保安林を相続する流れは?相続税評価方法と相続しない場合の対処法

保安林を相続する流れは?相続税評価方法と相続しない場合の対処法
執筆者: 中西孝志

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はじめに

相続財産の中に、山林や保安林が含まれていると聞くと、多くの方が不安を感じるのではないでしょうか。

保安林は、宅地や預貯金と違って自由に使ったり売ったりできないイメージが強く、相続後の管理や税金の負担を心配する声も珍しくありません。

本記事では、保安林を相続する際のポイントと相続するか迷った際の選択肢を解説します。

第1章 保安林とは

保安林とは、水を蓄え、川の流れを安定させるはたらきや土砂災害の防止、生活環境の保全など特定の公益的な目的のために国や都道府県が指定した森林のことです。

一般的な山林と異なり、保安林は守るべき森林として特別な扱いを受けており、伐採や土地の形状変更などに厳しい制限が設けられています。

保安林は国土を守る役割を担っているため、相続財産として見た場合、経済的な価値だけではなく、社会的な価値を持つことを把握しておきましょう。

1-1 保安林に指定されるとどうなる?

保安林に指定されると、土地所有者であっても自由に利用できなくなります。

例えば、立木の伐採を行う場合には、事前に都道府県知事の許可が必要です。無断で伐採や造成を行うと、罰則の対象になる可能性もあるため注意しましょう。

また、建物を建てたり、太陽光発電設備を設置したりといった行為も、原則として制限されます。したがって、資産として活用しにくい土地と判断されることが多く、相続人にとっても負担に感じやすいでしょう。

1-2 保安林の指定解除は可能?

結論から言うと、保安林の指定解除は可能ですが、現実的にはハードルが高いでしょう。

指定解除が認められる条件は、災害で森林の復旧が困難な場合や代替となる保安林が確保される場合など、限られたケースに限られます。

例えば「相続したが管理できない」「売却したい」といった理由だけでは、指定解除はほぼ認められません。

保安林を相続する際は、長期的に制限が続く前提で判断する必要があります。

第2章 保安林かどうかを調べる方法

相続手続き全体の方向性を決めるためにも、まずは相続財産に含まれる土地が保安林か把握することが重要です。

被相続人が生前に説明していなかった場合や、古い名義のまま長年放置されていた山林の場合、相続人自身が調査しなければならないケースも珍しくありません。

また、山林だからすべて保安林というわけではなく、一部だけが保安林指定を受けている場合もあるため、公的な資料をもとに確認しましょう。

では、保安林かどうかを調べる方法を解説します。

2-1 登記事項証明書で確認する

登記事項証明書は、土地の基本情報を把握するための資料です。

地目や面積、所在地や所有者の履歴などが記載されており、法務局で取得することができます。保安林に該当していた場合、権利部や表題部の備考欄に「保安林」の記載がされているため確認しましょう。

ただし、登記事項証明書の記載は必ずしも最新の指定状況を反映しているとは限りません。土地の一部のみが保安林に指定されている場合は「山林」のままになっているケースもあるため、登記事項証明書のみで最終判断をしないことが重要です。

2-2 保安林台帳で確認する

より正確に確認する方法が、都道府県が管理している保安林台帳を調べることです。

保安林台帳には、指定年月日や保安林の種類、指定理由、解除履歴の有無などが詳細に記録されています。

都道府県庁の森林整備課や林務課などの窓口で閲覧できますが、最近では自治体によってはGIS(地図情報システム)を使用してオンライン上で確認できる場合もあります。

登記事項証明書と保安林台帳の両方を照合し、正式な指定状況を確認しておきましょう。

第3章 保安林を相続する際の流れ

保安林を相続する場合でも、相続の手続き自体は一般の不動産と同様です。

ただし、保安林には森林法に基づいた特有の制限や義務があることから、相続後に必要となる対応が増えるため注意が必要です。

では、保安林を相続する際の流れを見ていきましょう。

STEP① 相続登記を完了させる

相続が発生したら、まず行うべき手続きが相続登記です。

相続登記は、被相続人名義となっている不動産を相続人の名義へ変更する手続きのことです。2024年以降は相続登記が義務化されているため、保安林でも例外はなく、正当な理由なく放置すると過料の対象になる可能性があります。

相続登記に必要な書類は以下です。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 被相続人・相続人全員の住民票
  • 遺産分割協議書
  • 固定資産評価証明書
  • 登記事項証明書
  • 遺言書(自筆証書遺言の場合は家庭裁判所の検認が必要)

