目次
はじめに
相続によって不動産を取得したものの、兄弟などの親族と共有名義のまま放置している方は珍しくありません。
共有名義は、一見すると公平な分け方に思えますが、売却や活用をしたくても全員の同意が必要だったり、管理費用の負担で揉めたりとトラブルの火種になりやすい状態です。
特に近年は、相続登記の義務化や空き家問題の深刻化により、共有不動産をそのままにしておくリスクが高まっているため、早めの解消を検討することをおすすめします。
本記事では、相続した不動産の共有名義を続けるデメリットと解消する方法を解説します。トラブルなく共有名義を解消するためにも参考にしてください。
第1章 共有名義とは?
共有名義とは、一つの不動産を複数人で所有している状態のことです。
それぞれの所有者は共有持分を持ち、登記簿上にも持分割合が記載されます。例えば、兄弟二人で相続した場合、持分が2分の1ずつになるケースが一般的です。
また、共有名義は各共有者が自分の持分を持つ一方、不動産は単独で自由に処分できません。したがって、売却や大規模な活用には共有者全員の同意が必要になります。この制約が、相続後のトラブルにつながりやすい大きな要因です。
特に相続が絡む共有名義は、人間関係のトラブルが起こりやすいため放置するほど解消が難しくなる傾向があります。
1-1 相続時に共有名義が生まれるケース
相続時に共有名義が生まれる代表的なケースは、遺言書がなく、法定相続分どおりに遺産分割を行った場合です。
不動産は現金のように簡単に分けられないため、相続人同士の関係性を配慮して、共有とする場合もあります。ただし、一見円満な解決に見えても、数年後に事情が変わり、売却や活用を巡って対立が生じることも多いため注意が必要です。
また、遺産分割協議がまとまらず、暫定的に共有名義で登記するケースもありますが、一時的な共有のつもりが長期間続き、結果として解消が難しくなることも珍しくありません。
第2章 相続後の不動産の共有を解消したほうがよい理由
相続後の不動産を共有のままにしておくと、さまざまな問題が生じます。
共有名義は相続直後こそ「とりあえず公平」といった印象を持たれがちですが、時間の経過とともにデメリットが目立ってしまいます。
短期的には問題がなくとも、家族構成や生活環境の変化により、将来的に大きな負担になるケースが多いため、早めの解消が望ましいでしょう。
では、相続後の不動産の共有を解消したほうがよい理由を解説します。
2-1 売却・活用が難しい
共有不動産を売却したり賃貸に出したりするには、原則として共有者全員の同意もしくは持分の過半数の同意が必要です。一人でも反対すると話が進まず、好条件で売れるタイミングを逃すこともあります。
特に不動産市場は景気や金利の影響を受けやすく、売り時を逃すことで数百万円単位の差が出ることも多くあります。
結果、老朽化が進み、資産価値が下がってしまうケースもあるため注意しましょう。
2-2 金銭の不公平感が生まれやすい
共有不動産では、維持するための管理費用の負担や利用状況をめぐって不公平感が生まれやすくなります。例えば、固定資産税や修繕費を一部の共有者だけが負担しているケースや、誰か一人だけが無償で利用しているケースです。
さらに、賃貸に出している場合は、収益の分配方法で意見が対立することがあります。
小さな不満が積み重なり、大きなトラブルに発展することも多いため、話し合いが難航する原因になります。一度トラブルになると、共有解消そのものが進まなくなるため、早い段階で整理しておくことが重要です。
2-3 将来の相続がさらに複雑になる
共有者の一人が亡くなると、持分がさらに相続されるため、共有者が次世代へと増えていき、権利関係が複雑になります。
相続人が増えるほど、連絡を取るだけでも時間と手間がかかります。なかには疎遠な親族や面識のない相続人が含まれることもあり、合意が難しくなるケースも珍しくありません。
将来を見据えると、共有状態は早めに解消しておくほうが現実的です。
2-4 不動産の共有者数が増加する
相続が繰り返されることで、面識のない親族が共有者になることもあります。
共有者が増えると、一人ひとりの持分は小さくなりますが、意思決定のハードルは逆に高くなります。誰も動かせない不動産になってしまうと長期間放置される原因となり、話し合い自体が難しくなりやすいでしょう。
2-5 空き家管理の負担が大きい
共有名義の空き家は、誰が管理責任を負うのか曖昧になりがちです。
放置すると老朽化や近隣トラブル、雑草の繁茂や倒壊リスクなどにつながり、最終的に全員の負担となります。行政から指導や勧告を受けるケースもあり、放置を続けると行政代執行に進むため注意が必要です。
