マンションの相続税評価額を計算する流れ|控除・特例も紹介

マンションの相続税評価額を計算する流れ|控除・特例も紹介
執筆者: 木村道哉

はじめに

近年、都市部を中心にマンションの相続が増加しており、相続税の評価方法が注目されています。​特に2024年1月から導入された新ルールにより、マンションの相続税評価額の計算方法が大きく変更されました。​

それによって、いわゆる「タワマン節税」の効果が大幅に低下しているようです。

この記事では、マンションの相続税評価額を正確に計算する手順を解説します。また、相続時に利用できる控除や特例についても触れ、相続税の負担を軽減するためのポイントをお伝えします。

​第1章 相続税の基本的な仕組み

相続税は、被相続人が遺した財産に対して課される税金であり、遺産総額から一定の控除を差し引いた額に対して課税されます。​この章では相続税の基本的な仕組みを解説します。

1-1 遺産総額に対して相続税が課税される

相続税は、マンションや預貯金など個別の財産に対して直接課税されるのではなく、被相続人が遺した全体の遺産総額に基づいて計算されます。​

具体的には、遺産の総額から基礎控除額を差し引いた「課税遺産総額」に対して、法定相続人の法定相続分に応じた税率を適用して相続税の総額が算出されます。​

相続税は遺産全体に対して課税されるため、個々の財産の評価額や相続人の数、法定相続分などを総合的に考慮する必要があります。

1-2 相続税には基礎控除が用意されている

相続税には「基礎控除」という非課税枠が設けられており、遺産総額がこの控除額以下であれば、相続税の申告や納税は不要です。​

基礎控除額は以下の計算式で求められ、相続人の人数によって控除額が増減します。​

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

たとえば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円となります。​多くの家庭では相続税が発生しませんが、都市部の不動産価格の高騰などにより基礎控除額を超える遺産を相続するケースも増加しています。

​第2章 マンションの相続税評価額を計算する流れ

マンションの相続税評価額を正確に算出するためには、建物部分と土地部分をそれぞれ評価し、必要に応じて補正を行う必要があります。​

特に2024年以降、区分所有補正率の導入により、評価方法が一部変更されました。マンションの相続税評価額の計算は、以下の手順で行います。​

STEP① 建物部分の相続税評価額を計算する

建物部分の相続税評価額は、固定資産税評価額を基に算出されます。​この評価額は、市町村が定める再建築価格に経年減点補正率を適用して計算されます。​

マンションの場合、専有部分の評価額は、建物全体の評価額に専有面積の割合を乗じて求めます。​また、共用部分の持分も評価に含めなければなりません。​

共用部分の評価額は、建物全体の評価額に共用部分の持分割合を乗じて算出されます。​これらを合計することで、建物部分の相続税評価額が求められます。

STEP② 土地部分の相続税評価額を計算する

マンションの土地部分(敷地利用権)の相続税評価額は、まずマンション全体の敷地の評価額を算出し、その後、各所有者の持分割合(敷地権割合)に応じて按分します。​

敷地の評価額は、国税庁が公表する相続税路線価を基に、「路線価×敷地全体の面積」で計算されます。なお、​路線価が設定されていない地域で用いられるのは、固定資産税評価額に一定の倍率を掛ける「倍率方式」です。​

例えば、敷地全体の面積が1,000㎡で、前面道路の路線価が400千円/㎡の場合、敷地全体の評価額は「400千円×1,000㎡=4億円」となります。​

これに各所有者の敷地権割合を乗じたものが、個々の土地部分の相続税評価額です。​なお、土地の形状や接道状況に応じて補正が必要な場合もあります。​​

STEP③ 【2024年以降】区分所有補正率を計算する

2024年1月から、居住用の区分所有マンションの相続税評価に「区分所有補正率」が導入されました。従来の評価方法では市場価格と乖離が大きかった高層階や築浅のマンションの評価額を見直すための制度です。

​補正率は、築年数、総階数、所在階、敷地持分狭小度などの要素を基に「評価乖離率」を算出し、その逆数である「評価水準」に応じて適用されます。​

具体的には、評価水準が0.6未満の場合、相続税評価額は従来の評価額に評価乖離率を掛けた後、さらに0.6を乗じて算出されます。評価水準が0.6以上1以下であれば補正はなく、1を超える場合は評価乖離率をそのまま乗じます。

計算例を挙げておきましょう。

<11階建てマンションの3階部分の例>

  • 築年数:15年
  • 総階数:11階
  • 所在階:3階
  • 専有面積:59.69㎡
  • 敷地面積:3,630.30㎡
  • 敷地権割合:1,150,000分の6,319
  • 従来の区分所有権評価額:5,000,000円
  • 従来の敷地利用権評価額:10,000,000円

【計算ステップ】

1. 敷地利用権の面積

3,630.30㎡ × (6,319 ÷ 1,150,000) ≒ 19.95㎡

2. 敷地持分狭小度

19.95㎡ ÷ 59.69㎡ ≒ 0.3344

3. 評価乖離率の構成要素:

  • A(築年数):15 × (−0.033) = −0.495
  • B(総階数):(11 ÷ 33) × 0.239 ≒ 0.079
  • C(所在階):3 × 0.018 = 0.054
  • D(敷地持分狭小度):0.3342 × (−1.195) ≒ −0.399

