不動産を活用した相続税の対策|節税効果と注意点をわかりやすく解説

不動産を活用した相続税の対策|節税効果と注意点をわかりやすく解説
執筆者: 木村道哉

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はじめに

相続税とは、亡くなった方(被相続人)の財産を相続した際に発生する税金です。

相続税には一定額の控除はありますが、何も対策しない場合には税負担が大きくなりがちなので、心配に思う方も多いことでしょう。そんなときは、不動産を活用することで、相続税の負担を大きく減らすことができ、節税効果が得られます。

本記事では、不動産を使った相続税対策について解説します。将来の相続に備えるためにも、メリットや注意点を確認しておきましょう。

第1章 不動産活用が相続税対策に有効な理由

不動産を活用した相続税対策が注目される理由は、現金や有価証券にはない独自の評価方法があり、結果的に相続税を大きく減らすことにつながるからです。

相続財産の総額を圧縮することで、相続税の負担を軽減し、相続人の手元により多くの資産を残すことが可能となります。

また、賃貸経営などを行うことで、家賃収入という安定的な収益となるだけではなく、より節税効果が高い点もメリットの一つとされています。

1-1 相続税とは?

相続税とは、被相続人から相続した財産に対して発生する税金です。

相続財産には、現金、不動産、株式、預貯金、貴金属など原則一切の財産が含まれます。課税対象となる財産総額から、負債や各種控除を引いた金額に応じて、相続税が課されます。

相続税の税率は、累進課税制度を採用しており、財産額が多いほど税率が高くなる仕組みです。相続対策を怠ると、せっかく築いた資産が大きく減ってしまうリスクがあるため注意しましょう。

1-2 不動産の評価額と相続税の関係

先ほどお伝えしたように、相続税は相続財産の額によって決まるため、相続財産の評価額を圧縮することが節税のコツとなります。不動産の相続税評価額は、一般的に市場価格の約80%程度になります。

現金や有価証券は額面通り100%評価されるため、不動産を持てば財産評価額を抑えられ、相続税負担を軽くできます。

さらに、賃貸物件は「借地権割合」や「借家権割合」の控除を受けられ、評価額がさらに下がります。

借家権割合とは、賃貸物件や土地の相続税評価額を計算する際に差し引かれる割合です。この割合は、不動産を貸している場合に適用されます。

「不動産を他人が利用しており、所有者が自由に扱えない分、相続時の不動産の評価額を下げよう」という制度です。

借地権割合は国税庁が公表する路線価図を見ることで分かります。借家権割合は、2025年5月現在、全国一律で30%と定められており、相続税を減額する効果が得られます。

また、自宅や事業用地に該当する土地には「小規模宅地等の特例」が適用でき、最大で評価額を80%下げることができるため節税につながります。

よって、制度を活用することで、不動産は非常に有効な相続税対策といえるでしょう。

第2章 不動産を活用した相続税対策の具体的方法

不動産を活用することで、現金のまま持つよりも効率的に資産を守ることが可能になります。ただし、相続税対策をするには、計画性が求められるため、慎重に取り組むことが必要です。

では、実際にどのように不動産を使って相続税対策を進めるのか、具体的な方法を解説します。

2-1 不動産を購入して現金を減らす

現金をそのまま持っていると、相続税評価額は100%です。不動産を購入することで、購入額よりも低い額で評価されるため、相続税評価額を下げることができます。

ただし、購入する物件の選定は慎重に行う必要があるため注意しましょう。利回りや資産価値の下落リスクを考え、安定的な運用が可能な不動産を選ぶことがポイントです。

2-2 賃貸不動産を保有して評価額を圧縮する

賃貸用の不動産を保有すると、物件の評価額は「自用地の評価額」よりも低くなります。自用地の評価額とは、他人に利用する権利がなく、所有者が自由に利用できる土地の評価額のことです。

自用地評価額は、「敷地面積(㎡)×路線価」が相続税評価額となります。例えば、200㎡の土地を所有しており、相続税評価額(路線価)が30万円の場合は6,000万円が土地の相続税評価です。

一方、賃貸不動産を保有すると、借地権割合と借家権割合に応じて評価額を下げることができるため、自用地を保有するよりも、相続税を圧縮できます。

特に、賃貸アパートやマンションを建てることで、大きな節税効果が期待できます。ただし、需要のあるエリアを選ばないと空室リスクが高まるため、立地選びが重要です。

2-3 土地を売却して別の物件を購入する

広すぎる土地や利用効率が悪い土地を売却し、小規模宅地等の特例が適用できる物件に買い替える方法も有効です。

小規模宅地等の特例とは、自宅や事業用地などの用途に応じて土地の評価額を最大80%減額できる制度です。ただし、特例の対象となる物件は条件があるため注意が必要です。

例えば、被相続人等の事業のために用いられている宅地や、被相続人等が居住していた宅地などが該当します。失敗を防ぐためにも、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることをおすすめします。

第3章 不動産を活用した相続税対策のメリット

不動産を活用した相続税対策には、多くのメリットがあります。不動産をうまく活用することで、単なる節税だけではなく、家族の資産を守り、次世代へとバトンを渡すことが可能です。

では、不動産を活用した相続税対策のメリットを解説します。

3-1 節税効果が高い

不動産の評価額は現金に比べて低くなるため、節税効果が高くなります。

特に、賃貸不動産や小規模宅地等の特例を組み合わせると、さらに節税効果が狙えます。適切に対策を行えば、相続税を半分以下に抑えられるケースもあるということを覚えておきましょう。

