、相続人が新たな貸主として契約関係を承継します。そのため、借主は引き続き使用貸借契約に基づいて物件を使用できます。
ただし、相続人が複数いる場合や遺産分割が未了の場合、誰が貸主としての地位を有するかが明確でないことも珍しくありません。この場合、相続人全員が共同で貸主となるため、借主は相続人全員との間で契約を継続することになります。
また、相続人が使用貸借契約の終了を望む場合、契約の内容や目的に応じて、契約を終了させることができる場合もあります。
2-3 相続人は原則として使用貸借をいつでも終了できる
貸主が死亡した場合に承継された使用貸借契約について、相続人はいつでも終了させられます。使用貸借が無償であるため、貸主(相続人)の意思により契約を終了できるとされているのです。
ただし、契約に期間や使用目的が定められている場合、相続人が契約を終了させるには、使用収益に足りる期間が経過している必要があります。
例えば、建物の所有を目的とした土地の使用貸借では、建物の使用が継続している限り、相続人が一方的に契約を終了させることは難しいとされています。
第3章 使用貸借が相続の対象となる例外的なケース
使用貸借が相続の対象となる例外的なケースは、主に以下の3つがあります。
3-1 別段の定めがあるケース
使用貸借契約において、借主が死亡した場合でも契約を継続させる旨の「別段の定め」がある場合、相続人が借主の地位を承継できます。
民法第597条第3項の「使用貸借は、借主の死亡によって終了する」が任意規定であり、当事者間で契約内容を自由に定められるからです。
具体的には、契約書に「借主の死亡後も相続人が使用を継続する」と明記されていれば、相続人は引き続き使用貸借契約の権利を有することになります。
ただし、契約書が存在しない口頭契約の場合、別段の定めがあったかどうかの証明が難しくなるでしょう。親族間での使用貸借契約では、将来的な相続トラブルを防ぐためにも、契約内容を明文化しておくことが重要です。
3-2 当事者間の通常の意思解釈に基づくケース
使用貸借契約において、借主が死亡した場合でも、当事者間の通常の意思解釈により契約が継続すると判断されるケースがあります。
特に、建物所有を目的とした土地の使用貸借契約では、建物の使用収益の必要性が継続するのであれば、借主の死亡によって契約が当然に終了するとは限りません。
3-3 黙示の承諾が認められるケース
使用貸借契約において、借主が死亡した後も相続人が引き続き目的物を使用し、貸主がこれを知りながら異議を述べなかった場合、黙示の承諾があったものとして契約の継続が認められることがあります。
これは、貸主の黙認により、相続人との間に新たな使用貸借契約が成立したと解釈されるためです。このような黙示の承諾が認められるかどうかは、具体的な事情や当事者の行動により判断されます。
第4章 使用貸借の相続税評価額を計算する方法
使用貸借の相続税評価額の計算は、借主が個人か法人かで異なります。
4-1 借主が個人の場合
個人が使用貸借により土地を無償で借りている場合、借主の死亡時における使用借権の相続税評価額は「ゼロ」とされます。使用借権が無償であり、法的に弱い権利と見なされているため、相続財産として評価の対象外となるからです。
したがって、借主が死亡しても、使用借権に対して相続税は課税されません。一方、貸主が死亡した場合、貸していた土地は「自用地」として評価され、相続税の課税対象となります。
使用貸借契約が存在していても、貸主の土地の評価額に影響はなく、通常の自用地評価額が適用されます。
4-2 借主が法人の場合
法人が使用貸借により土地を無償で借りている場合、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出していれば、借地権の評価額は「ゼロ」とされます。
法人が将来的に土地を無償で返還する意思を示していると認められ、借地権の評価が不要となるためです。しかし、届出書を提出していなければ、法人が借地権を取得したとみなされ、借地権の評価額が発生します。
この場合、借地権の評価額は「自用地評価額×借地権割合」で計算され、法人の資産として計上されるので、間接的ですが相続財産である株式の評価に影響することになります。
第5章 使用貸借していた土地を相続したときの注意点
使用貸借していた土地を相続した際には、以下の3点に注意が必要です。
- 使用貸借契約をよく確認しておく
- 使用貸借では相続税の節税につながらない
- 使用貸借している土地も小規模宅地等の特例を適用できる場合がある
5-1 使用貸借契約をよく確認しておく
使用貸借契約において、借主が死亡した場合に、契約書に「借主の死亡後も相続人が使用を継続する」といった別段の定めがあれば契約は継続され、相続人が借主の地位を引き継ぐことになります。
このような特約があると、相続人は使用を続ける権利を有するため、契約の終了が難しくなる恐れがあります。
特に親族間での使用貸借契約では、口頭での合意などにより契約書が存在せず、契約内容が不明確なケースも少なくありません。
5-2 使用貸借では相続税の節税につながらない
使用貸借により土地を無償で貸していた場合、貸主が死亡するとその土地は「自用地」として評価されます。借主が無償で土地を使用しているため、借地権が発生せず、貸主の土地に対する制約がないとみなされるからです。
その結果、賃貸借契約で土地を貸していた場合のような相続税評価額の減額はなく、節税効果は期待できません。
5-3 使用貸借している土地も小規模宅地等の特例を適用できる場合がある
使用貸借で貸していた土地でも、一定の要件を満たせば「小規模宅地等の特例」の適用が可能です。
たとえば、被相続人の親族がその土地に居住しており、かつ被相続人と同一生計であった場合、特定居住用宅地等として評価額の80%を減額できる可能性があります。
ただし、適用には相続開始直前に居住していたことなどの要件を満たさなければなりません。また、契約の内容や実態が重要視されるため、必要に応じて専門家に相談することが推奨されます。
まとめ
使用貸借契約では借主が死亡した場合、原則として契約は終了し、借主の相続人に使用権が引き継がれることはありません。一方、貸主が死亡した場合は、その地位が相続人に継承され、使用貸借契約は継続されます。
相続税の観点から見ると、使用貸借による土地は「自用地」として評価され、借地権の控除が適用されないため、相続税評価額が高くなる傾向があります。
ただし、一定の要件を満たせば、小規模宅地等の特例を適用することで、評価額の減額が可能です。使用貸借契約の内容や相続人の状況によって取り扱いが異なるため、事前に専門家に相談し、適切な対策を講じることが重要です。
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