相続不動産の管理は誰がする?登記前後や相続放棄の場合に分けて解説

相続不動産の管理は誰がする?登記前後や相続放棄の場合に分けて解説
執筆者: 中西孝志

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はじめに

不動産の相続が発生し、「相続人が決まるまでは誰が管理すべき?」「空き家は放置しても大丈夫?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。

相続不動産の管理責任は、相続登記の前後や相続放棄の有無などによって変わります。管理責任を怠るとトラブルに繋がる可能性があるため、正しい知識を身につけておくことが大切です。

本記事では、相続不動産の管理責任や登記前後の違い、相続放棄をした場合の注意点まで分かりやすく解説します。相続不動産を適切に管理しない場合のリスクも解説しているので、空き家になる不動産の管理でお悩みの方はぜひ最後までご覧ください。

第1章 相続不動産の管理責任とは?

相続不動産の管理とは、不動産の状態を適切に維持し、周囲に迷惑や危険が生じないようにすることを指します。具体的には、以下のような対応が挙げられます。

  • 建物や敷地の定期的な確認
  • 草木の管理や清掃など周囲の環境を悪化させないための対応
  • 郵便物の確認や不法侵入の防止などの防犯面への配慮
  • 雨漏りや外壁の破損といった放置すると危険に繋がる箇所の応急対応

第2章 相続不動産の管理は誰が行う?

相続不動産の管理を誰が行うのかは、相続登記が終わっているかどうかや、相続人の状況によって変わります。ここでは、代表的なケースごとに管理の考え方を整理します。

2-1 相続登記が終わる前

相続登記が完了していない段階では、不動産は相続人全員の共有財産として扱われます。そのため、原則として相続人全員で共同して管理を行うことになります。

ただし、相続人全員が均等に管理に関わることは難しいため、相続人同士で話し合いを行い、代表者を決めて管理を任せるケースも少なくありません。このように、相続人全員の合意があれば、特定の相続人が代表して管理を行うことも可能です。

また、相続不動産の維持に必要な費用については、原則として相続財産から支払うことができます。ただし、相続財産に現金がない場合などには、管理を担当する相続人が一時的に費用を立て替えるケースもあります。後日のトラブルを防ぐためにも、管理費用の負担方法や清算のルールについて、事前に相続人の間で話し合っておくことが重要です。

2-2 相続登記が終わった後

相続登記が完了した後は、名義人が不動産の管理を行うことになります。誰が管理を担うかは、不動産を単独名義にしたか、複数人の共有名義にしたかによって変わります。

単独名義にした場合は、その名義人が不動産の管理や活用について個人で判断できます。売却や解体、賃貸などの意思決定も原則として一人で行えるため、管理の負担が明確になり、不動産の売却・賃貸といった決断をスムーズにできる点が特徴です。

一方で、共有名義にした場合は、共有者全員が不動産の管理に関わる立場になります。日常的な維持管理については一部の共有者が行うこともありますが、重要な判断については共有者同士の意思疎通が必要です。そのため、手続きに時間がかかるケースも少なくありません。特に、売却や大規模な活用などの方針について意見が分かれると、誰か一人の反対によって進められなくなる可能性もあります。

そのため、相続登記の際には、単に相続分通りに共有名義にするのではなく、将来的な管理のしやすさや不動産の活用方法まで見据えて、名義の持ち方を検討することが重要です。

2-3 全員が相続放棄をする場合は現に占有しているかどうかが判断基準になる

相続人全員が相続放棄をした場合、不動産の管理から完全に解放されるとは限りません。相続放棄をした人であっても、その不動産を現に占有している場合には、一定の保存義務を負います。

ここで重要なのが、民法上の占有の考え方です。民法上の占有とは、物を自分のために管理・支配している状態を意味します。所有者であるかどうかは関係なく、実際にその不動産を管理できる立場にあるかどうかが判断のポイントになります。