賃貸不動産にした場合、資産の評価減と収益化を両立できる点は、大きなメリットといえます。

3-2 賃料収入が得られる

賃貸用不動産を持つことで、安定した賃料収入を得ることができます。

不動産の収益は、生活費に充てたり、将来の納税資金にすることも可能です。相続発生後は、相続人たちの安定収入になります。

現金だけを相続するより、長期的な経済的安定につなげることができるでしょう。

3-3 相続人に安定した資産として残すことができる

不動産は長期的に安定した資産です。相続人に現金だけを残すよりも、収益不動産のような形で残すことで、将来にわたって安定した収入を得ることができるでしょう。

また、物件によっては資産価値の上昇が期待できます。適切に管理することで、世代を超えて資産を守ることができる点も魅力です。

第4章 不動産を活用した相続税対策の注意点

不動産を活用する際は、リスクや注意点も存在します。

メリットだけではなく、リスクも理解し、適切な備えをしておくことが大切です。

では、不動産を活用した相続税対策の注意点を解説します。

4-1 納税資金対策が必要である

不動産を相続すると現金化が難しい場合が多く、納税資金に困るリスクがあります。

相続税は申告期限と同じく、相続開始から10か月以内に一括納付が原則であり、売却して納税資金にしようとしても間に合わないことも多いでしょう。

相続税が払えないと、加算税や延滞税が課せられるだけではなく、財産が差し押さえられるため注意が必要です。納税できずに不動産を手放すことにならないためにも、一定額の現金預金を残すなど、現金を準備しておきましょう。

4-2 物件の収益を確保する必要がある

賃貸不動産を活用する場合、収益を維持できなければ相続後の経済負担が増す可能性があります。

立地選びはもちろん、定期的な修繕やリフォーム、入居者ニーズを把握した賃料設定が大切です。経年劣化による空室率の上昇リスクを抑えるためにも、長期的な視点で収益計画を立てておきましょう。

また、賃料収入に依存しすぎると、収入減少時のリスクが高まるため、リスク分散も意識することがポイントです。

4-3 相続税対策と判断されると無効になる可能性がある

相続税対策と判断された場合、小規模宅地等の特例の適用が認められない可能性があります。

特に、相続開始前3年以内に取得した土地に対して行う貸付事業は、相続税対策と判断されるケースがあるため注意しましょう。また、申告後すぐの売却や利用停止は慎重に行わなけばなりません。

賃貸物件を購入して小規模宅地の特例の適用を受けたい場合、相続開始の直前ではなく、余裕をもって手続きをする必要があるため覚えておきましょう。

不動産による相続税対策を考えている場合は、元気なうちに専門家に相談し、確実に節税が適用されるよう進めていくことをおすすめします。

4-4 遺産分割が難しい

不動産は分けにくい資産であり、相続人の間でトラブルの火種になる可能性が高いといえます。

しかし、共有名義にすると、売却時に全員の合意が必要になるため、意見の食い違いから資産の活用が難しくなるケースが頻発します。

したがって、不動産による相続税対策を行う場合、あらかじめ遺言を用意して、誰がどの不動産を相続するかなどを事前に決めておくことが重要です。

第5章 不動産を活用した相続税の対策を成功させるポイント

不動産を活用した相続税対策を成功させるためには、ただ不動産を購入すればいいわけではありません。

不動産の種類や立地、利用状況によって適用できる特例や節税効果が大きく異なるため、各ケースに合わせた対策が必要です。

では、不動産を活用した相続税の対策を成功させるために、押さえるべきポイントを解説します。

5-1 専門家のサービスを活用する

相続税対策は、司法書士や税理士などの専門家のサポートが不可欠です。相続や不動産評価の知識は非常に複雑であり、個人が正確に対応するのは極めて難しいといえるでしょう。

専門家に依頼することで、節税効果を最大化できる方法の提案や相続発生後の手続きがスムーズになります。専門家のサービスを活用して、ミスやトラブルを未然に防ぎましょう。

5-2 シミュレーションを実施する

不動産を活用した相続税対策は、資産の組み換えや納税資金の確保など、不動産相続に特有のリスクを踏まえて事前に計画を立てておくことが必要です。

例えば、不動産を賃貸に回した場合と売却した場合の税額や収益性の差や、相続人が変わった場合の対応など幅広い視点でシミュレーションを実施することが大切です。

現状の資産内容をもとに、複数のパターンを検討して進めることで、より適切な対策を講ずることができる可能性が高まります。

5-3 家族と早期に話し合う

相続対策を成功させるためには、家族全員での情報共有と合意が欠かせません。

特に、不動産を含む相続は感情的になりやすいため、相続が発生する前からオープンに話し合いの場を設けることが大切です。誰がどの不動産を相続するのか、売却して現金化するのかなど、あらかじめ方向性をまとめておきましょう。

また、家族間での信頼関係を築いておくことも、スムーズな相続手続きに大切です。遺言書の作成や生前贈与の活用も視野に入れながら、争いのない円満な相続を目指しましょう。

まとめ:不動産は相続税の対策に有効!計画的に対策を進めよう

不動産を活用した相続税対策は、正しく計画的に行えば大きな節税効果を得られることができます。

一方、リスクやトラブルが多く、専門的な知識が必要となるため、家族と話し合いを重ねながら、専門家のアドバイスを取り入れるとよいでしょう。

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この記事の執筆者

木村 道哉(きむら みちや)

木村 道哉(きむら みちや)

グリーン税理士法人 代表社員/税理士/弁護士

早稲田大学法学部卒。都内大手税理士法人のインハウスロイヤーとして経験を積んだ後、木村道哉税理士事務所を開業。資産税(相続税・贈与税)を中心とした申告業務に携わり、相続人間に紛争が生じた場合の相続税申告業務に詳しい。

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