換価分割で相続税はどうなる?知っておくべき税金の仕組みを解説

換価分割で相続税はどうなる?知っておくべき税金の仕組みを解説
執筆者: 木村道哉

📞 0120-905-573
平日9:00~20:00・土日祝9:00~18:00

不動産・相続の無料相談フォームへ

はじめに

換価分割を検討しているものの、「相続税はどうなるのか」「他に税金はかからないのか」などを疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。不動産を売って現金を分けるという方法は分かりやすく感じられますが、換価分割では相続税や譲渡所得税といった税金の知識が欠かせません。

本記事では、換価分割が相続税に与える影響や、売却時にかかる譲渡所得税、活用できる特例、損をしないための税務上の注意点までをわかりやすく解説します。「換価分割をしたら税金で損をするのでは……」と不安な方は、ぜひ参考にしてください。

第1章 換価分割を選択しても相続税には影響を与えない

換価分割を選んでも、相続税の額は変わりません。なぜなら、相続税は「相続開始時点における財産の評価額」に基づいて課税される仕組みであるためです。不動産を売却して現金を分ける換価分割は、遺産分割の方法の一つであり、実際の売却価格とは無関係に相続税が計算されます。

土地については路線価方式や倍率方式、建物については固定資産税評価額をもとに評価されることが一般的です。相続税は不動産の評価額に対して課税され、評価額よりも売却価格が高い場合でも、追加で相続税を納付する必要はありません。

第2章 評価額と市場価格に大きな差があれば売却価格で申告できる場合がある

相続税は原則として、相続発生時点の評価額(路線価や固定資産税評価額)に基づいて算出されます。しかし、実際に不動産を売却した価格が評価額よりも低い場合には、実際の売却価格(市場価格)に基づいて相続税を申告できる可能性があります。

例えば、相続税評価額が3,000万円の土地が、立地や形状の悪さなどにより実際には2,000万円でしか売れなかったような場合です。評価額を下回る実勢価格を基準に申告することで、相続税の負担を軽減することが可能です。

売却価格が評価額を上回っていても、相続税は「売れた金額」ではなく「相続時点の評価額」を基準に計算されます。そのため、不動産の評価額より高く売れた場合でも、相続税を追加で支払う必要はありません。

第3章 換価分割では譲渡所得税もかかる

換価分割によって不動産を売却した場合、その売却益に対して譲渡所得税・住民税が課税される可能性があります。譲渡所得とは、不動産を売却して得た利益のことで、計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用)

取得費は被相続人が不動産を購入した価格や仲介手数料など、譲渡費用は売却時にかかった仲介手数料や登記費用などです。相続した不動産について、取得費がわからない場合は、売却価格の5%を取得費とする概算取得費で計算します。この場合、課税される金額が大きくなる傾向があります。

また、譲渡所得にかかる税率は、不動産の所有期間によって以下のように変動する仕組みです。

  • 所有年数が5年以内(短期譲渡所得):所得税30% + 住民税9% + 復興特別所得税
  • 所有年数が5年超(長期譲渡所得):所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税

なお、所有期間の起算点は被相続人が取得した時点から通算されます。そのため、相続後すぐに売却した場合でも、被相続人の所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得として扱われます。

第4章 換価分割時に使える控除・特例

換価分割によって不動産を売却した場合、一定の条件を満たせば譲渡所得税の負担を軽減可能です。ここでは、換価分割時に使える控除・特例を解説します。

4-1 居住用不動産の特別控除の特例(マイホーム特例)

被相続人が亡くなる前まで一緒に住んでいた家を、相続人が譲り受けて売却した場合、一定の条件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。居住用不動産の特別控除の特例の対象となるのは、以下のようなケースです。

  • 売却した不動産が、売却する年の1月1日時点で居住用であること
  • 相続人が自ら居住していた家屋またはその敷地であること
  • 親族など特別な関係のある人に売却していないこと
  • 売却した年・前年・前々年に、他のマイホーム特例(買換え・譲渡損失の繰越控除など)を利用していないこと
  • 他の特例(収用の特別控除など)を併用していないこと

この特例が使えれば、譲渡所得が3,000万円以下なら譲渡所得税がゼロになるケースもあります。ただし、この特例は、空き家のまま売却した場合には適用されません。相続後に住まずに売却するケースは、次に紹介する空き家の特別控除の特例の対象となる可能性が高いでしょう。

4-2 空き家の特別控除の特例

空き家の特別控除の特例とは、相続した空き家を売却した際に、一定の条件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円(※令和6年1月1日以後に行う譲渡で、被相続人の居住用家屋・敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上の場合は2,000万円まで)を控除できる制度です。

相続人がその不動産に住んでいなくても適用されるため、前述の居住用不動産の特別控除の特例(マイホーム特例)が使えない場合でも、譲渡所得税を軽減できる可能性があります。

空き家の特別控除の特例の対象となるのは、以下のようなケースです。

  • 昭和56年5月31日以前に建てられた
  • 被相続人が亡くなる直前まで一人で暮らしていた
  • 売却前に耐震改修を行うか、建物を解体して更地にしている
  • 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却している
  • 他の特例を受けていない
  • 親族などの特別な関係者に売却していない
  • 売却代金が1億円以下である

