生活保護受給者でも不動産の相続人になれる?受給停止条件を解説

生活保護受給者でも不動産の相続人になれる?受給停止条件を解説
執筆者: 中西孝志

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はじめに

生活保護を受給していても、親や兄弟が亡くなれば相続人になる可能性があります。不動産が遺産に含まれている場合、「相続すると生活保護が止まるのではないか」「売却しなければならないのか」と不安に感じる方も多いでしょう。

本記事では、生活保護受給者が不動産を相続した場合の基本的な考え方や、受給停止となる可能性があるケースなどについて解説します。

第1章 生活保護受給者でも不動産の相続人になれる

結論から言うと、生活保護受給者でも不動産の相続人になれます。ここでは、基本的な考え方や、生活保護受給者が不動産を相続する際の注意点について見ていきましょう。

1-1 ​​相続権は生活保護の有無に関係なく発生する

生活保護を受給している場合でも、相続人としての権利が制限されることはありません。相続権は民法によって定められており、収入状況や資産状況、生活保護の受給の有無とは関係なく発生します。

例えば、被相続人が亡くなった場合、配偶者や子供、親、兄弟姉妹など、法律上の相続人に該当すれば、生活保護受給者であっても通常通り相続人となります。不動産が遺産に含まれている場合も同様で、「生活保護を受けているから相続できない」ということはありません。

1-2 福祉事務所への届け出が必要になる

生活保護を受給している場合、相続が発生したときは福祉事務所への届け出が必要になります。生活保護制度では、収入や資産の状況に変化があった場合、速やかに申告しなければなりません。

不動産は相続後すぐに生活費として使えるわけではありませんが、資産として評価されます。たとえ売却するかどうかをまだ決めていない段階であっても、まずはケースワーカーに報告し、今後の対応について相談することが大切です。

相続の届け出を怠ると、後から生活保護費の返還を求められたり、不正受給と判断されるリスクが生じたりする可能性があります。一方で、早い段階で福祉事務所と情報共有をしておけば、個別の状況に応じた対応方針を確認できるため、相続に伴うトラブルを避けやすくなります。

第2章 生活保護受給者が不動産を相続した場合の基本的な扱い

生活保護制度では、資産の有無が受給の可否や継続の判断基準となります。不動産も資産に含まれるため、相続する際はどのような扱いになるのかを把握しておくことが大切です。

2-1 不動産は資産として評価される

生活保護制度において、不動産は原則として資産に該当します。現金化していなくても、売却や活用によって生活費に充てられる可能性があると判断されれば、制度上は活用すべき財産とみなされます。

評価の対象となるのは、単独名義の土地や建物だけではありません。共有名義の持分や、賃貸に出している収益物件なども、原則として資産に含まれます。名義や利用状況によって扱いが異なることはありますが、基本的に不動産は資産として評価されることを押さえておきましょう。

2-2 資産活用が求められる

生活保護制度では、資産の活用が基本的な考え方とされています。生活保護法第4条では、「能力、資産その他すべてのものを、その最低限度の生活の維持のために活用しなければならない」と定められており、保有している資産については、まず生活のために活用しなければなりません。

つまり、不動産を持っていること自体が直ちに問題になるわけではありませんが、「活用できるのに活用していない」と判断された場合には、受給停止や廃止の理由となる可能性があるわけです。不動産を相続した場合も例外ではなく、売却や収益化によって生活費に充てられると判断されれば、資産活用の観点から対応を求められる可能性が高いでしょう。

第3章 生活保護受給者が相続した不動産はどうなる?種類別の扱いと判断ポイント

不動産といっても、その種類や利用状況によって生活保護制度上の扱いは異なります。ここでは、不動産の種類ごとに、生活保護への影響と判断のポイントを整理します。

3-1 現在住んでいる居住用不動産

被相続人と同居していた住宅を相続する場合は、必ずしも売却が求められるわけではありません。生活を維持するために必要と認められる住宅については、保有が認められるケースがあります。例えば、相続した不動産が本人の居住用住宅であり、「最低限度の生活を維持するために必要な住居」と判断されれば、そのまま住み続けられる可能性が高いでしょう。

ただし、全ての居住用不動産が例外的に認められるわけではありません。資産価値が高すぎる場合や、生活水準と比較して過大な住宅と判断される場合には、売却や住み替えを求められる可能性があります。

