目次
はじめに
親が介護施設に入所したので、それまで住んでいた家が空き家になった、というケースはよく見られます。親が施設入所したことで実家が空き家になり、今後どうすべきか悩む方は少なくありません。
空き家への選択肢を狭めないために、親が施設入所して空き家になったらまずやることをチェックリストにしました。ぜひ活用してください。
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<1週間以内> □ 実家の登記簿謄本を取得し、名義人を確認する <1か月以内> □ 兄弟姉妹がいる場合、今後の方針について話し合う |
本記事では、施設入所後に空き家になった家に取るべき選択肢を紹介します。売却を選んだ場合の注意点や使える税制控除なども詳しく解説していますので、空き家をどうすればいいかお悩みの方は参考にしてください。
第1章 施設入所後に空き家になった実家、どうする?5つの選択肢
施設入所後の空き家の活用方法は、以下の表のとおり大きく分けて5つの選択肢があります。
| 活用方法 | どんな人向け? | 収入 | 主なメリット | 主な注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 売却 | もう使う予定がない人 | 現金収入あり | ・管理の負担がなくなる ・売却した後の資金を介護費用に充てやすい | ・親の同意が必要 ・親や親族の感情的な抵抗が出やすい |
| 賃貸 | 家を残しつつ収入を得たい人 | 毎月家賃収入 | 継続収入が得られる | ・入居者がつかないリスクがある ・将来の売却に影響が出る |
| 維持 | 親が戻る可能性がある人 | 収入なし(維持費が必要) | 将来の選択肢を残せる | ・管理の負担がある ・管理を怠ると特定空き家のリスク |
| 親族が住む | 家族で活用したい人 | 原則収入なし | 建物が傷みにくい | ・相続時のトラブルになりやすい |
| リバースモーゲージ | 売りたくないが資金が必要な人 | 融資で資金を確保できる | 家を手放さず資金調達 | ・対象物件が限定される ・一括返済のリスクがある |
以下で詳しい内容を見ていきましょう。
1-1 売却して現金化する
施設入所後の空き家を売却して現金化すれば、固定資産税や管理負担から解放されるだけでなく、相続時の遺産分割もしやすくなります。不動産のままでは相続人の間で分割して相続するのは難しいため、揉める原因になりがちです。
施設入所の費用捻出が必要な場合や、遠方で空き家の管理が難しい場合には、現実的に取りやすい選択肢だといえます。
ただし、親が生きている場合や親族間で話し合いをする中で、売却は感情面で反対されるケースが少なくありません。
売却を検討する場合は、事前に親や親族と話し合って同意を得ておく必要があります。特に空き家の名義が親である場合は、売却には本人の同意が必要です。認知症で判断が難しい場合は成年後見制度が必要になることにも注意してください。
1-2 賃貸に出して家賃収入を得る
家を保有したままで収入を得たいという場合は、賃貸に出すのも一つの方法です。家を残したまま継続的に収入を得られ、かつその収入を介護費用に充てられるのは大きなメリットでしょう。
ただし、賃貸として貸し出せば必ず借り手がつくかといえばそうではありません。特に地方や築年数が古い物件は賃貸募集しても借り手がつかないリスクがあります。
さらに、空き家を賃貸に出すと、相続してから売却するときに税制控除を受けられない可能性がある点にも注意しましょう。
1-3 空き家のまま維持・管理する
親が施設から戻る可能性がゼロではない場合や、売却のタイミングを待つ場合は、空き家のまま維持する選択肢もあります。
ただし、管理せずに放置するのはいけません。空き家が周囲の住民や景観に悪影響を与えると行政から判断されると、「特定空き家」に指定され、固定資産税が最大6倍になるリスクがあるためです。
1-4 子どもや孫(親族)が住む
子どもや家族が住むことで、建物が劣化せず良い状態を維持できます。ただ、事前に他の親族や相続人と話し合って同意を得ていなければ、相続時トラブルになりやすいことには注意が必要です。
【要注意】子どもや孫が住む場合は「事前の合意」が不可欠
将来の相続や売却時にトラブルへ発展させないよう、事前に以下の3点を確認しておきましょう。
- 費用負担の取り決め
- 使用貸借であることの明確化
- 将来の売却・相続時の合意
固定資産税や火災保険、修繕費用を誰が負担するのかを事前に決めておきましょう。全て負担するのが住んでいる人と決めてしまうと、相続時に揉めやすくなります。
また、無償で住む「使用貸借」であることは書面に残しておくと、将来の相続時にトラブルを防ぎやすくなります。あわせて、売却時の立ち退きや不動産評価の扱いについても事前に合意し、可能であれば簡単な覚書として残しておくと安心です。
1-5 リバースモーゲージで家を手放さず資金を確保する
リバースモーゲージとは、自宅を担保に融資を受け、親が亡くなった後に売却して返済する仕組みです。月々の返済は利息分のみ、あるいは元金に含まれるので月々の返済はないケースもあります。
介護費用や資金が必要であるものの、家を売却する決心がつかない場合には選択肢の一つとして考えてもよいでしょう。
ただ、金利が2.0~4.5%と比較的高いことや、物件の担保評価が下がると売却する前に一括返済しなければならないリスクがある点はデメリットです。
また、どんな物件でもリバースモーゲージの対象になるわけではありません。立地条件や交通の便がよいエリアなどの制限があり、地方では対象外になるケースも多くみられます。
第2章 施設入所後の空き家を「売却する」のが最適なケースは?
