不動産のある相続で遺留分を請求されたらどうする?計算方法と対処法

不動産のある相続で遺留分を請求されたらどうする?計算方法と対処法
執筆者: 中西孝志

📞 0120-905-573
平日9:00~20:00・土日祝9:00~18:00

不動産・相続の無料相談フォームへ

はじめに

相続によって不動産を取得したあと、他の相続人や親族から「遺留分を請求したい」と言われ、対応方法に悩む方は珍しくありません。

現在の民法では、遺留分の請求は金銭の形でのみ行えることになっています。したがって、遺留分を請求された場合は侵害額に相当する金銭を支払うことになります。

遺留分侵害額請求を無視すると、調停申立てや訴訟を起こされる可能性もあるため、専門家に相談をして早めに解決をすることを目指しましょう。

本記事では、相続した不動産で遺留分を請求された場合の対処法を解説します。まずは何をするべきなのかを確認して、適切な対応を行いましょう。

第1章 遺留分とは最低限保障される相続分

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分のことです。

被相続人が遺言によって、特定の相続人に多くの財産を与えたり、第三者に全財産を遺贈する場合でも、配偶者や子などの遺留分権利者は一定割合の財産を請求することができます。

遺留分は、相続人の生活保障や公平性を保つ目的で設けられた制度であり、被相続人の配偶者、子や孫、直系尊属に認められます。

1-1 【旧法】遺留分減殺請求とは

2019年7月1日より前に被相続人が亡くなった相続では「遺留分減殺請求」と呼ばれる制度が適用されていました。

遺留分減殺請求では、遺留分を侵害する遺言や生前贈与があった場合、遺留分権利者に原則として現物返還することになります。

つまり、遺留分として不動産そのものを返還することになるため、不動産の持分の一部を他の相続人と共有する状態になり、利用や処分が難しくなるケースが多く発生していました。

1-2 【現行法】遺留分侵害額請求とは

遺留分減殺請求では、共有状態の長期化によってトラブルに発展することも珍しくありませんでしたが、現在の民法では、遺留分侵害額請求に制度が改められています。

遺留分侵害額請求では、遺留分を侵害された相続人は不動産の返還ではなく、金銭での支払いを請求する形になります。

したがって、不動産を取得した相続人は所有権を失うことなく、金銭で解決できるようになりました。一方で、まとまった現金を用意できない場合は、資金繰りの問題が発生するおそれがあるため注意が必要です。

第2章 相続した不動産で遺留分を請求されたら

相続した不動産について遺留分を請求された場合、慌てずに状況を整理しましょう。

遺留分侵害額請求は、法律で認められた権利行使ですが、すべての請求がそのまま認められるわけではありません。特に、不動産がある相続では不動産の評価額が関係するため、認識の違いが生じやすく、対応を誤ると金銭トラブルに発展するおそれがあります。

では、不動産がある相続で遺留分を請求された場合のポイントを解説します。

2-1 遺留分の請求を無視してはいけない

遺留分侵害額請求を受けた際に、避けるべき対応は「遺留分の請求を無視すること」です。

内容証明郵便などで正式な請求が届いているにもかかわらず反応しない場合、請求した側は話し合いを断られたと判断し、家庭裁判所への調停申立てや訴訟に踏み切る可能性が高くなります。

裁判に進むと、時間や費用がかかるだけではなく精神的にも負担が大きいため、たとえ請求内容に疑問がある場合でも、まずは冷静に内容を精査することが重要です。

2-2 相手は本当に遺留分権利者か確認する

遺留分侵害額請求を受けた場合に、始めに確認するポイントが「相手が本当に遺留分権利者に該当するか」です。遺留分が認められているのは、配偶者、子、直系尊属に限られており、兄弟姉妹には遺留分がありません。

また、相続放棄をしている場合や、被相続人から廃除されていたり相続欠格に該当する場合などは、遺留分を請求することができません。廃除や相続欠格に該当するケースは、被相続人への虐待や著しい非行、遺言書の偽造などが挙げられます。

