目次
はじめに
土地などの財産を、親族等に遺す方法の一つに、生前贈与があります。生前贈与は、文字通り生きているうちに、自分の財産を他者に無償で渡す行為であり、相続税対策として活用することもできます。
しかし、土地を生前贈与をした場合にも、4つの税金の支払い義務が発生することがあります。「どのような税金が発生するか分からず、不安がある」「どれくらいの税金が発生するか、あらかじめ確認しておきたい」など、土地の生前贈与にあたって不安を覚える方は少なくありません。
この記事では、土地の生前贈与にかかる4つの税金について解説します。そのうえで、節税の方法や、注意点についても触れていきます。
第1章 土地を生前贈与するときにかかる税金
土地を生前贈与するとき、以下の4つの税金がかかります。
1-1 贈与税
贈与税は、他者から財産をもらった際にかかる税金です。財産をもらった人(受贈者)が支払うことになります。
贈与税は、贈与を受けた翌年の申告によって、金額が決定します。また、贈与者と受贈者の関係性によって、税率が変わることがあります。
なお、贈与税は、現金一括納付が基本です。不動産の贈与は、現金を渡すわけではないため、受贈者が多額の現金を用意する必要があります。場合によっては、贈与を受けた不動産を結局売却することになりかねないため、注意が必要です。先に現金化して贈与する手段もあるため、状況ごとにご検討ください。
贈与税の細かい計算方法については、第2章で解説します。
1-2 不動産取得税
不動産取得税は、土地などの不動産を取得した際に支払う税金です。
土地の生前贈与を受けた場合の不動産取得税の金額は、2025年7月現在、「家屋・土地の固定資産評価額×3%」と定められています。
例えば、評価額が1,500万円の土地の生前贈与を受けた場合、以下のように計算できます。
- 1,500万円×3%=45万円
なお、不動産取得税は、一定条件を満たす場合、軽減措置を受けることができます。
不動産取得税について詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご確認ください。
1-3 登録免許税
登録免許税は、贈与を受けた土地等の不動産の登記手続きをする際に、支払う税金です。
生前贈与によって発生する登録免許税額は、2025年7月現在、「土地・建物の評価額×2%」と定められています。よって、評価額が1,500万円の土地の生前贈与を受けた場合、以下のように計算できます。
- 1,500万円×2%=30万円
今回のケースでは、登録免許税が30万円となります。
1-4 印紙税
生前贈与によって、土地等の不動産を贈与する場合、印紙税が必要です。
印紙税は、贈与契約書に収入印紙を貼ることで納付します。印紙税額は、200円と定められています。
なお、収入印紙は、コンビニや郵便局、法務局で購入できます。気軽に立ち寄れる店舗で購入できるため、準備に手間がかからない税金です。
第2章 土地を生前贈与するときの贈与税を計算する流れ
第1章でふれた通り、土地を生前贈与するときは、受贈者に対して贈与税の支払い義務が生じます。この章では、以下の土地・状況をモデルに、贈与税を計算する流れを解説します。
- 土地の評価額が1,500万円
- 父親から、18歳以上の息子への生前贈与
- 受贈者である息子は、土地の生前贈与を受けた年に、他の贈与を受けていない。
2-1 贈与した土地の相続税評価額を計算する
まずは、生前贈与した土地の評価額を確認します。この際、生前贈与した時点での土地の価値ではなく、相続税評価額を確認する必要があります。
土地の評価は、路線価方式や倍率方式と呼ばれる計算方法によって算出できます。
路線価方式は、道路ごとに設定されている「路線価」に、土地の面積をかけて評価額を算出します。また、倍率方式は、路線価が設定されていない地域について、国税庁が設定した地域ごとの倍率をかけて評価額を算出します。
なお、土地の相続税評価額は、毎年5月ごろに土地の所有者に対して送付される、固定資産税の納税証明書で確認できます。また土地が所在する市区町村の窓口で取得できる、固定資産評価証明書でもチェックできます。
土地の相続税評価額の計算方法・確認方法について、詳細に確認したい方は、以下の記事も合わせてご確認ください。
2-2 課税対象額を計算する
贈与税は、一律110万円の基礎控除が適用されます。そのため、今回のケースの課税対象額は、以下の通りに計算されます。
- 1,500万円-110万円=1,390万円
今回は、1,390万円が課税対象額となります。
2-3 贈与税率を掛ける