3-2 賃貸に出している収益不動産

賃貸に出している収益不動産を相続した場合、その不動産は収入を生み出す財産として評価されます。家賃収入がある場合には、生活保護制度において収入として認定され、保護費の調整に影響を与えます。毎月多額の不動産収入を得ている物件を相続すれば、生活保護は打ち切られるでしょう。

ただし、収益不動産を所有していることだけで、直ちに生活保護が停止・廃止されるわけではありません。例えば、家賃収入があっても生活費を十分に賄えるほどではない場合には、収入分を差し引いたうえで生活保護が継続されるケースもあります。

3-3 空き家・空き土地

相続した不動産が空き家や空き地であり、居住や生活のために利用していない場合には、売却・処分が求められます。なぜなら、生活保護制度では資産の活用が前提とされており、生活維持に直接必要ではない不動産は、売却して生活費に充てるべきと判断されるためです。

売却には時間がかかることもあるため、直ちに処分できない場合には、状況に応じて一定期間の猶予が認められることもあります。ただし、使用予定のない空き家・空き土地は、長期間にわたって保有できない可能性が高いでしょう。

3-4 売却が難しい不動産

相続した不動産の中には、資産として扱われるものの、現実的には売却が難しいケースもあります。例えば、再建築不可物件や地方の山林・原野、需要が低く買い手が見つかりにくい土地などは、売却活動を行っても処分できない可能性が高いでしょう。

生活保護制度では資産活用が基本とされていますが、実際に売却できない不動産については、その事情が考慮されます。単に保有しているという理由だけで直ちに受給停止となるわけではなく、売却可能性や市場性などを踏まえて個別に判断されるのが一般的です。

3-5 住宅ローン返済中の不動産

住宅ローン返済中の不動産は、基本的に売却する必要があります。なぜなら、生活保護は「資産を活用してもなお生活が困難な場合」に支給される制度だからです。保護費が住宅ローンの返済に充てられると、結果的に資産を維持・形成することに繋がってしまいます。

生活保護費は最低限度の生活を維持するための費用であり、ローン返済のために使うことは制度の考え方と合いません。そのため、ローンが残っている住宅については、売却や住み替えを求められるケースが多いのが実情です。ただし、返済期間が残りわずかである場合など、個別の事情によっては、そのまま住み続けられるケースもあります。

3-6 共有名義の不動産

相続した不動産が他の相続人と共有状態にある場合、その持分は資産として扱われます。ただし、共有持分のみでは自由に売却できないケースが多く、直ちに活用できる資産とは評価されない場合もあります。

例えば、共有者全員の同意が必要な場合や、買い手が見つかりにくい場合には、すぐに現金化できないことも珍しくありません。そのため、共有状態にある不動産については、一時的に保有が認められるケースもあります。

しかし、共有者間で売却の協議が可能かどうかや、将来的に換価できる見込みがあるかどうかは、状況に応じて確認されます。売却の必要性については福祉事務所の判断が関わるため、不明な点があれば担当のケースワーカーに早めに相談しておくと安心です。

第4章 不動産相続によって生活保護が停止・廃止になる可能性があるケース

不動産を相続したからといって、必ず生活保護が停止・廃止になるわけではありません。しかし、不動産の内容や利用状況によっては、「資産を活用できる状態にある」と判断され、受給の継続が難しくなるケースもあります。ここでは、不動産相続によって生活保護の停止・廃止に繋がる可能性があるケースについて解説します。

4-1 売却可能な資産を保有し続けた場合

相続した不動産に十分な資産価値があり、売却が現実的に可能であるにもかかわらず、処分せずに保有し続けている場合には、生活保護の停止や廃止に繋がる可能性があります。

生活保護制度では、活用できる資産がある場合には、それを生活費に充てることが前提とされています。そのため、売却によって現金化できると判断される不動産を長期間保有していると、「資産を活用していない」と評価され、生活保護が停止・廃止になる可能性が高いでしょう。

4-2 資産価値が高い居住用不動産を保有する場合

現在住んでいる居住用不動産であっても、資産価値が高い場合には、生活保護の継続に影響を及ぼします。生活保護では、生活に必要な住宅の保有は一定程度認められますが、それは最低限度の生活を維持するために必要な範囲に限られます

