境界未確定の不動産を相続登記する流れ|境界確定の方法も紹介

境界未確定の不動産を相続登記する流れ|境界確定の方法も紹介
執筆者: 中西孝志

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はじめに

不動産の相続において、相続予定の土地の境界がはっきりしていないと分かり、どのように対応すべきか不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特に、先祖代々受け継がれてきた土地や長年売買が行われていない不動産の場合、境界が確定しないまま利用されてきたケースは少なくありません。

このような土地を相続した際、「境界未確定のままでも相続登記はできるのか」という点や、隣地とのトラブル発生リスクについて不安を覚える相談は多くあります。

これについて、境界未確定の不動産であっても、相続手続きそのものが直ちにできなくなるわけではありません。一方で、境界の問題を整理しないまま相続を進めてしまうことで、後から思わぬ支障が生じるケースがあるのも事実です。

この記事では、境界未確定の不動産を相続した場合にどのような点に注意すべきかを整理し、相続登記の可否や境界をどのように確定させていくのかについて解説します。

第1章 相続不動産が「境界未確定」とはどのような状態か

「相続不動産の土地が境界未確定である」とは、隣地との土地の境目が法的または客観的に確定していない状態を指します。

具体的には、境界標(境界線を示す標識)が設置されていない場合や、境界標は存在するものの設置の経緯や根拠が分からない場合などが該当します。

また、過去に正式な測量が行われておらず測量図が存在しない土地や、古い測量図はあるものの現況と一致していない土地も境界未確定と扱われることがあります。

このような状態では、土地の面積や範囲について隣地所有者との認識にずれが生じやすくなります。

なお、境界未確定といっても、必ずしも隣地との間で争いが起きている状態を指すわけではありません。これまで境界を明確にする必要がなく、結果として正式な手続きが行われていなかっただけというケースも多く見受けられます。

さらに、土地の境界には民事上の境界と公法上の境界である筆界という考え方があり、どの境界が未確定なのかによって取るべき対応も異なります。そのため、境界未確定であることが、そのまま問題となるわけではありません。

相続した不動産が境界未確定とされている場合には、まずどのような意味で未確定なのかを整理することが、その後の相続手続きや対応方針を考える出発点となります。

次章では、境界未確定の相続不動産をそのままにしておいた場合に起きやすいトラブルについて解説します。

第2章 相続不動産が境界未確定だったときに起きやすいトラブル

相続した不動産が境界未確定の状態である場合、相続手続き自体は進められるものの、さまざまな場面で支障が生じることがあります。

第2章では、境界未確定のまま相続した不動産で起きやすい代表的なトラブルについて整理します。

2-1 隣地所有者とトラブルになる

境界が確定していない土地では、隣地所有者との間で土地の範囲に対する認識が一致しないケースは少なくありません。その結果、相続後に境界の確認や測量を進めようとした際、隣地所有者から異議が出ることがあります。

特に、境界標が設置されていない土地や古い測量図しか残っていない土地では、どこまでが自分の土地なのかを巡って意見が分かれやすくなります。このような状況では、話し合いが長期化したり、感情的な対立に発展したりする可能性も否定できません。

相続をきっかけに、これまで表面化していなかった境界の問題が明らかになる点には注意が必要です。

2-2 相続人同士でトラブルになる

境界未確定の不動産を複数人で相続する場合、相続人同士で意見が対立することがあります。

例えば、ある相続人は早めに境界を確定させたいと考えている一方で、別の相続人は費用や手間を理由に消極的であるケースです。また、境界が確定していないことにより、不動産の評価額に幅が生じ、遺産分割の方法を巡って意見がまとまらないこともあります。

結果として、境界未確定の不動産をめぐる対応をきっかけに、相続人たちの関係性が悪化する恐れもあります。そのため、境界未確定の不動産を相続した場合は、トラブル回避のためにも、相続人同士での取り扱いを慎重に決定することが重要となります。

2-3 売却活動を進められない

境界未確定の不動産は、売却活動に支障が出ることがあります。これは、買主にとって、土地の範囲が明確でない不動産はリスクが高いと判断されやすいためです。

結果として、売却自体を断られたり、価格交渉で不利な条件を提示されたりするケースも見受けられます。また、売却手続きを進める際に、不動産会社から、境界確定を条件として売却を勧められることも少なくありません。

そのため、将来的な売却を検討する場合は、境界の確定を早めにしておきましょう。

第3章 境界未確定の相続不動産でも登記申請できるのか

結論から言うと、相続した不動産が境界未確定である場合でも、原則として相続登記を行うことは可能です。

相続登記は、不動産の所有者が誰であるかを公示するための手続きであり、土地の境界を確定させる手続きではありません。そのため、境界が確定していないこと自体を理由に、相続登記が直ちに認められなくなるわけではありません。