最後に、課税対象額に贈与税率を掛けることで、贈与税の金額を算出できます。
贈与税率は、基礎控除後の課税価格によって、下表の通りに変動します。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | 0円 |
| 200万円超400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円超600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 600万円超1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,000万円超1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 1,500万円超3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 3,000万円超4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
※特例税率の場合
今回の課税対象額は、「1,000万円超1,500万円以下」にあたるため、最終的な贈与額は以下の計算で求められます。
- 1,390万円×40%-190万円=366万円
今回のケースでは、366万円と、非常に高額な贈与税が発生することになります。
なお、上記の税率は、「直系親族からの相続」に適用される、特例税率を参照しています。それ以外の生前贈与では、一般税率という、別の計算式が適用されるため要注意です。
一般税率の税率は、下表の通りです。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | なし |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
基本的に、一般税率の方が、贈与税の税率が高くなり、控除額が減る傾向にあります。例えば、モデルケースの生前贈与が、「兄から弟への贈与」だった場合、贈与税額は以下の通りに計算できます。
- 1,390万円×45%-125万円=500.5万円
特例税率が適用された場合と比較すると、100万円以上税金が増えることになります。土地の生前贈与をする際は、贈与者・受贈者の関係によって、贈与税額が変動する点にご注意ください。
第3章 土地の生前贈与にかかる贈与税を節税できる控除・特例
3-1 贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)
土地を生前贈与する際、贈与税の配偶者控除を活用すれば、贈与税を節税できます。これは、以下の要件を満たす場合に、贈与税の控除額が拡大する制度です。
- 婚姻期間が20年以上の夫婦であること
- 夫婦間の生前贈与であること
- 同一の夫婦間で、はじめての利用であること
- 受贈者が、贈与を受けた翌年の3月15日までに、該当する家に居住し、なおかつその後も引き続き居住する見込みであること
- 受贈者が、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに、贈与税の申告書を提出すること
手続きに不備がなければ、贈与税の基礎控除額に、通常の110万円に加えて2,000万円が加算されます。そのため、2,110万円分までは非課税で生前贈与をすることができます。
なお、長年連れ添った夫婦のみが使えることから、同制度のことを「おしどり贈与」と呼ぶことがあります。
ただし、おしどり贈与は、贈与税のみ対象となっています。登録免許税や不動産取得税は、通常通りの税率で発生しますので、注意してください。
3-2 相続時精算課税制度
相続時精算課税制度も、贈与税の節税につながる可能性のある手段の1つです。
相続時精算課税制度とは、原則、以下の贈与者・受贈者の場合に活用できる制度です。
- 贈与者:60歳以上の父母、または祖父母
- 受贈者:18歳以上の子、または孫
この制度を使用した場合、贈与税を計算する際に2,500万円の特別控除が適用されます。通常の基礎控除が110万円と合わせて、大きな節税につながります。
また、2,500万円を超える部分の税率が、一律20%となるため、生前贈与を受ける土地の評価額が高額であれば、より大きな節税効果を見込めます。
ただし、相続時精算課税制度を利用すると、相続時に支払う相続税が、高額となる可能性があります。また、相続時精算課税制度は、申告にあたっての手間がやや大きく、贈与者・受贈者に負担が生じます。