親が施設に入所すると、これまで当たり前にあった実家が、急に空き家として向き合う存在になります。
残すべきか手放すべきかと迷うのは自然なことですが、状況によっては売却が現実的な解決策になる場合もあります。
ここでは、売却を検討すべきタイミングの目安を解説します。
2-1 売却を検討すべき3つの条件
以下の3つの条件に当てはまる場合は、売却を積極的に検討してよいでしょう。
- 親が施設から戻る可能性がほとんどない
- 子どもや親族が住む予定がない
- 介護費用の捻出が必要
特に介護施設の費用は月額10万円〜30万円程度かかることが多く、長期化すると預貯金だけでは賄いきれないケースも少なくありません。売却によって得た資金を介護費用に充てられれば、経済的な不安を解消できます。
2-2 売却を急がなくてよいケース
一方で、以下のいずれかに当てはまる場合は、焦って売却する必要はありません。
- 親が施設から戻る可能性がある
- 介護費用は親の預貯金や年金で十分まかなえる
- 相続後に売却しても「空き家特例」が使えるため、税制上不利にならない
施設に入所した後、状況が落ち着いてから売却の判断をしても遅くはありません。また、介護費用についても目途が立っているのなら慌てて考えなくてもよいでしょう。
空き家特例とは、正式には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」と呼ばれます。適用される条件など詳しい内容は以下の記事も参考にしてください。
2-3 迷ったら「いくらで売れるか」を知ることからスタート
売却するか維持するかで迷っている段階でも、まずは不動産会社に査定を依頼して現在の資産価値を把握しておくことをおすすめします。
具体的な金額がわかれば、「売却した場合にいくらの資金が確保できるのか」「維持費と比較してどちらが経済的なのか」といった判断材料が得られます。
査定は無料で依頼できることがほとんどですので、検討段階で情報収集しておきましょう。
第3章 施設入所した親名義の空き家を売却する時の注意点
親が施設に入所すると、実家を売却したいと考える場面が出てきますが、名義が親のままである以上、子どもだけの判断で進められません。
売却には親本人の意思確認や、認知症の場合の法的手続きなど、事前に押さえておくべき注意点があります。
3-1 親本人の同意がなければ売却できない
不動産は名義人本人に売却の意思がなければ契約が成立しません。施設に入所していても、親に判断能力があれば「委任状」を作成することで、子どもが代理人として売却手続きを進めることが可能です。
ただし、不動産取引では法律により厳格な本人確認・意思確認が義務付けられています。たとえ代理人を立てたとしても、司法書士が施設へ出向くなどして親本人と直接面会し、売却の意思を再確認するのが一般的です。親が面会や受け答えに対応できる状態かどうか、事前に確認しておきましょう。
3-1-1 認知症になる前に家族に判断を任せたい場合は「家族信託」を活用する選択肢も
親に判断能力があるうちに家族信託契約を結んでおけば、受託者となった子どもが、親に代わって不動産の管理や売却を行うことができます。
委任状と異なり、判断能力が低下した後も継続して売却手続きを進められる点は、家族信託の大きな特徴といえます。検討する場合は、家族信託を請け負っている司法書士に相談してください。
参考:家族信託とは?/一般社団法人 家族信託普及協会
3-2 認知症の場合は成年後見制度が必要になる
親が認知症などで意思能力を欠いている場合、委任状による売却はできません。この場合は家庭裁判所に申し立てを行い、成年後見人を選任してもらう必要があります。
さらに、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が別途必要です。成年後見の申し立てから後見人の選任まで数か月かかるため、売却を考えている場合はかかる時間を踏まえて早めの準備が必要です。
3-3 住民票の扱いが売却手続きに影響することがある
施設入所にあたって、住民票を施設の住所や親族の住所に移すケースがあります。「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」を受けるには、売却する不動産が生活の本拠であることが前提となります。
