目次
はじめに
家族が亡くなった際、不動産を相続することは少なくありません。また、その不動産について、管理等の問題から、手放す事例は多くあります。
この時、不安に思われる方が多いのが、「故人が相続不動産の中で亡くなった際、事故物件として扱われるのか」という点です。
また、事故物件であることを伝えるかどうかという、告知義務の有無については一律での判断が難しく、不動産会社や専門家の間でも見解が分かれやすい点となっています。
このように、事故物件の取扱いは、何が正解なのかの判断が難しく、事故物件を相続した後の取扱いに関する悩みを抱えている方は珍しくありません。
この記事では、事故物件とはどのような物件なのかについて解説します。そのうえで、告知義務がどのように整備されているか、事故物件の買い手が見つからないときの対処法についても触れていきます。
第1章 事故物件とは
1-1 事故物件の基準は法律では決められていない
一般的に、事故物件とは、「心理的瑕疵」がある物件を指します。具体的には、過去にその物件内や周辺で、殺人・自殺・孤独死といった人の死に関する出来事が生じた物件がこれに該当します。
しかし、法律上では、事故物件がどのような物件なのかについて、具体的な定義はされていません。例えば、「人が亡くなってから5年間は事故物件とする」といった基準がないため、実際には個々の事情を鑑み、不動産会社などがケースバイケースで判断しています。
1-2 告知義務については国土交通省のガイドラインを参考に判断する
どのような物件を事故物件として扱うかを定めた法律はありませんが、事故物件の告知義務については、国土交通省がガイドラインを制定しています。
これは、「人の死の告知に関するガイドライン」というもので、ガイドライン上では、以下のケースでは取引相手への告知義務が必要とされています。
- 自殺・他殺による死亡
- 不慮の事故とは言えない事故死
- 自然死・病死のうち、発覚までに日数が経ち、特殊清掃等が行われた事例
なお、ガイドライン上では、賃貸物件の場合は、事案発生から3年間は告知義務があると定められていますが、売買物件の場合、告知義務の期限は設定されていません。
また、ニュースで全国的に報じられた等により、社会的影響が大きい物件と判断された場合は、3年を超えても告知が必要になるケースがあります。
ただし、このガイドラインを参考にする上での注意点が2つあります。
1つ目は、このガイドラインの対象は、居住用不動産に限定されている点です。そのため、オフィス等に用いる事業用不動産は、対象外である点はご留意ください。
2つ目は、このガイドラインが、あくまで「告知義務の有無」を判断するための基準に過ぎないという点です。「事故物件そのもの」を定義するものではない点にご注意ください。
1-3 事故物件になると不動産の処分・活用が難しくなる
所有する物件が事故物件になった場合、売却・譲渡等による処分や、賃貸に出す等の活用が難しくなる傾向にあります。
事故物件となった不動産は、以下の要因から、市場からの反応が悪くなります。
- 人の死が明確な物件に前向きな感情を抱かれない
- 事件等があった場合、そのネガティブなイメージが付きまとう
多くの不動産の購入希望者や入居希望者は、事故物件に対してポジティブには考えません。結果として、購入や賃貸の候補として挙がることが減り、不動産の活用が難しくなると言えます。
また、仮に売れたり貸し出せたりしたとしても、本来の価格よりも大幅に安く提供することになりがちです。
そのため、事故物件となった物件の扱いは、通常の不動産以上に、慎重に検討する必要があります。
第2章 事故物件に該当すると告知義務が発生する可能性がある
故人が、相続不動産の内部や周辺で亡くなった場合、事故物件に該当する可能性があります。仮に、故人の死因が病死や自然死であっても、発見が遅れたことで特殊清掃などが必要となった場合は、ガイドライン上での告知義務の発生に該当する可能性が高まります。
この際、ガイドラインで定められている基準を満たしているにも関わらず、事故物件である旨を告知しなかった場合、契約後に契約不適合責任を問われるかもしれません。
契約不適合責任とは、引き渡した不動産の品質・数量に関して、契約内容と異なっていた際に、売主(貸主)が負う責任です。売主(貸主)は、この責任に基づいて約束通りの物件を引き渡す義務を負います。