そのため、必ずしも居住している必要はありません。例えば、鍵を管理して自由に出入りできる状態にある場合や、定期的に様子を確認している場合なども、状況によっては占有していると判断されます。

第3章 相続人全員が相続放棄をする際は相続財産清算人(旧:相続財産管理人)の選任が必要

相続放棄をした結果、他に相続人がいない場合や、次順位の相続人も全員が相続放棄をしている場合には、不動産を引き継ぐ人がいなくなります。不動産を相続する人がいなければ、相続放棄をした後であっても、不動産を現に占有していた人が管理をする必要があります。

ただし、この状態がいつまでも続くわけではありません。相続財産の管理や処分を第三者に引き継ぐための制度として、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることが可能です。

相続財産清算人とは、相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄をした場合に、家庭裁判所によって選任される管理者です。選任後は、相続財産清算人が被相続人の財産を管理し、債権者への対応や不動産の売却など、相続財産の整理を進めていきます。

3-1 相続財産清算人申立てに必要な書類

相続財産清算人を申し立てる際は、以下のような書類が必要になります。

必要書類取得先
申立書(所定の書式)裁判所
被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本類本籍地の市区町村役場
被相続人の両親の出生から死亡までの全ての戸籍謄本類両親の本籍地の市区町村役場
被相続人の直系尊属(祖父母など)の死亡記載のある戸籍謄本類各本籍地の市区町村役場
被相続人の兄弟姉妹が死亡している場合、その出生から死亡までの戸籍謄本類各本籍地の市区町村役場
代襲者(甥・姪など)が死亡している場合、その死亡記載のある戸籍謄本類各本籍地の市区町村役場
被相続人の住民票除票または戸籍附票最後の住所地の市区町村役場
相続財産に関する資料(不動産・預貯金など)法務局・市区町村役場・金融機関

場合によっては提出書類の追加を求められる可能性もあるため、申し立てる際は弁護士・司法書士に確認しておくと安心です。

3-2 相続財産清算人の申立てに必要な費用

相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てる際には、20万円〜100万円程度の費用が必要になります。主な費用は以下の通りです。

費用金額内容
予納金20万円〜100万円相続財産の管理や処分、債権者への対応、相続財産清算人の報酬などに充てられる費用です。相続財産の内容や、不動産の処分に要する期間などによって金額が変わります。
収入印紙代800円裁判所へ申立てを行う際に必要です。
連絡用の郵便切手代数千円裁判所や関係者との連絡に使用されます。
官報公告料5,057円相続財産清算人の選任にあたり、官報での公告に必要な費用です。

予納金の金額は、相続財産の内容や手続きの見込みに応じて家庭裁判所が決定します。不動産の管理期間が長期に及ぶ可能性がある場合や、売却などの処分手続きに時間を要すると見込まれる場合には、必要な管理費用や報酬を考慮して、予納金が高額になる傾向があります。

第4章 空き家を適切に管理しない場合のリスク

相続によって取得した不動産や、相続放棄後も現に占有している不動産を適切に管理しないまま放置すると不利益を被る可能性があります。ここでは、相続不動産を適切に管理しなかった場合に生じ得るリスクについて解説します。

4-1 損害賠償請求を受ける

相続不動産の管理が不十分な状態で建物の老朽化が進み、外壁の落下や倒壊などによって第三者に被害が生じた場合、損害賠償責任を負う可能性があります。具体的には、強風によって屋根材が飛散し近隣住宅を破損させた場合や、老朽化した塀が倒れて通行人にケガをさせた場合です。適切に管理していないことが原因で、高額な損害賠償請求を受けてしまいます。

特に空き家は、人の出入りが少ないことで劣化の進行に気付きにくく、気付いた時には危険な状態になっていることも少なくありません。トラブルを回避するためには、定期的な点検や最低限の維持管理を行い、事故の発生を未然に防ぐことが重要です。

4-2 犯罪に巻き込まれてしまう

適切に管理されていない空き家は、不法侵入や不法投棄、放火などの犯罪の対象となる可能性があります。人の出入りが少なく、管理の目が行き届いていない不動産は第三者に狙われやすいのです。

