相続放棄後は固定資産税の納付義務がなくなる?固定資産税がかかるケース

相続放棄後は固定資産税の納付義務がなくなる?固定資産税がかかるケース
執筆者: 木村道哉

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はじめに

相続によって財産を引き継いだ場合、遺産の総額によっては、相続税を納付する義務が生じます。また、不動産を相続によって取得した場合、固定資産税を支払う必要もあります。
ただし、相続放棄をした際は、財産を引き継ぐ権利を失う代わりに、原則、相続税や固定資産税を支払う必要が無くなります。
しかし、相続放棄のタイミングや内容、財産の状態によっては、相続放棄をした後でも、固定資産税の納税義務が生じる可能性があります。この点について、「なぜ相続放棄をしたのに税金を払うのか?」と、不安を感じる方は少なくありません。
この記事では、相続放棄後に固定資産税がかかるケースとその対処法について解説します。その上で、相続放棄する際の注意点についても触れていきます。

第1章 相続放棄をすると固定資産税の納付義務がなくなる

相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産を一切相続しないことです。ここでいう財産には、借金などの負債も含むため、マイナスの相続を避けたい際に使われることがあります。なお、相続放棄は、家庭裁判所で手続きをする必要があります。

原則、相続放棄をした場合、固定資産税の納付義務は無くなります。これは、相続放棄をした段階で、「被相続人が有していた財産の一切の権利義務を放棄する」となるためです。ここでいう財産には、不動産も含まれるため、固定資産税を支払う必要は無くなります。

相続放棄の具体的な申請方法・必要書類について不安がある方は、以下の記事も合わせてご確認ください。

第2章 相続放棄をしても固定資産税がかかるケース

第1章でまとめた通り、相続放棄をした場合、固定資産税の納付義務は無くなります。しかし、相続放棄が受理されるタイミングによっては、固定資産税を納付する義務が残るケースがあります。

例えば、以下の事例では、相続放棄をしても、固定資産税の支払いが発生する可能性が高いでしょう。

  • 11月末日に被相続人が死亡した
  • 相続放棄の手続きを翌年1月中旬にした

このケースでは、相続放棄手続きのタイミングには不備がありません。相続放棄の期限は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」と定められているためです。
しかし、固定資産税の納税義務者が決定する時期の関係から、固定資産税の納付義務が生じます。
固定資産税の納付義務者は、「毎年1月1日時点で固定資産税課税台帳に納税義務者として登録されている人」です。この課税台帳に登録されていれば、実際の所有の有無を問わず、固定資産税の納付義務者となります。
相続が発生した場合は、被相続人に代わって「相続人の代表者」が1月1日時点で課税台帳に登録されます。これにより、代表者が固定資産税の納付義務者となります。
固定資産税課税台帳に登録された時点で固定資産税納付義務が生じます。そのため、1月1日以降に相続放棄をしたとしても、固定資産税の納付義務が発生することになります。なお、相続放棄手続きを12月中までにしていたとしても、受理されるタイミングが1月1日を過ぎた場合は、固定資産税の納付義務が発生します。

第3章 相続放棄後に固定資産税の納税通知書が届いたときの対処法

3-1 固定資産税を納付後に本来の納税義務者に請求する

相続放棄をしたのちに、固定資産税の納付通知書が届いた場合、「ほかの相続人が適切に相続登記をしていない」ことが考えられます。
ほかの相続人が不動産を相続していた場合は、その相続人が本来の固定資産税の納付義務者です。そのため、本来はその相続人が固定資産税を支払う必要があります。
しかし、固定資産税の納税通知書が届いた時点で、一度「固定資産税課税台帳上の代表者」が納税する必要があります。これを無視すると、理由を問わず、納付期限後から延滞金が発生してしまいます。そのため、一度固定資産税を納付することが必須です。

ただし、本来の納税者でない人が税金の支払いを立て替えた場合、固定資産税に相当する金額を、本来の納税義務者に請求することができます。これは「求償権」と呼ばれる、正当な権利です。
自身が相続放棄をしたにも関わらず、固定資産税の納付通知書が来た場合は、1度支払ったうえで、求償権に基づく請求をしましょう。

3-2 不服申し立てをする

相続放棄をしたのちに、固定資産税の納付通知書が来た場合、行政手続きに不備があったとして、「不服申し立て」をすることが可能です。これは、行政不服審査法に基づいた正当な権利です。
不服申し立ては、審査請求書に必要事項を記入し、処分等があった翌日(今回のケースでは、納税通知書が手元に届いた翌日)から3か月以内に審査請求先に提出することでできます。なお、費用はかかりません。
固定資産税の納付について不服申し立てをする場合は、納税先の市区町村長が「審査請求先」に該当します。

ただし、納税義務者が法定相続人の場合、固定資産税支払いに関する不服申し立てが通る可能性は極めて低いといえます。
自身が相続放棄をしていて、なおかつ別の相続人が不動産を相続していた場合、3-1のように、求償権に基づく請求をすることを推奨します。

第4章 固定資産税の還付請求はできるが認められる可能性は低い

相続放棄したにも関わらず、納税通知書に基づき固定資産税の支払いをした場合、「還付請求」をすることができます。
還付請求は、税金等の過払いが発生した際に、超過分の返還を請求できる制度です。例えば、本来10万円の固定資産税を支払うところ、行政の算定間違いにより15万円の支払いをした場合は、5万円の還付請求をすることができます。
相続放棄のあとで、固定資産税の支払い義務がないにも関わらず、支払いをした場合は、以下2点の条件を満たせば、固定資産税の還付を受けられる可能性があります。