相続登記に必要となるのは、被相続人から相続人へ所有権が移転した事実を証明する書類であり、境界確定測量が完了していることまでは求められていないためです。

ただし、相続登記ができるからといって、境界未確定の問題が解消されるわけではない点には注意が必要です。相続登記によって変わるのは土地の名義人であり、土地の範囲・隣地との境界関係そのものは、登記をしても何ら変わりません。

そのため、相続登記を済ませた後に、境界を巡る問題が表面化するケースも見られます。例えば、相続登記後に売却を検討した段階で、境界確定を求められたり、隣地所有者との協議が必要になったりすることがあります。

また、相続登記を先に行ったことで、境界確定に関する対応をすべて相続人が引き受ける形となり、結果として負担が集中する場合もあります。

このように、相続登記と境界確定は性質の異なる手続きであり、別問題として考える必要があります。境界未確定の不動産を相続した場合には、境界確定をしてから登記を進めるのか、登記と境界確定を並行して進め、問題をどのように整理していくかなど、どのように手続きを進めるかを整理しておきましょう。

次章では、境界未確定の不動産について相続登記を進める際の具体的な流れについて解説します。

第4章 境界未確定の不動産を相続登記する流れ

境界未確定の不動産だったとしても、相続登記する流れそのものは、通常の不動産と大きくは変わりません。

第4章では、境界未確定の不動産を相続登記する流れをステップごとに確認します。

STEP① 相続不動産の調査をする

まずは、相続対象となる不動産の内容を正確に把握します。

具体的には、登記簿謄本や固定資産税の課税明細書などを確認し、所在地や地目、地積、名義人を整理します。

また、可能であれば、この段階で測量図や公図の有無を確認しておきましょう。測量図等の確認ができれば、境界未確定の状況を把握でき、その後の対応をどのように進めるかを判断しやすくなります。

STEP② 相続人調査をする

境界未確定の不動産を相続する際、相続人調査が必要です。

相続人調査とは、被相続人の出生から死亡までの全部の戸籍収集、および被相続人の財産を受け取る権利がある法定相続人の戸籍収集を行い、被相続人の法定相続人が誰かを調べることです。

相続をする際、法定相続人が明らかでないと、手続きが進まないため、相続人調査が必要となります。

なお、相続人調査は個人でも出来ますが、かなりの時間・労力を使う、非常に手間のかかる手続きです。

司法書士などの専門家であれば、相続人調査を代行することが認められています。そのため、スムーズに相続人調査をしたい方は、司法書士などの専門家に相談されることを推奨します。

STEP③ 遺言書がなければ遺産分割協議をする

境界未確定の不動産について、被相続人が遺言書の中で、相続する人物を指定していた場合、その人物が相続放棄をしない限り、そのまま相続します。

しかし、遺言書がない場合、遺産分割協議によって、該当の不動産を相続する人物を決めなければなりません。遺産分割協議は、法定相続人全員が参加する、遺産の配分や扱いを決定するための話し合いです。協議が完了するまでは、それぞれの法定相続割合に基づいて、賃料を分け合うことになります。

なお、境界未確定の不動産を相続する相続人を確定するには、法定相続人全員の合意が必要となっています。そのため、引き継ぎ希望者が複数人いた場合、もめごとに繋がる可能性は否めません。法定相続人たちだけでまとまりそうにない場合、弁護士・司法書士などの専門家に相談することもご検討ください。

STEP④ 登記申請の必要書類を作成・収集する

相続の内容がまとまった後は、相続登記を行うために、相続が発生したことと、誰が不動産を取得するのかを証明する書類を準備します。

一般的に、不動産の相続登記では、次のような書類が必要になります。

  • 被相続人の戸籍関係書類
  • 相続人の戸籍や住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 相続関係を証明する書類
  • 登記申請書

これらの書類は、相続人が誰であるかや、不動産を誰が取得するかを確認するために用いられます。

なお、遺言書がある場合や、遺産分割協議によって取得者を決める場合など、相続の状況によって必要書類が一部変わることがあります。そのため、事前に相続の内容を整理したうえで、どの書類が必要になるのかを確認しておくことが重要です。