例えば、無断で侵入されて居住スペースとして利用されたり、ゴミの不法投棄場所として使われたりするケースが考えられます。また、放置された空き家が放火などの犯罪の対象となることで、近隣住民とのトラブルや地域の安全問題に発展する可能性もあります。

周囲の安全を守るためにも、不動産の状態を定期的に確認し、施錠や清掃など管理を継続することが重要です。管理が難しい場合には、空き家代行サービスの利用、専門家への相談・売却などの対応を検討するのが望ましいでしょう。

第5章 不動産絡みの相続で困ったら司法書士と連携する不動産会社に相談しよう

不動産絡みの相続で困った場合には、司法書士と連携する不動産会社に相談することをおすすめします。なぜなら、不動産相続では、相続登記や遺産分割といった法律手続きと、不動産の管理・売却などの実務的な判断が同時に求められるケースが多く、どちらか一方だけでは解決できない問題が生じやすいためです。

例えば、共有名義にすべきか単独名義にすべきか、相続放棄をした場合の不動産の扱いはどうなるのか、遠方にある不動産をどのように管理すべきかなど、判断に迷いやすいポイントは数多くあります。このような場面では、法律面と不動産実務の両方を理解した専門家に相談することで、手続きの方向性を整理しながら進められます。

司法書士と連携している不動産会社であれば、相続登記などの法的手続きから、不動産の売却・管理・活用までを一体的に検討できます。これにより、手続きの負担を減らしながらスムーズに進めやすくなります。不動産絡みの相続で悩んだ際には、一人で抱え込まず、早めに相談してみると良いでしょう。

住まいの賢者では、司法書士法人と連携する不動産会社として、管理にお困りの相続不動産の問題解決をサポートしています。無料相談も実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

まとめ

相続不動産の管理責任は、相続登記の前後や相続人の状況によって異なります。相続登記が完了していない段階では相続人全員で管理を行うのが原則であり、登記後は名義人が中心となって管理を担います。また、相続放棄をした場合でも、不動産を現に占有している状況によっては保存義務が残る可能性があるため注意が必要です。

相続人がいない、または全員が相続放棄をした場合には、相続財産清算人の選任が必要になるケースもあります。手続きを適切に理解し、早い段階で対応方針を整理することが、不要なトラブルや負担を防ぐポイントです。

不動産絡みの相続で判断に迷った場合には、司法書士と連携する不動産会社に相談することで、法的手続きと不動産実務の両面から状況に合った解決策を検討しやすくなるでしょう。

住まいの賢者では、相続不動産の管理や売却に関するご相談を承っています。司法書士と連携し、相続登記などの法的手続きから、不動産の活用・売却まで一貫してサポートできる体制を整えています。「誰が管理すべきか分からない」「相続放棄を検討している」「遠方に不動産があり対応に困っている」といった場合でも、状況に応じた解決方法をご提案可能です。相続不動産の扱いでお悩みの際は、お気軽にご相談ください。

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相続不動産の管理責任に関してよくある質問

ここでは、相続不動産の管理責任に関してよくある質問に回答します。

不動産の相続だけを放棄することはできますか?

不動産だけを選んで相続放棄することはできません。相続放棄は、特定の財産のみではなく、被相続人の財産や債務を含めた相続全体に対して行う手続きです。そのため、不動産の相続放棄をする場合は、現金や預貯金、生命保険などの財産の相続も放棄する必要があります。

遠方で管理が難しい場合は売却するしかありませんか?

必ずしも売却が唯一の選択肢とは限りません。近年では、空き家管理サービスを利用して定期的な見回りや清掃などを依頼することも可能です。ただし、利用料金が継続的に発生するため、長期的に活用予定がない場合には、売却を検討した方が管理負担や費用を抑えられるケースもあります。状況に応じて、不動産会社や専門家に相談しながら判断することが大切です。

この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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