司法書士などの有資格者は、相続時精算課税制度の手続きを代行できるため、制度の利用を検討する場合は、相談に行ってみることを推奨します。
第4章 土地を生前贈与するときの注意点
4-1 家族間の贈与でも贈与契約書を作成する
贈与契約書は、贈与者と受贈者が作成する契約書です。通常、贈与の際には作ることが推奨されています。
なお、生前贈与は、特に書面を交わさずにすることができます。しかし、後々のトラブル回避のためには、贈与契約書を作成すべきです。
例えば、生前贈与に関する約束を口頭でしていたにも関わらず、贈与者が急に「あの贈与の話はなかったことにしたい」と言ったとします。
この際、契約書がない場合は、贈与者の主張が一方的に通ります。しかし、贈与契約書を作成していた場合、贈与者の意志だけでは贈与が無効となりません。
「家族間のことだから……」と曖昧にしてしまいがちな部分ですが、土地等の生前贈与に関する家族間トラブルは珍しくありません。不測の事態があった際、迅速に対応できるよう、家族間の贈与であっても贈与契約書は作成してください。
4-2 相続人への贈与は特別受益にあたる場合がある
法定相続人に対して土地を生前贈与した場合、特別受益にあたる場合があります。
特別受益とは、特定の相続人が、被相続人が存命のうちに、贈与等を受けていたことにより、他の相続人より特別な利益を受けているとみなされるものです。
以下のケースをモデルに見ていきます。
- 相続人は、被相続人の長男と長女の2名
- 長男は、生前贈与によって、評価額2,000万円の土地を取得していた
- その他の財産は、金融資産2,000万円のみ
- 遺産分割協議によって、法定相続割合どおりに相続することが確定
※今回のケースでは、長男・長女ともに2分の1が法定相続割合となる
この場合、長男は相続時に金融資産をまったく受け取れない恐れがあります。
長男は、被相続人が有していた財産である土地と現金のうち、2分の1にあたる、2,000万円に相当する土地をすでに受け取っているとみなされる可能性があるためです。この場合、金融資産2,000万円はすべて長女が相続します。
なお、おしどり贈与を活用して家・土地の生前贈与を受けた配偶者の場合は、特別受益とみなされる可能性は低いでしょう。
また、贈与者が存命のうちに、遺言書の中で「該当の生前贈与は特別受益ではない」旨を明言しておけば、特別受益と判断される可能性が下がります。
4-3 贈与者が3~7年以内に亡くなると贈与財産が相続税の課税対象となる
生前贈与の贈与者が、贈与から3年以内に亡くなった場合、相続上の計算上は、その贈与がなかったものとみなされ、相続税の課税対象財産に含まれます。結果として、相続税が高額となる可能性がある点は、注意が必要です。
なお、法改正により、2024年4月1日以降に成立した生前贈与の場合は、贈与がなかったことにされる期間が変更され、4〜7年の間で変動することとなっています。従来よりも、相続税の課税対象財産に含まれる期間が伸びたため要注意です。
4-4 贈与税の申告期間は贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日である
贈与税の申告は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日のうちにしなければなりません。例えば、2025年6月に土地の生前贈与を受けた場合、2026年の2月1日から3月15日の間に申告することになります。
生前贈与が、年の早い段階に成立していれば、そこまで申告期間について気にする必要はありません。しかし、12月など、年末ごろに生前贈与が成立した場合、書類の準備期間に余裕がなくなる可能性が生じます。
土地の生前贈与をする際は、受贈者が申告準備で手間取らないよう、時期を考えることも重要です。
まとめ:土地の生前贈与は司法書士に相談可能
この記事では、土地を生前贈与する際の税金とその計算方法について解説し、そのうえで節税方法や注意点について紹介しました。
土地の生前贈与は、贈与税を中心に、多額の税金が発生する可能性があります。また、節税方法も煩雑な手続きを求められることが多く、関係者だけで完了しようとすると、手間取る可能性は決して低くありません。
「住まいの賢者」では、不動産の相続に強い司法書士と連携し、土地の生前贈与に関する相談や依頼を受け付けています。土地の生前贈与でお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合せください。
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