まずは、戸籍や遺言書の内容をもとに、法的な立場を確認しましょう。確認を怠ると、本来応じる必要のない請求に対応してしまうおそれがあるため注意が必要です。

2-3 遺留分侵害額請求の時効は成立していないか確認する

遺留分侵害額請求には、時効が定められています。

「相続の開始」および「遺留分を侵害する贈与または遺贈があったこと」を知った時から1年で消滅し、また相続開始から10年が経過しても請求権は消滅します。

遺留分の請求を受けた際は、相手がいつ相続の内容を知ったのか、請求時点でどれだけの時間が経過しているのかを確認しましょう。

もし時効が成立していた場合は、法的には支払い義務はありません。

しかし、正確に時効と判断するには専門的な知識が必要になるため、安易に自己判断せずに弁護士などの専門家に確認することが安全です。

2-4 請求されている金額は適正か確認する

遺留分侵害額請求で提示される金額は、必ずしも正確とは限りません。

特に不動産を含む相続の場合は、評価額の算定方法によって遺留分額が大きく変動します。

相手が固定資産税評価額ではなく、時価ベースで算定している場合や生前贈与の扱いを誤っている場合は、請求額が過大になっている可能性があるため注意が必要です。

請求書に計算根拠が示されていない場合は、どの評価方法で算定しているのかを必ず確認しましょう。

第3章 相続した不動産を含む遺留分の計算方法

遺留分として請求できる金額は、基本的に法定相続分の2分の1、もしくは相続人が直系尊属のみの場合は3分の1となります。より具体的な計算方法を以下に示します。

  • 総体的遺留分(相続財産+生前贈与等-債務) × 法定相続分 = 個別的遺留分

総体的遺留分は、遺留分を持つ相続人全体に認められる遺留分の割合を指します。個別的遺留分は、相続人それぞれに保障された最低限受け取れる遺産の割合です。

では、相続不動産を含む場合の遺留分計算を具体的な数字を使って見ていきましょう。

  • 被相続人:父
  • 相続人:配偶者と子2人
  • 遺産内容:不動産(自宅)3,000万円、預貯金1,000万円(合計4,000万円)
  • 生前贈与・債務:なし
  • 遺言内容:長男に全財産を相続させる

この場合、遺留分算定の基礎財産は4,000万円となります。

今回は配偶者と子が相続人となるため、総体的遺留分は2分の1です。

  • 4,000万円(基礎財産) × 1/2(総体的遺留分) = 2,000万円

次に、個別的遺留分を計算します。法定相続分は、配偶者が1/2、子が1/4ずつです。

  • 配偶者:2,000万円 × 1/2 = 1,000万円
  • 次男:2,000万円 × 1/4 = 500万円

このケースでは、長男がすべての財産を取得しているため、配偶者は1,000万円、次男は500万円を遺留分侵害額として長男に金銭で請求できることになります。

3-1 不動産の評価は適正か確認する

不動産は固定資産税評価額や路線価、公示価格など複数の基準があるため、どの基準を用いるかで遺留分の請求額に大きな差が生じます。

つまり、相手が提示している評価額が高すぎる、あるいは根拠が不明確な可能性も否定できないため注意しましょう。

遺留分算定では、原則として相続開始時の時価を基準とするのが一般的です。

不動産の評価は、不動産会社の査定書や不動産鑑定士による鑑定評価を取得することで、客観的な評価額を示すことができます。

評価方法を曖昧にしたまま話を進めると、不利になる可能性があるため、不動産の評価が適正か確認することが重要です。

3-2 特別受益・生前贈与の有無を確認する

遺留分を正しく計算するためには、特定の相続人が生前に受けた特別利益や生前贈与の有無を確認する必要があります。

例えば、住宅取得資金の援助や多額の現金贈与、不動産の無償譲渡などは、特別受益として遺留分算定の基礎財産に加算される可能性があります。

生前贈与が遺留分算定の基礎財産に算入されるかは、相続開始前10年以内が基準になっていますが、例外もあるため、通帳履歴や契約書等を確認して専門家に相談しましょう。

第4章 相手方の遺留分の請求に応じる場合の対応方法

遺留分侵害額請求が法的に有効で、請求額も妥当だと判断した場合は、遺留分の返還を行う必要があります。遺留分侵害額請求は原則として金銭で解決する制度のため、不動産を取得した側は金銭の支払いをしなければなりません。

