相続した不動産を売却したときにかかる税金は?特例・控除も徹底解説

相続した不動産を売却したときにかかる税金は?特例・控除も徹底解説
執筆者: 木村道哉

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はじめに

親から不動産を相続したが、自宅があるため売却を検討している。

そんなとき気になるのが税金です。相続不動産の売却には、譲渡所得税や特例の適用、確定申告の有無など、知っておきたい税務のポイントが多くあります。

取得費や所有期間の違いで課税額も大きく変わるため、事前の確認が重要です。

この記事では、税金の種類や計算方法、節税につながる特例などをわかりやすく解説します。

第1章 相続不動産の売却で発生する税金とは

相続した不動産を売却する際、どれくらい税金がかかるのかというのは多くの方が不安に感じる点です。実際に、不動産の売却の際には複数の税金や費用が発生します。

主な税金は以下の6種類です。

税金の種類説明
相続税相続時に発生。不動産売却とは直接関係しないが、取得費加算の特例に影響
譲渡所得税・住民税・復興特別所得税売却益に対して課税。所有期間により税率が異なる
印紙税売買契約書の作成時に必要
登録免許税相続や売却に伴う登記時に発生(通常、売買後の登録免許税は買主負担)

とくに重要なのは譲渡所得税です。譲渡所得は次の式で計算されます。

譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)

譲渡価格:売却金額
取得費:購入費や建築費、仲介手数料、測量費、登録免許税など
譲渡費用:売却時の仲介手数料や登記費用、解体費など

算出した譲渡所得に対し、所有期間に応じて以下の税率が適用されます。

区分所得税住民税復興特別所得税合計
短期(5年以下)30%9%0.63%39.63%
長期(5年超)15%5%0.315%20.315%

なお、相続による取得の場合は、被相続人の取得日から所有期間を計算します。

たとえ相続から日が浅くても、被相続人の保有期間が5年超であれば長期譲渡として扱われ、税率が大きく軽減されるのが特徴です。

1-1 所有期間の判定基準

不動産の所有期間は、譲渡所得税の税率を決める重要な要素です。

相続で取得した場合、所有期間は相続人が取得した日からではなく、被相続人がその不動産を取得した日から数える「取得時期の引継ぎ」が適用されます。

例えば、父が20年前に購入した不動産を相続し、相続後すぐに売却した場合でも、20年以上所有していたと見なされ長期譲渡所得として約20.315%の税率が適用されます。

相続からの年数ではなく、被相続人の取得時期を把握しておくことが大切です。

第2章 相続不動産を売却した後の税負担を軽くする特例・控除制度

相続した不動産を売却する場合、税金が高くなるのではと不安に感じる方は多いでしょう。しかし、税金にはさまざまな特例や控除制度が用意されており、それらをうまく活用することで税負担を軽くできる可能性があります。

売却時に使える特例や控除制度は以下の4つです。

  • 取得費加算の特例
  • 被相続人の居住用家屋(空き家)に係る3,000万円の特別控除
  • 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除
  • 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例

適用条件などの詳しい内容は以下で説明します。

2-1 取得費加算の特例

取得費加算の特例とは、不動産を相続した際に納めた相続税の一部を、その不動産を売却した際の取得費に加算できる制度です。取得費が増えれば譲渡所得が減るので、結果として支払う譲渡所得税や住民税などが安くなります。

この特例が適用されるのは、不動産を相続してその相続税を納めた人が、相続税の申告期限の翌日から3年以内にその不動産を売却した場合です。

この特例を使うと、本来の取得費に加えて、相続した不動産の相続税額の一部を取得費に加算できます。

譲渡所得=譲渡価額−{取得費(本来の取得費+相続税)+譲渡費用}

ただし、この特例は相続税を申告していない場合や、相続税の申告期限の翌日から3年を超えて売却した場合には使えません。また、取得費に加算できる相続税額は、売却した不動産に対する部分のみに限られることに注意しましょう。

2-2 被相続人の居住用家屋(空き家)に係る3,000万円の特別控除

相続した家が、被相続人が一人で住んでいた空き家だった場合は「被相続人の居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除(空き家の3,000万円控除)」が使える可能性があります。