当該特例の控除制度を利用するには、空き家の所在地の市区町村役場に被相続人居住用家屋等確認書の取得申請を行う必要があります。また、家屋を耐震改修したうえで売却する場合は、指定検査機関が発行する耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の提出が必要です。

4-3 取得費加算の特例

取得費加算の特例とは、相続税を支払った相続人が、相続から3年以内に財産を売却した場合、その支払った相続税の一部を譲渡所得の取得費に加算できる制度です。これにより譲渡所得を圧縮でき、譲渡所得税の負担を軽減できます。取得費加算の特例の適用要件は以下の通りです。

  • 譲渡を行う人が、実際に相続税を納めていること
  • 相続税の申告期限(原則、相続開始から10か月後)の翌日から、3年を経過する日までに譲渡していること
  • 売却した財産が、相続税の課税対象となった相続財産であること

例えば、総額1億円を相続、その内売却した不動産の相続税評価額6,000万円で、支払った相続税500万円のケースを考えてみましょう。この場合、不動産に対応する相続税は次の計算式で求めます。

500万円×6,000万円÷1億円=300万円

相続財産に占める不動産の価値が60%なので、このケースで取得費に加算できる相続税は300万円となる計算です。

そして、不動産を5,000万円で売却し、取得費と譲渡費の合計費用が2,200万円だった場合、本来の譲渡所得は2,800万円となります。ここで支払った相続税の500万円の内、不動産に対応する300万円を取得費に加算することで、譲渡所得は2,800万円から2,500万円に減額され、課税対象の金額が圧縮されます。このように、取得費加算の特例を利用すると、譲渡所得を圧縮でき、結果として課税対象となる金額を減らすことができます。

なお、取得費加算の特例を使うには、相続税申告書の控えや納税証明書などの提出が必要です。換価分割を予定している場合は、早い段階で税理士に相談し、必要書類の整理を進めておくと安心でしょう。

第5章 換価分割で損しないための税務上の注意点

換価分割は公平な相続を実現しやすい一方で、税務上の注意点も存在します。知らずに進めてしまうと、譲渡所得が大きくなったり、特例が使えなかったりすることで税負担が増える可能性があります。ここでは、換価分割を行う前に把握しておくべき注意点を見ていきましょう。

5-1 取得費が不明な場合は譲渡所得が大きくなりやすい

不動産の取得費は、被相続人が購入した際の金額や、建築費などに基づいて計算されますが、古い物件の場合は取得費の資料が残っていないケースも少なくありません。このような場合は、概算取得費として売却価格の5%しか取得費として認められないことになります。

例えば3,000万円で不動産を売却した場合、取得費は150万円とみなされます。残りの2,850万円が譲渡所得とされるため、本来より大きな税負担が生じる可能性が高いでしょう。

5-2 売却タイミングによっては特例を適用できない

空き家の特別控除の特例や取得費加算の特例は、以下のように適用期限が定められています。

特例適用期限
空き家の特別控除の特例相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
取得費加算の特例相続税の申告期限(原則、相続開始から10か月後)の翌日から、3年を経過する日までに譲渡していること

期限を過ぎると特例を適用できなくなるため、換価分割をする際は早めに売却手続きに取り組みましょう。なお、空き家の特別控除の特例と取得費加算の特例は、併用できない点に注意が必要です。

5-3 相続人それぞれが確定申告をする必要がある

換価分割で不動産を売却した場合、売却代金は相続人ごとに分配されます。この分配金はそれぞれの相続人の譲渡所得とみなされ、相続人全員がそれぞれの持分に応じて確定申告を行う必要があります。

申告を怠ると、後から延滞税や加算税などのペナルティが課されるため、換価分割を行う場合は相続人全員が確定申告をする必要があることを把握しておきましょう。

まとめ:換価分割の税金で不安があるなら専門家への相談がおすすめ

換価分割は、不動産を現金化して相続人間で公平に分配できる有効な方法ですが、相続税や譲渡所得税といった複数の税金が関係するため、税務面での注意が欠かせません。

特例を活用すれば税負担を軽減できる一方で、売却のタイミングや取得費の有無によっては、想定以上の税金がかかることもあります。さらに、相続人それぞれが譲渡所得について確定申告を行う必要があるなど、実務上の手間や責任も伴います。

「住まいの賢者」では、相続に強い司法書士と連携し、不動産の換価分割に関するご相談や、一連の手続きをサポートしています。換価分割を検討しているものの、税金や手続きに不安がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

不動産の無料相談なら
あんしんリーガル

電話相談は9:00〜20:00(土日祝09:00〜18:00)で受付中です。
「不動産のブログをみた」とお問い合わせいただけるとスムーズです。

この記事の執筆者

木村 道哉(きむら みちや)

木村 道哉(きむら みちや)

グリーン税理士法人 代表社員/税理士/弁護士

早稲田大学法学部卒。都内大手税理士法人のインハウスロイヤーとして経験を積んだ後、木村道哉税理士事務所を開業。資産税(相続税・贈与税)を中心とした申告業務に携わり、相続人間に紛争が生じた場合の相続税申告業務に詳しい。

⇒ 執筆者一覧はこちら