4. 評価乖離率

−0.495 + 0.079 + 0.054 − 0.399 + 3.220 ≒ 2.459

5. 評価水準

1 ÷ 2.459 ≒ 0.407

6. 区分所有補正率

評価水準が0.6未満のため、2.459 × 0.6 ≒ 1.475

【最終的な評価額】

  • 区分所有権の評価額:5,000,000円 × 1.475 ≒ 7,375,000円
  • 敷地利用権の評価額:10,000,000円 × 1.475 ≒ 14,750,000円
  • 合計評価額:7,375,000円 + 14,750,000円 = 22,125,000円

第​3章 マンションを相続したときに利用できる控除・特例

マンションを相続する際には、相続税の負担を軽減するための以下のような控除や特例があります。

3-1 相続税の配偶者控除

相続税の配偶者控除は、被相続人の配偶者が取得した遺産のうち、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで、相続税が課税されない制度です。​

例えば、遺産総額が2億円で相続人が配偶者と子の場合、配偶者の法定相続分は1億円ですが、多い方の1億6,000万円まで、配偶者が相続しても相続税はかかりません。​

控除を適用するには、配偶者が法律上の婚姻関係にあること、相続税の申告期限(被相続人の死亡日から10か月以内)までに遺産分割が完了していること、そして税務署に相続税の申告書を提出することが必要です。​

なお、相続税が発生しない場合でも、申告書の提出は必須です。

3-2 小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、相続や遺贈により取得した宅地等の評価額を一定の割合で減額できる制度です。

​マンションの場合、敷地利用権(敷地権)が対象となり、被相続人が居住していたマンションであれば「特定居住用宅地等」として、最大330㎡まで80%の評価減が適用されます。​

また、被相続人が賃貸していたマンションの場合は「貸付事業用宅地等」として、最大200㎡まで50%の評価減が可能です。​

ただし、適用には相続税の申告期限までに遺産分割が完了していることや、相続人が継続して居住または賃貸事業を行っていることなど、一定の要件を満たす必要があります。

​第4章 マンションを相続したときの注意点

マンションを相続する際には、以下の4つの点に注意が必要です。

4-1 相続税申告だけでなく相続登記も必要である

相続税の申告は、相続開始から10か月以内に行う必要があります。​一方、相続登記は2024年4月1日から義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に手続を完了しなければなりません。​

これらの手続を怠ると、相続税の延滞税や無申告加算税、相続登記の過料などのペナルティが科される可能性があります。​

また、相続登記を行わないと、不動産の名義が被相続人のままとなり、売却や担保設定ができないなどの不利益が生じます。​

さらに、相続人が複数いる場合、将来的に権利関係が複雑化し、相続登記が困難になることもあるため、相続税の申告と併せて速やかに行うことが重要です。

4-2 2024年以降はタワーマンションによる相続税の節税効果が薄れた

2024年1月1日以降、タワーマンションの相続税評価方法が改正され、従来の「タワマン節税」と呼ばれる手法の効果が大幅に低下しています。​

タワマン節税は、タワーマンションの相続税評価額が市場価格より大幅に低くなる特性を利用し、相続税負担を軽減する手法でした。特に高層階では市場価格と評価額の差が大きく、節税効果が大きかったのです。

この改正では、マンションの相続税評価額と市場価格の乖離を是正するため、「区分所有補正率」が導入され、評価額が見直されることとなりました。​

具体的には、評価水準が0.6未満の場合、相続税評価額が時価の6割になるように引き上げられます。​これにより、特に高層階や築浅のタワーマンションでは、相続税評価額が従来よりも大幅に増加する可能性があります。

​その結果、タワーマンションを利用した相続税の節税効果は薄れ、他の対策を検討する必要が生じています。​

4-3 故人が賃貸収入を得ていた場合には準確定申告が必要である

故人が賃貸収入を得ていた場合、相続人は故人の死亡日までの所得について「準確定申告」を行う必要があります。

​この申告は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に行わなければならず、期限を過ぎると延滞税や加算税が課される可能性があります。

まとめ

マンションの相続税評価額を正確に把握することは、相続税の適切な申告と節税対策において非常に重要です。​建物部分は固定資産税評価額に基づいて評価され、土地部分は路線価方式や倍率方式で評価されます。

相続登記の義務化や準確定申告など、手続の面でも注意が必要な点が多いため、専門家への相談が推奨されます。準確定申告では、故人が死亡するまでに発生した家賃収入や関連する経費を計上します。

また、死亡後に発生した家賃収入は相続人の所得として扱われ、相続人自身の確定申告を行わなければなりません。これらの手続を適切に行うことで、税務上の問題を回避できます。

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この記事の執筆者

木村 道哉(きむら みちや)

木村 道哉(きむら みちや)

グリーン税理士法人 代表社員/税理士/弁護士

早稲田大学法学部卒。都内大手税理士法人のインハウスロイヤーとして経験を積んだ後、木村道哉税理士事務所を開業。資産税(相続税・贈与税)を中心とした申告業務に携わり、相続人間に紛争が生じた場合の相続税申告業務に詳しい。

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