契約不適合責任を問われた売主(貸主)は、損害賠償請求・契約の解除など、厳しい対応を要求される場合もあるため、注意すべき点と言えます。
このことから、事故物件の取引をする際は、契約書内での明記が重要となります。
どのように契約書を用意すべきかについて不安な方は、信頼できる不動産会社・弁護士等の法律の専門家への相談を推奨します。
第3章 事故物件として告知義務が発生するケース・発生しないケース
相続した物件を売却・賃貸に出す際、1-2や第2章で述べた通り、一定の条件を満たせば、事故物件として告知義務が発生することがあります。この章では、告知義務が発生するケース・発生しないケースについて、複数の事例を解説します。
なお、これから紹介するのは、あくまで過去の事例に基づいた一般的な傾向であり、最終的な判断は個々の状況によって大きく異なる点についてご承知おきください。
3-1 告知義務が発生するケース
事故物件のうち、告知義務が発生するケースの一例は、以下の通りです。
- 対象の不動産・その共用部で、自殺・他殺による死亡があったとき
- 自然死・病死や不慮の事故による死亡であっても、特殊清掃が必要となる事例があったとき
- 誰かが死亡した事件のうち、社会的に大きな影響があったとき
主に、自然死や事故死ではない人の死があった場合に、告知義務が生じる可能性があります。
また、自然死等による死亡であっても、その発見が遅れ、特殊清掃が必要となった際は、告知義務が必要であると判断される傾向にあります。
例えば、故人が自宅内で孤独死した際、発見時に死亡から1ヶ月以上経っており、特殊清掃が必要となった際は、該当の物件で告知義務が発生する可能性が高いと言えます。
なお、これらの告知義務は、建物を取り壊して更地として売却した場合でも、土地に残る瑕疵として告知が必要となる点にご注意ください。
3-2 告知義務が発生しないケース
事故物件のうち、告知義務が発生しないと判断されやすい事例は、以下の2つです。
- 老衰や病気による自然死
- 日常生活における不慮の事故
例えば、故人が、家族や医師に看取られつつ亡くなり、その後速やかに適切な処置が施された場合は、ほとんどのケースで特殊清掃が不要となります。この場合は、多くの事例で告知義務が発生しません。
また、故人がヒートショックなどを起こし、突発的に亡くなった際も、その後の発見や対応が早ければ、告知義務が生じない傾向にあります。
以上のように、不動産を相続した際、故人が孤独死したとしても、その発見が早く、特殊清掃等を挟まずに事後の対応が完了していれば、事故物件としての告知義務は生じない可能性が高まります。
ただし、故人が事故死や自然死だったとしても、その死因に不審な点があったり、発見が遅れたりした場合は、事故物件として告知義務が生じる可能性があるため、不安な際は、必ず信頼できる不動産会社や弁護士等の専門家にご相談ください。
第4章 事故物件の告知義務はいつまで続く?
4-1 売却の場合
事故物件を売却する場合は、告知義務に明確な期限はありません。そのため、トラブルを避ける観点から、基本的には事故物件である旨の告知が推奨されます。
売主が、事故物件であることを知っており、かつ告知義務が発生しているにも関わらず、意図的にその旨を伏せていた場合は、契約不適合責任を問われます。これは、買主から損害賠償を請求されたり、最悪の場合は契約を解除されたりする、非常に重い責任です。
後のトラブルを避けるためにも、告知義務が生じている場合は、口頭でその旨を伝えるだけでなく、売買契約書に事故物件であることと、買主の合意が得られている旨を明記しておきましょう。
なお、3-2で述べたような状況であり、告知義務が無かったとしても、買主に事故物件かどうかを聞かれた際は、売主はその事実を伝える必要があります。
この場合も、告知義務の期限は定められていないため、無意識に義務違反をしないよう、十分にご注意ください。
4-2 賃貸の場合
事故物件を賃貸に出す場合、一般的なケースでは、借主への告知義務は「人の死が発生してから3年の間」と定められています。
ただし、3-1で述べた告知義務が発生する要件のうち、「誰かが死亡した事件のうち、社会的に大きな影響があったとき」に該当する場合は、告知義務が3年を超えても継続して発生する場合があります。
例えば、同一の室内で、複数人が殺害された事件が発生し、大々的に全国で報道されたとします。