ただし、遺留分の返還は高額になるケースも多く、手元に十分な現金がなく応じることが難しい場合も珍しくありません。その際は、話し合いによる解決を目指すのか、支払い条件の調整を行うのかなど、現実的な選択肢を検討しながら進めることが重要です。

では、相手方の遺留分の請求に応じる場合の対応方法を解説します。

4-1 話し合いで解決する際の注意点

遺留分の請求に応じる場合、まずは当事者同士の話し合いによる解決を検討しましょう。

話し合いで解決できる場合は、裁判手続きに比べて時間や費用の負担が少なく、柔軟な条件調整ができる点がメリットになります。ただし、関係が悪化した状態で話し合いを進めると、かえってトラブルになる可能性があるため注意が必要です。

また、話し合いでは、遺留分額の計算根拠を共有し、どの財産を基準に算定しているのかを明確にすることが重要です。

合意に至った場合は口約束で済ませずに、必ず合意書や示談書などの書面を作成し、支払金額や支払方法、期限などを明記しましょう。

4-2 遺留分侵害額を支払えない場合の対処法

遺留分侵害額を一括で支払うことが難しい場合は、分割払いによる支払いを提案しましょう。当事者間の合意が得られれば、数回に分けて支払う方法を取ることも可能です。

どうしても資金を確保できない場合には、不動産の一部または全部を売却して支払いに充てる選択肢も検討されます。

ただし、売却のタイミングには慎重な判断が求められるため、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。

4-3 不動産で代物弁済する方法

遺留分を現金で支払えない場合、不動産を譲渡して支払いに代える「代物弁済」を行う方法があります。

代物弁済とは、金銭の代わりに不動産や物品などの他の財産を給付することで、金銭の支払いと同じ効力を発生させることです。ただし、当事者双方の合意が必要であり、不動産の時価を基準に金額が見合っているかを確認することが重要です。

ただし、不動産を代物弁済で譲渡した場合は譲渡として扱われ、代物弁済を行なった側に譲渡所得税が課税されます。

代物弁済を選んだにもかかわらず、結果的に高額な譲渡所得税を支払うことになるため、代物弁済を考えている場合は資金繰りまで含めて専門家に相談しましょう。

第5章 遺留分の請求に納得できない場合の争い方

遺留分を請求されたものの、請求額や請求自体に納得できない場合、必ずしも相手の主張を受け入れる必要はありません。

なぜなら、遺留分侵害額請求は法律に基づく権利ですが、その行使方法や金額が常に正しいとは限らないからです。ただし、感情的に拒絶するのではなく、段階的に適切な手続きを経てから争うことが重要になります。