以下の要件を満たすと、譲渡所得から最大3,000万円までを控除できます。

  • 被相続人が相続開始直前まで、その家屋に一人で居住していたこと
  • 昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の家屋であること
  • 相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却価額が1億円以下であること
  • 建物を取り壊して更地として売却するか、または耐震基準を満たすリフォームをした上で売却すること

この控除が適用できれば、譲渡所得が3,000万円以下なら税金はかからないことになります。

ただし、マンションなどの区分所有建物は対象外です。また、賃貸に出していた家屋や、事業用として使用していた家屋についても対象から外れます。

さらに、共有で相続した場合、共有者が2人までなら各自が3,000万円の控除を受けられますが、相続人が3人以上いる場合については、1人あたり最大2,000万円の控除になります。

2-3 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除

この特例は、自分が住んでいた家屋や敷地を売却する際に使えるものです。

相続後に自分がその不動産に居住し、自宅とした後に売却する場合は、この特例の適用を検討できます。

適用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 売却するのが現在住んでいる家屋か、住まなくなってから3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却する家屋であること
  • 親子や夫婦など特別な関係がある者への譲渡ではないこと
  • 売却する年の前年および前々年に同じ特例を受けていないこと

この特例では空き家の特例と同様、譲渡所得から最大3,000万円までを控除できます。

ただし、「特定の居住用財産の買換えの特例」「譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」とは併用できません。また、一時的に住んでいたといっても趣味や保養のための別荘などは対象から外れます。

2-4 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例

相続不動産の中には、被相続人が長期間所有していた住宅も多いでしょう。

相続後その不動産に居住した上で、売却した年の1月1日において所有期間が10年を超える場合には、譲渡所得に対して軽減税率が適用される特例が使える可能性があります。

なお、相続により取得した場合の所有期間は、被相続人の取得日から引き継がれます。

通常の長期譲渡所得の税率は、所得税・住民税・復興特別所得税を合計した20.315%です。

しかしこの特例を使うと、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分に対して、所得税10%、住民税4%、復興所得税2.1%を合計した14.21%の軽減税率が適用されます。

居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率(6,000万円以下の部分)
所得税10%
住民税4%
復興特別所得税2.1%
合計税率14.21%

なお、譲渡所得が6,000万円を超える部分については、通常の長期譲渡所得の税率(20.315%)が適用されます。

適用条件は以下の通りです。

  • 相続後に居住していた家屋や敷地であること
  • 売却した年の1月1日において所有期間が10年を超えていること
  • 譲渡先が親子や夫婦など特別な関係がある相手ではないこと

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除との併用は可能ですが、居住用財産の買換えの特例とは併用できません。

また、あくまで居住していた不動産に対する特例なので、相続後一度も住んでいない不動産には適用できない点にも注意しましょう。

第3章 相続不動産を売却すると確定申告は必要?不要?

相続した不動産を売却すると、確定申告をしなければならないのかどうかが気になる方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、確定申告が必要になるケースがほとんどです。

譲渡所得税は、給与所得などの他の所得とは別に分離して税額を計算し、確定申告によって納税するためです。また、多くの控除の利用要件に確定申告を必要としています。

この章では、確定申告が必要になるケースと、申告が不要になるケースについて解説します。

3-1 確定申告が必要なケース

相続不動産を売却して譲渡所得、つまり利益が発生した場合は、原則として確定申告が必要です。

また、税額がゼロになる場合や、払いすぎた税金の還付を受ける場合であっても、控除や特例を適用する際には、確定申告の手続きをしなければその恩恵を受けることができません。

特例や控除は、確定申告を行うことが適用の前提条件になっています。申告しなければ控除を使えず、結果的に高額な税金を払うことにもなりかねません。

申告を忘れると、特例が受けられなくなるだけでなく、本来納めるべき税金に加えて延滞税や無申告加算税が課せられる可能性があります。

譲渡所得の計算や特例の適用判断は複雑な場合が多いものです。過去の取得費用の確認や、適用可能な控除の判断など、自分で行うのが難しければ専門家に相談することをおすすめします。