保安林は「どうせ自由に使えない土地だから」と後回しにされがちですが、名義が被相続人のままだと、今後の手続きがスムーズに進まなくなります。

書類の内容や通数はケースによって異なるため、不安がある場合は司法書士に確認しながら一緒に進めると安心です。

STEP② 各自治体へ届出する

相続登記が完了したあとは、保安林を管轄する都道府県や市町村に所有者変更の届出を行います。保安林の新しい所有者を行政側に把握してもらうために必要な手続きです。

届出を行っておかないと、立木の伐採許可を申請する際や補助金・助成金を利用する際に支障が出る可能性があるため注意が必要です。

また、届出先や書式は自治体ごとに異なるため、相続した保安林が所在する地域の担当部署に早めに確認しておきましょう。

第4章 保安林の相続税評価方法

保安林は森林法による厳しい利用制限が課されており、自由に造成したり売却したりできないことから評価額は低く抑えられる傾向があります。

相続税の負担を考えるうえではメリットですが、保安林の評価は土地と立木を分けて評価する必要があるため専門的な知識が必要です。自己判断で計算するのは難しいため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

4-1 保安林の評価額の計算方法

保安林の評価額は、まず保安林でないものとして山林を評価した価額を求め、伐採制限の区分に応じた控除割合で減額していきます。

控除割合は、財産評価基本通達の「50(保安林等の評価)」と「123(保安林等の立木の評価)」に定められており、森林法による伐採制限や開発制限の度合いに応じて変動します。

  • 保安林の評価額=基礎価額×(1−控除割合)

基礎価額とは、その山林を「保安林でないもの」として評価した価額のことです。控除割合には伐採制限の区分に応じた割合を当てはめて計算します。

制限が厳しいほど評価額は低くなりますが、判断には専門的な知識が必要なため、税理士に計算を依頼するとよいでしょう。

4-2 倍率地域に所在する保安林の評価額の計算方法

倍率地域にある保安林の場合、まず倍率方式で固定資産税評価額に基礎価額を出して、伐採制限の区分に応じて 控除割合で減額します。

倍率地域にある土地は、原則として以下の計算式に当てはめます。評価倍率は国税庁が公表している「評価倍率表」で確認しましょう。

  • 基礎価額=固定資産税評価額×評価倍率(山林の倍率)

また、保安林は固定資産税が非課税であるため、固定資産税評価額がそのまま使えないケースが出ます。

固定資産税評価額が把握できない場合は、付近にある山林を基準に比準して基礎価額を算定しましょう。

次に、保安林であることによる利用制限を考慮し、減額補正を行います。

  • 保安林の評価額=基礎価額×(1 − 控除割合)

保安林にもかかわらず、一般の山林と同様に評価してしまうと過大評価につながるため、必ず減額補正を行いましょう。

4-3 立木の相続税評価額の計算方法

保安林は、土地とは別に立木も相続税の課税対象です。

立木の相続税評価は、国税庁が公表している「森林の立木の標準価額表」などを参考に、樹種や樹齢、管理状況などを考慮して行われます。

  • 立木の評価額=基礎価額×(1 − 控除割合)

保安林の場合は伐採そのものに制限があり、理論上の価値が実現できるとは限らないことから、基礎価額から控除割合による控除を行って評価します。

第5章 保安林を相続するか迷った場合のポイント

保安林を相続すべきか迷った場合は、今後も無理なく持ち続けられるかどうかで判断することが重要です。

保安林は所有している限り管理責任が発生するため、安易に相続してしまうと、あとから手放したくても簡単には処分できず、長期的な負担になる可能性があります。

ここからは、相続を決断する前に確認しておきたいポイントを解説します。

5-1 固定資産税と管理コストを確認する

保安林は固定資産税が非課税とされるため、税金面だけを見ると負担が小さいように感じられます。

しかし、倒木や土砂流出を防ぐための最低限の管理や、自治体から指導を受けた際の対応費用など税金以外のコストが継続的に発生します。

相続に迷ったら「毎年いくらかかるのか」「今後年齢を重ねても管理できるか」をイメージすることが重要です。特に遠方にある保安林の場合、現地確認のための交通費や時間的コストも含めて判断しましょう。