  • 固定資産税の納期限の翌日より5年以内
  • 還付を請求する法律上の根拠がある

ただし、現実には、この還付請求が通る可能性は高くありません。条件2つのうち、1つ目の「固定資産税の納期限の翌日より5年以内」については期限さえ守れば請求できるため難しくありません。しかし、もう1つの「還付を請求する法律上の根拠」が認められない可能性が高いのです。

第2章でまとめた通り、「固定資産税課税台帳」に代表者として名前が載った時点で、固定資産税の納付義務が発生します。そのため、固定資産税課税台帳に名前が載っていることが確かな時点で、「還付を請求する法律上の根拠」があるとはみなされない可能性がかなり高いです。
このことから、固定資産税の還付請求自体はできますが、それが認められる可能性は低いといえます。
なお、年内に相続放棄を完了し、なおかつ受理もされていたにも関わらず、固定資産税の納付通知書が来た場合は、行政の手続きミスの可能性があります。この場合は、「還付を請求する法律上の根拠」があると認められる可能性が高いです。そのため、還付請求をすることで、支払った金額が戻ってくる可能性が高いといえます。

第5章 相続放棄をする際の注意点

5-1 遺産から固定資産税を払わないようにする

固定資産税を支払う際、被相続人の預貯金などから支払うことは、相続放棄を考えている場合避けるべき行為です。相続が確定する前に、被相続人の財産を使用してしまうと、相続を「単純承認した」と判断され、相続放棄ができなくなるためです。

この単純承認は、借金・相続を希望しない財産も含めたすべての財産を無条件で相続すると認める行為です。これに該当する行為をした場合、「相続放棄する意思はない」とみなされ、相続放棄を申請しても、相続放棄が認められない可能性が高まります。
そのため、被相続人の財産を用いて、固定資産税を支払わないようにしてください。一時的な立て替えが必要な場合は、自身の財産から支払うことを強く推奨します。

5-2 相続不動産の名義変更をしないようにする

相続放棄を希望する際、被相続人が有していた不動産の名義変更はしないようにしてください。これをすると、相続放棄自体が認められなくなる恐れがあります。
これは、相続財産の1つである不動産の名義を変更する行為が、「相続財産の処分行為」に該当するとみなされるためです。相続財産の処分行為があると判断された場合、相続を単純承認したと判断されます。
5-1と同様、単純承認が認められた場合、相続放棄はできなくなります。結果として、固定資産税や相続税などの支払い義務が発生するため、十分に注意してください。

5-3 相続放棄には期限がある

相続放棄には、「熟慮期間」と呼ばれる申請の期限が定められています。この熟慮期間を過ぎた場合、相続を単純承認したとみなされ、相続放棄はできなくなります。
相続放棄の熟慮期間は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月間と定められています。このため、相続放棄の申請期限は3か月以内となります。

なお、「自己のために相続の開始があったことを知った時」については、一般的には被相続人が亡くなったときを指します。
ただし、何らかの事情で、被相続人が亡くなったことを知らなかった場合は、「被相続人が亡くなった時」を熟慮期間の起算点としません。例えば、特別の事情で被相続人と疎遠になっており、被相続人が亡くなったことを逝去から2か月後に知ったとします。この場合は、「自身が被相続人が亡くなったことを知った時」が熟慮期間の起算点となります。

なお、3か月という期間は長く見えますが、相続放棄に関する書類の収集・手続きの用意をしていると期限ぎりぎりになるケースも少なからずあります。期限までにゆとりをもって相続放棄の申請を進めたい方は、早めに司法書士等の専門家に相談されることを推奨します。

5-4 不動産を相続したのちに売却する手段もある

相続放棄をする際、固定資産税の支払い義務の有無以外にも、複数の手続きや留意すべき点があることは否めません。
不動産を手放す手段として、「不動産を相続し、その後売却する」ことも検討できます。不動産の売却益を得ることもできるため、メリットもあります。
不動産の価格によって、売却したほうがいいかも異なるため、どちらがよいか迷う方は、専門家にご相談ください。

まとめ:相続放棄を検討している方はお気軽にご相談ください

この記事では、相続放棄をしたにも関わらず、固定資産税の支払い義務が発生するケース、およびその対処法に触れたうえで、相続放棄全般の注意事項についても触れていきました。
相続放棄は、完璧にこなしたつもりでも漏れがあったり、思わぬ税金の支払い義務が発生したりとトラブルが起きやすい手続きです。また、処理自体も煩雑なため、相続人だけで進めていくのは難しい部分があるのが実情です。
「住まいの賢者」では、不動産の相続に強い司法書士と連携し、相続手続き・相続放棄に関する相談や依頼を受け付けています。不動産の相続手続きや相続放棄でお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合せください。

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この記事の執筆者

木村 道哉(きむら みちや)

木村 道哉(きむら みちや)

グリーン税理士法人 代表社員/税理士/弁護士

早稲田大学法学部卒。都内大手税理士法人のインハウスロイヤーとして経験を積んだ後、木村道哉税理士事務所を開業。資産税(相続税・贈与税)を中心とした申告業務に携わり、相続人間に紛争が生じた場合の相続税申告業務に詳しい。

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