施設入所後に住民票を実家に残したままだと、実際には住んでいないため「生活の本拠ではない」とみなされ、特例が適用されない場合があります。控除を確実に受けるには、施設入所後3年目の12月31日までに売却することが条件となります。
3-4 売却前に確認すべき3つのポイント
売却をスムーズに進めるために、以下の3点を事前に確認しておきましょう。
- 登記簿で名義を確認する
- 隣地との境界を確認する
- 建物の状態を確認する
まず、登記簿で親の単独名義になっているかどうかを確認します。共有名義の場合は、売却するのに全員の同意が必要です。
また、隣地との境界が不明確だと売却が難航します。その場合は、不動産会社や司法書士に相談し、必要に応じて境界確定測量を手配してもらいましょう。
さらに、建物の状態を把握しておくことも大切です。状態が悪ければ売却は難しくなるため、修繕やリフォームが必要なのかどうかを把握しておきます。
第4章 売却のタイミングはいつがベスト?施設入居時or相続後
売却時期によって、使える税制や手続き、家族の負担などが大きく変わるため、それぞれの特徴を理解したうえで判断しましょう。
ここでは施設入所時に売却する場合と相続後に売却する場合を比較し、考え方の目安を解説します。
4-1 施設入所時に売却するメリット・デメリット
親が施設に入所したタイミングで実家を売却する場合、いくつかのメリットがあります。
まず、親が住まなくなってから3年以内(3年を経過する日が属する年の12月31日まで)であれば、「居住用財産の3,000万円特別控除(マイホームを売ったときの特例)」が使える可能性があります。また、親に判断能力が残っていれば、委任状などを活用して手続きを進めやすく、売却まで比較的スムーズに進む点も利点です。
参考:No.3302 マイホームを売ったときの特例/国税庁
さらに、売却によって得た資金を介護費用に充てられるため、長期的な資金不安を軽減できるほか、空き家の管理や維持の負担から解放されるというメリットもあります。
一方で、デメリットも無視できません。
売却には親本人の同意が必要となり、精神的な負担を感じるケースも少なくありません。また、売却によって不動産が現金化されることで、相続時に相続税が増える可能性があります。
加えて、売却前には家の片付けや修繕が必要となり、手間や費用がかかる点にも注意が必要です。
4-2 相続後に売却するメリット・デメリット
不動産のまま相続する場合、現金で相続するよりも相続税評価額が低くなるため、相続税の負担を抑えられる可能性があります。
また、一定の条件を満たせば、「被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除」が使える点も大きなメリットです。
ただし、相続後の売却には注意点もあります。
売却前に相続登記を行う必要があり、さらに相続人全員で遺産分割協議がまとまらなければ売却はできません。協議が長引くと、その間も空き家の管理を続けなければならず、放置すれば「特定空き家」に指定されるリスクもあります。
4-3 売却のベストタイミングは状況によって異なる
売却に適したタイミングは、家庭ごとの状況によって異なります。以下の表を参考に判断してください。
| 状況 | おすすめのタイミング |
|---|---|
| 介護費用の捻出が必要 | 施設入所時 |
| 親が認知症でない | 施設入所時 |
| 親の預貯金で介護費用は十分 | 相続後でも可 |
| 相続税の基礎控除内に収まる | 相続後でも可 |
ただし、実際にはこれらの条件が複合することも多いため、迷う場合は専門家に相談しながら判断すると安心です。
まとめ:施設入所後の空き家は早めの判断が重要!迷ったら専門家に相談を
施設入所後の空き家をどうするかは、早めに検討を始めることが大切です。判断を先延ばしにすると、税制優遇を逃すなど選択肢が狭まる可能性があります。
売却、賃貸、維持、家族が住む、リバースモーゲージの5つの選択肢には、それぞれメリット・デメリットがあります。親の意向や家族の状況、介護費用の見通しなどを総合的に考慮した上で、最適な方法を選びましょう。
特に税制面では、売却のタイミングによって数百万円の差が出ることもあります。判断に迷う場合は、不動産会社への査定依頼から始め、必要に応じて司法書士や税理士など専門家に相談することをおすすめします。
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