3-2 確定申告が不要なケース

一方で、不動産の売却をしたが赤字だった、つまり譲渡損失が出た場合は確定申告が不要になることもあります。

譲渡損失が出た場合、課税対象となる譲渡所得がないため、原則として確定申告は不要です。

ただし、特定の居住用財産の譲渡損失については、損益通算や繰越控除の特例があり、これらの特例を適用するためには確定申告が必要です。

また、特例を使って譲渡所得がゼロになった場合でも、特例を適用するためには申告が必須です。「税金がかからない=申告しなくていい」と判断しないようにしましょう。

第4章 相続した不動産を売却するときの注意点

相続した不動産を売却する際には、税金だけでなく、時期・手続き・制度の組み合わせなどさまざまな注意点があります。

特例を活用して節税しようとしても、使い方を誤ると逆に損をしてしまうケースもあり、慎重な判断が必要です。

ここでは、相続不動産の売却に関して特に重要な4つのポイントを解説します。

4-1 相続した後3年以内に売却する

相続不動産の売却に関する特例の多くは、相続開始から一定期間内の売却が条件になっています。特に3,000万円の控除など重要な特例・控除は「相続開始があったことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期間が定められています。

この期間内に売却を完了させなければ、これらの有利な特例が適用できなくなり、税負担が大幅に増える可能性があります。

例えば、相続開始日が2025年5月1日だった場合、この3年以内という期間は「2025年5月2日」から数えて3年を経過する日(2028年5月1日)の属する年の12月31日、つまり2028年12月31日までとなります。

売却を検討している場合は、この期限を意識して計画的に進めることが非常に重要です。

4-2 特例は併用できるものとできないものがある

相続不動産の売却で使える特例制度は複数ありますが、すべてを同時に適用できるわけではありません。制度によっては優先順位が定められていたり、他の特定の制度とは併用できないという制限があります。

〇は併用可
×は併用不可
取得費加算空き家の3,000万円控除居住家屋の3,000万円控除買換え特例軽減税率低未利用100万円控除
A(取得費加算)
B(空き家3,000)×××△※
C(居住3,000)××××
D(買換特例)××××
E(軽減税率)××××
F(低未利用100)△※×××

※どの特例を優先すべきか、どの制度の組み合わせが最も税負担を軽くできるかは、個別の状況によって異なります。

4-3 確定申告が必要なら忘れずに行う

前章でも解説したとおり、相続不動産を売却して譲渡益が出た場合や、各種特例を適用して税負担を軽減するためには、原則として確定申告が必須です。

確定申告の時期としては、不動産を売却した年の翌年の2月16日から3月15日までが申告期間です。

必要書類の準備や譲渡所得の正確な計算、適用する特例の選択など、確定申告には手間と時間がかかります。申告期間の間際になって慌てないよう、早めに準備を始めることが大切です。

4-4 分配した売却金に贈与税がかかる可能性がある

複数人で相続した不動産を売却し、法定相続分と異なる割合で代金を分けると、贈与とみなされ贈与税がかかる可能性があります。

例えば、兄弟で均等に相続したのに兄が全額を受け取り、後で弟に分けた場合などです。

これを避けるには、売却前に分配方法を明記した遺産分割協議書を作成し、そのとおりに分配することが大切です。

まとめ:税金が心配なら専門家のサポートを受けながら売却するのが安心

相続不動産の売却には、譲渡所得税や住民税、印紙税など複数の税金がかかり、特例や控除を使えば節税も可能ですが、条件や手続きは複雑です。

取得費の計算や所有期間の判定、特例の選択、確定申告などには専門知識が必要で、期限付きの制度も多いため、早めの準備が重要になります。

不安やミスを避けるためには、税理士や相続に強い不動産会社のサポートを受けるのが安心です。自分に合った特例や手続きの流れを把握し、信頼できる相談先を持つことで、後悔のない売却を進められるでしょう。

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この記事の執筆者

木村 道哉(きむら みちや)

木村 道哉(きむら みちや)

グリーン税理士法人 代表社員/税理士/弁護士

早稲田大学法学部卒。都内大手税理士法人のインハウスロイヤーとして経験を積んだ後、木村道哉税理士事務所を開業。資産税(相続税・贈与税)を中心とした申告業務に携わり、相続人間に紛争が生じた場合の相続税申告業務に詳しい。

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