管理負担を減らすためにも、共有解消は早めに検討すべきといえるでしょう。
第3章 相続後の不動産の共有名義を解消する方法
共有名義を解消する方法は、大きく分けて「共有者の同意が必要な方法」と「自分一人で進められる方法」の2種類があります。
方法によって必要な手続きや時間、費用が異なるため、目的を明確にしたうえで検討することが大切です。
では、相続後の不動産の共有名義を解消する方法を解説します。
3-1 【同意が必要】不動産を売却する
共有者全員が合意すれば、不動産を売却し、代金を持分割合に応じて分配することができます。不動産を現金化することで、共有状態そのものを完全に解消できる点がメリットです。
売却後は管理や税金の負担もなくなり、将来の相続リスクも残りません。
ただし、不動産を売却するには全員の同意が前提です。誰か一人でも売却に反対すると進められません。また、売却時期や価格を巡って意見が分かれることも多く、話し合いに時間がかかる傾向もあるでしょう。
3-2 【同意が必要】共有者の共有持分を買い取る
一人が他の共有者の持分を買い取り、単独名義にする方法です。
相続した不動産を活用したい場合に選ばれやすい方法で、不動産を手放さずに済むため、住居として利用しているケースや思い入れのある不動産に向いています。
共有関係を解消した後は、売却や活用も自由に行えるようになる点もメリットです。
ただし、買い取り資金を用意する必要があり、評価額をどう決めるかで揉めることもあります。公平性を保つためにも、不動産鑑定や専門家の意見を取り入れるとよいでしょう。
3-3 【同意が不要】自分の共有持分を売却する
自分の持分だけであれば、他の共有者の同意なしに売却できます。
共有持分は、第三者から見ると自由に使えない不動産権利であるため、買い手が限られることから市場価格より大幅に安くなるケースが一般的です。
したがって、早期に共有関係から離れたい方向けの方法といえるでしょう。近年は共有持分を専門に扱う不動産会社も増えているため、早めに相談することをおすすめします。
3-4 【同意が不要】自分の共有持分を放棄する
金銭的な見返りはありませんが、関係を整理したい場合の選択肢として持分を放棄する方法もあります。
共有持分を放棄すると、その分の権利は他の共有者に帰属するため、管理責任や将来の相続リスクから解放される点がメリットです。
一方で、財産を無償で手放すことになるため、慎重な判断が必要です。また、放棄したときは法務局で持分移転登記が必要になるため、専門家に相談したうえで進めましょう。
第4章 不動産の共有を解消する際にかかる税金
不動産の共有を解消する際、方法によって発生する税金の種類や金額が変わります。
税金を把握しないまま進めてしまうと、想定外の負担が生じることもあります。共有解消を検討する段階で、税金面の影響も含めて全体像を把握しておきましょう。
では、不動産の共有を解消する際にかかる税金を紹介します。
4-1 共有解消時にかかる税金
共有解消の方法によっては、譲渡所得税や登録免許税、不動産取得税が発生する場合があります。どの税金がかかるかは解消方法によって異なるため、事前に整理しておきましょう。
| 共有解消の方法 | 売る側に発生する税金 | 取得する側に発生する税金 | 原則として必ず発生する税金 |
|---|---|---|---|
| 不動産を売却する | 譲渡所得税・住民税(売却益が出た場合) | なし(登録免許税は第三者である買主が負担) | 印紙税 |
| 共有持分を買い取る | 譲渡所得税・住民税(売却益が出た場合) | 不動産取得税 | 印紙税登録免許税 |
| 共有持分を相続人に売却する | 譲渡所得税・住民税(売却益が出た場合) | 不動産取得税 | 印紙税登録免許税 |
| 共有者の持分を放棄する | 原則なし | 贈与税が課税される可能性あり | 登録免許税 |
税金の発生を理由にトラブルが生じることもあるため、共有解消前に共有者と情報を共有しておくと安心です。
4-2 共有持分の売買にかかる税金
共有持分を売却すると、譲渡所得税が課税される可能性があります。
譲渡所得税は、売却価格から不動産の取得費や譲渡費用を差し引いた利益に対して課税されます。取得費が不明な場合は、概算取得費を用いることになり、税負担が増えることもあるため注意しましょう。
また、買い取る側には不動産取得税や登録免許税が発生する場合があります。売る側・買う側の双方で税金が生じるため、事前に話し合っておくことが重要です。
4-3 現物分割にかかる税金
現物分割とは、複数の不動産をそれぞれ単独で取得する形で分ける方法です。
相続税以外の課税は生じにくいとされていますが、不動産の評価額に大きな差がある場合、実質的に財産の移転と判断されて贈与税が課税される可能性があります。