この場合は、該当の事件が借主の決定に大きな影響を与え続けると考えられ、告知義務は継続的に発生する可能性が高まります。
ただし、どのような事件や事故が、3年を経過したあとも告知義務を残すべきと判断されるかは、事例ごとに異なるため、不安な方は、事前に不動産会社や弁護士等の専門家にご相談ください。
第5章 事故物件の買い手が見つからないときの対処法
5-1 不動産会社の買取も検討する
事故物件の買い手が見つからないときは、不動産会社の買取をご検討ください。
不動産会社の買取は、個人の買い手を探す必要がないため、売主が不動産会社の査定額に納得すれば、すぐに売却できます。このことから、仲介に比べ、スムーズに売却が成立しやすいと言えます。
さらに、不動産会社による買取の大きなメリットとして、売主の契約不適合責任が免責されるケースが多い点が挙げられます。
買取の場合、その後の再販における責任は、物件を買い取った不動産会社が負うのが一般的です。そのため、売主は将来的なトラブルのリスクから解放される、という精神的な安心感も得られるでしょう。
ただし、すべての不動産会社が、事故物件の買取対応をしている訳ではありません。また、事故物件は、通常の不動産に比べ、買取金額が安くなる傾向にあります。
この点を念頭において、事故物件の買取対応が出来るか、慎重なリサーチや、信頼できる専門家への相談が重要と言えます。
5-2 期間を空けて売却する
事故物件がなかなか売れない場合は、期間を空けて売却するのも有効な手段の1つです。
事故物件の買い手が現れない要因の1つに、「該当の物件が事故物件であると広く周知されている」ことが挙げられます。
仮に、自然死や病死のような、告知義務が生じない事故物件であっても、「人がその物件で亡くなった」と知られている物件は、前向きに購入を検討する人はなかなかいないのが実情です。
この場合、売却活動を一度中断し、一定の期間を置いてから活動を再開すれば、購入希望者が現れる可能性が高まります。
人の死から期間を置き、その事実が風化していることが期待できるためです。
ただし、売却活動をしていない期間も、事故物件の所有者は、固定資産税等の税金を支払う必要があります。この点は、売却活動の期間を空ける際の明確なデメリットです。
期間を空けずに、不動産会社に買取してもらう方が有利なケースもあるため、どのように行動すべきか不安な方は、事前に不動産会社等に相談しておきましょう。
5-3 建物をリフォームしてから売却する
事故物件の買い手が見つからない際は、建物をリフォームしてからの売却も検討できます。
不動産の購入希望者は、事故物件に対して、「人が亡くなったところにそのまま住むこと」に嫌悪感を抱くのは決して珍しくありません。
事故物件をリフォームしてから売却すれば、「人が死んだ時の状況を可能な限り無くしている」と、購入希望者にアピールできます。
また、そもそも事故物件が古くなっていた場合、リフォームを通して、物件の市場価値を高められるメリットもあります。
ただし、不動産のリフォームは高額な費用が発生する傾向にあります。特に、建物全体をリフォームする際は、数百万円から1千万円程度の金額が必要となることもあります。
また、リフォームを通した結果、売却後に手元に残る資金が、リフォームをしなかった場合よりも少なくなる恐れもあります。
このことから、事故物件のリフォームは、慎重な判断が重要と言えます。複数の不動産会社等の専門家に相談し、費用対効果を見極める必要があるでしょう。
まとめ:事故物件を相続した際にはお気軽にご相談ください
この記事では、事故物件の概要に触れたうえで、事故物件の告知義務が生じる事例や、事故物件が売れない際の対処法について解説しました。
事故物件の取引は、買主や借主が見つかりにくいという現実的な問題に加え、告知義務という法的な判断の難しさも伴います。
この2つの問題を、相続人だけで解決するのは容易ではなく、安易に判断をすると、意図せず契約不適合責任を問われてしまう恐れがあるため、非常に難しい問題となっています。
「住まいの賢者」では、事故物件の相続に強い司法書士と連携し、事故物件の相続・売却に関する相談や依頼を受け付けています。事故物件の相続にまつわるお悩みがある方は、ぜひお気軽にお問い合せください。
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