5-2 自由に利用や売却ができるか確認する

保安林は、所有していても自由に使える土地ではありません。所有しているからといって、経営に活用したり建物を建てたりはできないため注意しましょう。

また、建物の建築や造成は原則として制限されているため、売却も買い手が限られます。

「将来売ればいい」「何かに使えるかもしれない」といった期待だけで相続すると後悔につながるため、相続前の段階で、利用や売却ができる可能性を確認しておきましょう。

5-3 収益を生む見込みはあるか確認する

保安林でも、立木の成長や補助金制度を活用することで収益を得られる場合があります。

ただし、短期的に利益が出るケースは少なく、長期的な視点が必要です。また、伐採制限がある以上、一般的な山林のように自由に木材を販売できるわけではありません。

相続を考えている場合は「将来的に誰が管理し、誰が収益を受け取るのか」「赤字が出た場合に誰が負担するのか」など、マイナス面まで想定したうえで判断することが大切です。

5-4 共有名義になるリスクがあるか確認する

相続人が複数いる場合、話し合いがまとまらず、保安林が共有名義になるケースは珍しくありません。共有名義になると、伐採や売却などの重要な判断をする際に、共有者全員の同意が必要になります。

共有名義にすると相続人同士の関係が変化したり、さらに次の世代へ相続が発生したりすると、権利関係はより複雑になります。トラブルを未然に防ぐためにも、本当に共有で問題ないのか慎重に検討することが重要です。

第6章 保安林が不要な場合の対処法

保安林の相続が発生したものの「管理できない」「他に住んでいて関わる余裕がない」と感じる方も多いでしょう。

保安林は一度相続すると簡単に手放せないため、不要だと感じた時点で早めに対処法を検討することが重要です。

では、保安林を相続しない、または手放したい場合の選択肢を紹介します。

6-1 相続放棄をする

相続放棄とは、最初から相続人ではなかったことにする手続きです。

家庭裁判所に申述を行い、相続放棄をすることで保安林を含むすべての相続財産を引き継がずに済み、管理義務や将来の負担から完全に解放されます。

ただし相続放棄は「保安林だけ」を選んで放棄することはできません。預貯金や自宅など、プラスの財産も含めて一切相続できないため注意が必要です。

また、原則として相続開始を知った日から3か月以内に手続きを行う必要があるため、判断を先延ばしにすると選択肢が狭まります。

相続放棄を検討する際は、保安林以外の財産状況も踏まえて慎重に検討しましょう。

6-2 他の相続人が単独で取得する

相続人が複数いる場合は、他の相続人が保安林を単独で取得する方法もあります。

例えば、山林の管理に慣れている親族や地元に住んでいる相続人が引き継ぐケースです。

他の相続人が単独で取得することで、相続放棄のように他の財産まで失うことなく、自分は保安林の管理責任から外れることができます。ただし、単独取得する相続人に過度な負担が集中しないようにバランスを取る工夫が必要です。

話し合いが難航しそうな場合は、第三者である専門家を交えて協議するとよいでしょう。

6-3 売却を検討する

保安林は利用制限があるため、一般の不動産のように自由に売却できるわけではありませんが、全く売れないとは言い切れません。

例えば、林業事業者や隣接地の所有者、森林組合などが買い手になるケースがあります。

ただし、立地条件や面積、アクセス状況によっては買い手が見つからないことも多く、売却までに時間がかかる点は覚悟しておく必要があります。

保安林の売却実績がある不動産業者や専門業者に相談し、売却が可能な価格や可能性を探りながら進めることが重要です。

6-4 寄付・相続土地国庫帰属制度を利用する

どうしても引き取り手が見つからない場合、自治体への寄付や相続土地国庫帰属制度の利用を検討する方法もあります。

相続土地国庫帰属制度とは、一定の条件を満たした土地を国に引き取ってもらえる制度で、管理負担を解消できる点がメリットです。

ただし、すべての保安林が対象になるわけではなく、境界が明確であることや管理上の支障がないことなど厳しい要件があります。

また、申請時には負担金が必要になる点にも注意が必要です。制度の利用可否については、早めに専門家や行政窓口へ相談することをおすすめします。

まとめ:保安林には制限がある!早い段階で専門家に相談しよう

保安林の相続は、一般の不動産と比べて利用制限や手続きの注意点が多くあります。

相続後の負担も大きいためメリットが少ないように感じますが、保安林は必ずしも「相続してはいけない財産」ではありません。

固定資産税の軽減措置や相続税評価が低いことから、状況によっては無理なく保有できるケースもあります。相続を考えている場合は、自分や家族のライフスタイル、管理体制まで見据えて判断しましょう。

相続が発生する前の早い段階で専門家に相談して、後悔のない選択肢を行いましょう。

「住まいの賢者」では、司法書士と連携して、不動産の登記や相続の相談など一括で対応しています。不動産の相続問題にお悩みの方は、ぜひ無料相談をご活用ください。

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この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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