では、遺留分の請求に納得できない場合の争い方を解説します。

5-1 当事者間で話し合いをする

遺留分の請求に納得できない場合、最初に当事者同士での話し合いを検討しましょう。

相手がどのような根拠で請求額を算定しているのかを確認し、自身の主張や資料を提示することで、誤解や計算ミスが解消されるケースも珍しくありません。

特に不動産評価や生前贈与の扱いは、認識の違いが生じやすいため、具体的な資料をもとに冷静に話し合うことが重要です。

ただし、口論になったり相手が話し合いに応じない場合は、次の段階である調停を視野に入れる判断も視野に入れましょう。

5-2 調停を申し立てる

当事者間の話し合いで解決しない場合は、内容証明郵便などで権利行使の意思表示を行い、家庭裁判所に遺留分侵害額請求の調停を申し立てる方法があります。

調停では、第三者である裁判官と調停委員が間に入り、双方の主張を整理しながら合意点を探っていきます。

第三者の視点が入ることで、当事者同士の対立が緩和されることが期待できますが、相手が合意に応じなければ調停は不成立となるため、必ずしも解決できるとは限りません。

5-3 訴訟に発展するケースもある

調停でも合意に至らない場合、最終的な解決手段として訴訟に発展することがあります。

訴訟では、裁判所が提出された証拠や主張をもとに、遺留分侵害額の有無や金額について判断を下します。

訴訟をすることで結論が明確になりますが、解決までに時間と費用がかかるため注意が必要です。また、相続人との関係が決定的に悪化する可能性も高いため、請求額の大きさや争点の内容、今後の人間関係などを総合的に考えてから判断することをおすすめします。

第6章 遺留分問題を円満に解決するには弁護士に相談しよう

遺留分をめぐる問題は、相続人同士の将来の関係性にも大きく影響します。

金銭が絡むことで当事者だけでの解決が難しいため、早い段階で弁護士に相談することが、結果的に負担の少ない解決につながるケースが多く見られます。

交渉から法的手続きまで一貫して対応してくれるため、遺留分問題を円満に解決するためにも、第三者の専門的な視点を取り入れることも検討しましょう。

では、遺留分問題を弁護士に相談するメリットを解説します。

6-1 交渉を依頼できる

弁護士に依頼するメリットの一つが、相手方との交渉を全面的に任せられる点です。

遺留分侵害額請求では、金額や支払方法をめぐって意見が対立しやすく、当事者同士で直接やり取りを続けると感情が先行してしまうことも珍しくありません。

弁護士が代理人として交渉に入ることで、法的根拠に基づいた主張が中心となるため、不当または過大な請求を退けながら解決できる可能性が高まります。

6-2 感情的な対立を避けられる

遺留分問題によって過去の不満や感情が表面化し、家族や親族間の感情的な対立を引き起こすケースは多く見られます。

本来の争点である金額や権利関係から逸れてしまいがちですが、弁護士が間に入ることで、当事者同士が直接対峙する場面を減せるため、冷静に話し合いができるでしょう。

将来的な親族関係を完全に断ち切りたくない場合や、精神的な負担を減らしたい場合には、大きな効果が期待できます。

6-3 遺留分を調査してもらえる

弁護士に相談することで、遺留分侵害額請求の前提となる事実関係や金額を専門的に調査してもらうことができます。

不動産評価や生前贈与の扱いなども、過去の裁判例や実務を踏まえた検討が可能となるため、請求の妥当性を正確に判断できるでしょう。請求に応じるべきか、争うべきかを判断するうえで専門的な調査ができる点はメリットとなります。

6-4 法的な対応が可能である

話し合いや交渉で解決しない場合でも、弁護士であれば調停や訴訟などの法的手続きを適切に進めることができます。必要な書類の作成や主張の整理、証拠の提出などを任せられるため、手続きに伴う負担を軽減できるでしょう。

また、裁判になった場合の見通しやリスクも事前に説明を受けられるため、納得したうえで次の行動を選択できます。

まとめ:相続した不動産で遺留分を請求されたら早めに専門家に相談しよう

相続した不動産で遺留分を請求された場合、まずは慌てずに事実関係と法的条件を確認することが重要です。

特に、不動産が関係する遺留分問題は、計算方法が複雑で資金面の問題も絡むため解決までに時間がかかる可能性も高いでしょう。

遺留分を請求されたら、一人で悩まずにできるだけ早く専門家に相談することが、円満解決への近道です。

「住まいの賢者」では、司法書士と連携して、不動産の売却や相続の相談など一括で対応しています。不動産の相続問題にお悩みの方は、ぜひ無料相談をご活用ください。

不動産の無料相談なら
あんしんリーガル

電話相談は9:00〜20:00(土日祝09:00〜18:00)で受付中です。
「不動産のブログをみた」とお問い合わせいただけるとスムーズです。

この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

⇒ 執筆者一覧はこちら