例えば、都市部にある高額な住宅や、広大な土地付きの建物などは、売却によってまとまった資金を確保できる可能性が高くあります。その場合、生活水準に見合った住宅への住み替えや、不動産の売却が必要になるでしょう。

4-3 不動産収入がある場合

相続した不動産がすでに賃貸として利用されている場合や、比較的容易に賃貸として活用できる状況にある場合、その不動産は収入を生む資産として扱われます。相続不動産から家賃収入を得ていれば、支給される生活保護費は減額されたり、打ち切られたりします。

例えば、賃料収入がある場合には、その収入分が差し引かれる形で保護費が調整されるのが一般的です。また、収入だけで最低生活費をまかなえると判断された場合には、生活保護の停止や廃止に繋がる可能性があります。

第5章 生活保護受給者は相続放棄できる?

不動産を相続すると生活保護に影響が出る可能性があると聞き、「それなら相続放棄をすればいいのでは」と考える方もいるでしょう。ここでは、生活保護の受給者が相続放棄をできるのか、放棄した場合の影響などを解説します。

5-1 相続放棄は可能だが受給可否に影響を与える可能性がある

生活保護受給者であっても、法律上は相続放棄をすることが可能です。ただし、生活保護法では「利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用すること」(第4条第1項)が前提とされています。そのため、相続によって取得できた財産は、本来であれば生活維持のために活用すべき資産と考えられるのが一般的です。

例えば、預貯金や売却可能な不動産など、明らかにプラスとなる遺産があるにもかかわらず相続放棄をした場合には、「活用できた資産を自ら放棄した」と評価される可能性があります。その結果、福祉事務所の判断によっては、生活保護の受給資格に影響が出ることもあります。

一方で、相続放棄は法律上認められた権利であり、相続人の意思が尊重されるべきとした裁判例もあります。ただし、生活保護制度との関係では個別事情が重視されるため、相続放棄を検討する場合は、事前にケースワーカーに確認するのが望ましいでしょう。

5-2 相続放棄をしても問題にならないケース

相続放棄をした場合でも、必ず生活保護に影響が出るわけではありません。相続財産の内容や状況によっては、放棄が合理的な判断と評価されるケースもあります。

例えば、売却が困難な不動産や、維持費や管理負担が大きい物件、多額の債務が含まれる相続など、結果として生活の安定に繋がらないと考えられる場合には、相続放棄が問題視されません。また、共有関係が複雑で処分が難しい不動産や、地方の土地など市場での需要が低く現金化が難しい不動産の場合も、相続放棄が合理的と判断される可能性があります。

5-3 相続放棄を検討しているなら専門家に要相談

相続放棄が生活保護にどのような影響を与えるかは、不動産の内容や資産価値、債務の有無などによって大きく異なります。「相続すると生活保護が止まる」「放棄すれば問題ない」といった単純な判断ができないケースも少なくありません。

特に、不動産が含まれる相続では、売却の現実性や共有関係の状況、維持費の負担など、さまざまな要素を踏まえて検討する必要があります。自己判断で相続放棄をすれば、生活保護が打ち切られてしまうかもしれません。

相続放棄を検討している場合には、担当のケースワーカーに相談するだけでなく、相続や不動産の手続きに詳しい弁護士・司法書士などに相談し、状況に合った対応を確認しておくことが大切です。

まとめ

生活保護受給者であっても、不動産の相続人になること自体は可能です。ただし、生活保護制度では資産の活用が前提とされているため、不動産の種類や利用状況によっては、売却や活用を求められます。

例えば、空き家や空き土地、収益が見込める不動産などは資産として評価されやすく、生活保護費の減額・打ち切りの可能性があります。一方で、現在住んでいる住宅や売却が難しい不動産などについては、状況に応じて保有が認められます。

不動産の相続と生活保護の関係は、不動産の内容や状況によって扱いが変わります。そのため、相続した不動産をどのように扱うべきか迷った場合には、早めに専門家へ相談し、自分の状況に合った対応を検討することが大切です。

住まいの賢者では、司法書士法人と連携する不動産会社として、生活保護受給者の方の不動産相続から、その後の売却までをワンストップでサポートしています。無料相談も実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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