相続登記に不慣れな場合には、司法書士などの専門家に相談しながら進めることで、書類不足等に伴うやり直しをする可能性を減らせます。

STEP⑤ 登記申請する

必要書類がそろったら、管轄の法務局へ相続登記を申請します。

申請が受理されると、不動産の名義が被相続人から相続人へ変更されます。

ただし、この時点で境界が確定するわけではなく、あくまで所有者が誰であるかが登記上明らかになるにとどまります。

相続登記を終えた後も、境界の問題は残るため、次章で解説する方法を参考にしながら、必要に応じて境界確定の対応を進めていくことが重要です。

第5章 相続不動産の境界を確定する方法

境界未確定の相続不動産については、状況に応じて境界を確定させる方法を検討することになります。

ここでは、代表的な境界確定の方法について、それぞれの特徴を整理します。

5-1 境界確定測量

境界確定測量は、土地家屋調査士に依頼し、隣地所有者の立ち会いのもとで境界を確認し、測量を行う方法です。

測量の結果に基づいて境界標を設置し、境界確認書を取り交わすことで、民事上の境界を明確にします。

この方法は、隣地所有者の同意を得られる場合には、将来的なトラブルを防ぎやすい手段といえます。隣地の状況も考慮して境界線を決める分、双方が納得いく結論となりやすいためです。

一方で、隣地所有者の協力が得られない場合や、関係性が悪化している場合には、手続きが進まないこともあります。

また、測量には一定の費用と期間がかかる点にもご留意ください。

5-2 筆界特定制度

筆界特定制度は、法務局に申請し、第三者である筆界特定登記官が筆界を特定する制度です。

この制度は、隣地所有者との話し合いが難しい場合でも利用できる点が特徴です。申請後は、資料調査や現地調査が行われ、筆界についての判断が示されます。

ただし、筆界特定制度で特定されるのは公法上の境界である筆界であり、民事上の所有権の範囲を最終的に確定するものではありません。

そのため、境界に関する紛争を完全に解決できるとは限らない点にご注意ください。

5-3 隣地所有者との協議

境界未確定の状態が軽微な場合には、隣地所有者との話し合いによって境界を整理する方法もあります。

過去の資料や現況を確認しながら、双方が納得できる形で境界の位置を確認していくことになります。話し合いが円滑に進めば、費用や時間の負担を抑えられる可能性があります。

一方で、合意内容を文書に残しておかないと、将来的に認識のずれが生じる恐れがあります。また、協議によって境界を確認する場合でも、書面化や専門家の関与を検討することが重要です。

このように、境界確定の方法にはそれぞれ特徴があり、どの方法が適しているかは土地の状況や隣地との関係性によって異なります。

相続不動産の将来的な利用や売却の予定も踏まえながら、無理のない方法を選択することが大切です。

まとめ:境界未確定の不動産を相続した際にはお気軽にご相談ください

この記事では、相続不動産の境界未確定が指す状態・未確定時に発生しやすいトラブルや相続登記との関係について解説しました。

本文中でも述べた通り、境界未確定の不動産であっても、相続登記そのものは問題なくできます。しかし、相続登記したとしても、土地の境界が確定するわけではなく、境界の問題は別途整理する必要があります。
対応が難しい場面もある境界確定ですが、これを怠ると、将来の売却等に悪影響をもたらすケースは少なくありません。そのため、専門家と連携しつつ、適切な対応を進めるのが重要となります。

「住まいの賢者」では、境界未確定の不動産に詳しい専門家と連携して、相談を受け付けております。境界未確定の不動産についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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よくあるご質問

境界未確定でも相続登記しないと罰則はありますか?

境界未確定であること自体を理由に、相続登記をしなかった場合の特別な処罰が下されることはありません。
ただし、相続登記は、相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に行うことが義務化されており、正当な理由なく登記をしなかった場合、過料の対象となる可能性があります。
境界が未確定であっても相続登記は可能なため、境界の問題とは切り分けて、登記手続き自体は早めに進めることが重要です。

境界確定は誰の同意が必要ですか?

境界確定の方法によって、必要となる同意の範囲は異なります。
境界確定測量の場合は、原則として隣地所有者の立ち会いや同意が必要になります。
一方で、筆界特定制度を利用する場合は、隣地所有者の同意が得られない場合でも申請することができます。
どの方法が適しているかは、土地の状況や隣地との関係性によって異なるため、事前の確認が重要となります。

売却予定がなくても境界確定すべきですか?

売却予定がない場合、必ず境界確定をしなければならないわけではありません。
ただし、将来的に売却や建て替えを検討する可能性がある場合や、相続人が複数いる場合には、早めに境界を整理しておくことでトラブルを防ぎやすくなります。
境界確定には費用や時間がかかるため、現在の利用状況や将来の見通しを踏まえて、必要性を検討することが大切です。

この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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