また、現物分割は税務判断が難しいケースも多いため、検討する際は税理士などの専門家に確認することをおすすめします。
第5章 不動産の共有名義をトラブルなく解消するポイント
共有名義の解消をするには法律や税金の問題はもちろん、共有者との人間関係にも影響します。円滑に進めるためにも、手続きを始める前に状況を整理することが重要です。
ここからは、不動産の共有名義をトラブルなく解消するポイントを解説します。
5-1 共有状態を把握する
まず行うことは、不動産の登記事項証明書を取得し、現在の共有者と持分割合を確認することです。このタイミングで固定資産税の納付状況や管理費の負担状況も整理しておくと、今後の話し合いがスムーズになります。
相続を重ねている場合、想定していなかった相続人が共有者になっていることもあるため、事実関係を明確にすることが、トラブル回避につながるでしょう。
5-2 共有名義の解消について共有者と話し合う
共有名義の解消を持ちかける際、話し合いでは「なぜ共有を解消したいのか」「解消後にどうしたいのか」を明確に伝えましょう。売却したいのか、誰かが住み続けたいのかなど、ゴールを共有することで対立を避けやすくなります。
金額や条件の話に入る前に、全員が納得できる方向性を探ることがポイントです。必要であれば弁護士などの専門家を交え、冷静に話し合える場を設けることも検討しましょう。
5-3 不動産の解消手続きは専門家に相談する
共有名義の解消は、登記や税金、売却手続きなどの専門的な知識が必要となります。手続きの抜け漏れや税務リスクを減らすためにも、専門家に相談しながら進めましょう。
また、専門家が間に入ることで、共有者同士が直接対立する場面を減らせる点もメリットです。トラブルが発生しやすい時こそ、第三者のサポートを活用しましょう。
第6章 ケース別に見る最適な共有の解消方法
共有名義の解消は、法律上は同じ手続きであっても、実際には家族関係や不動産の利用状況によって最適解が変わります。
一律に「この方法が正解」とはいえないため、自分のケースに近い事例を参考にすることが重要です。
では、トラブルになりにくい解消方法をケース別に解説します。
ケース① 兄弟2人で相続して片方が実家に住み続けたい
このケースでは、住む方が持分を買い取る方法が一般的です。
居住する側が単独名義になることで、不動産の売却やリフォーム、建て替えが自由に行えるようになります。住んでいない側も現金を受け取れるため、比較的公平感のある解決策といえるでしょう。
持分の評価額を決める際は、不動産会社の査定や不動産鑑定士の評価をもとに話し合い、納得感のある判断を行うことが重要です。
ケース② 空き家のまま放置している共有土地
このケースでは、売却して現金化することで、管理負担を解消できます。
空き家や利用予定のない土地を共有したままにしておくと、固定資産税や管理の手間だけがかかり続けます。空き家のまま放置している場合は、共有者全員で合意し、売却して現金で分ける方法がシンプルです。
空き家を放置するリスクを考えると、早めに方向性を決めるとよいでしょう。
ケース③ 遠方の共有者が協力してくれない
このケースでは、持分売却など単独でできる方法を検討しましょう。
連絡が取れなかったり話し合いに応じてくれない共有者がいる場合、全員同意が必要な方法は現実的ではありません。
したがって、自分の共有持分のみを売却する方法が選択肢になります。価格は下がりやすいものの、共有関係から抜けられる点は大きなメリットです。
精神的な負担を減らしたい場合には、有効な解決策といえるでしょう。
ケース④ 相続登記が未完了で複雑な状態
このケースでは、相続登記を済ませ、権利関係を整理することが重要です。
登記が未完了の状態では、売却や持分整理などの手続きを進めることができません。相続人を確定し、法定相続分や遺産分割の内容を反映した登記を行う必要があります。
司法書士など専門家のサポートを受けながら、登記手続きを進めましょう。
まとめ:共有名義はデメリットが多い!専門家に相談をして早めに解消しよう
共有名義は一時的な解決策として選ばれがちですが、長期的に見ると管理負担や金銭トラブル、権利関係の複雑化など、デメリットのほうが大きい所有形態です。
トラブルを避けながら共有名義を解消するためにも、早い段階で司法書士や弁護士などの専門家に相談して進めることをおすすめします。「住まいの賢者」では、司法書士と連携して、不動産の売却や相続登記の相談など一括で対応しています。不動産の活用にお悩みの方は、ぜひ無料相談をご活用ください。
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