数次相続は中間省略登記できる?認められるケースと登記申請の流れ

数次相続は中間省略登記できる?認められるケースと登記申請の流れ
執筆者: 山田愼一

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はじめに

家族の逝去後、その方の相続手続きが終わらないうちに、別の家族が亡くなってしまう事例は少なからず見られます。

このように、相続手続きが完了しないうちに次の相続が発生することを「数次相続」といいます。数次相続が発生すると、不動産の相続登記は通常よりも複雑になります。

特に、「中間の登記を省略できるのか」「登記原因はどのように記載すればよいのか」といった点で悩まれる方は少なくありません。

この記事では、数次相続における相続登記の基本から、中間省略登記が認められるケース、登記原因や登録免許税の考え方までを分かりやすく解説します。

数次相続の登記をスムーズに進めるための参考として、ぜひお役立てください。

第1章 数次相続とは

数次相続とは、ある相続が発生した後、その相続手続きが完了しないうちに、さらに次の相続が発生する状態を指します。
例えば、自身の父が亡くなり、その相続登記を行う前に母が亡くなった場合がこれに該当します。

このような場合、父の相続と母の相続が連続して発生するため、登記手続きの流れも通常の相続とは異なります。多くの場合、通常の相続よりも複雑な流れを要するため、入念な準備や対応が不可欠となります。

また、数次相続は単なる相続の繰り返しではなく、登記原因や相続人の確定方法にも影響を及ぼす点が特徴です。

第1章では、混同されやすい用語との違いを整理します。

1-1 数次相続と相次相続の違い

相次相続は、短期間に相続が連続して発生することを指す用語です。ここでいう「短期間」は、通常、一度目の相続から10年以内を指します。
また、相次相続では、同じ財産に短期間で相続税が重ねて課税されるのを防ぐため、相続税の一部を控除する「相次相続控除」という制度があります。

一方で、数次相続は、登記や相続手続きが未了のまま次の相続が発生する場合を意味します。そのため、相続発生の期間そのものは要件とはならず、登記等の手続きを完了しているかどうかが判断のポイントとなります。

1-2 数次相続と再転相続の違い

再転相続とは、相続人が相続の承認や放棄をしないまま死亡した場合に、その相続権がさらに次の相続人へ承継されることをいいます。

例えば、父が亡くなり、その相続人である子が相続の承認や放棄を決めないまま死亡した場合には、子が有していた相続権は、さらにその子の相続人へと移転します。

再転相続では、「誰が相続人となるのか」「相続放棄の熟慮期間はどのように扱われるのか」といった点が問題となります。
一方で、数次相続は、相続登記などの手続きが未了のまま、次の相続が発生する状態を指します。

つまり、再転相続が「相続権そのものの承継」を問題とするのに対し、数次相続は「相続手続きの未了」が問題となる点に違いがあります。

両者はどちらも相続が連続して発生する点では共通していますが、法的な整理や登記の取扱いは異なります。数次相続の登記を検討する際には、自身のケースが再転相続に該当しないかどうかもあわせて確認しておきましょう。

1-3 数次相続と代襲相続の違い

代襲相続とは、本来相続人となるはずの人が被相続人よりも先に亡くなっている場合に、その人の子が代わって相続する制度です。

例えば、父が亡くなった時点で、父の子がすでに死亡していた場合、その子の子(孫)が代わって相続人となります。

代襲相続は、相続開始時点で本来の相続人が存在しない場合に、その血族が承継するという制度であり、相続の「発生時点」で相続人の範囲が確定する点に特徴があります。

一方で、数次相続は、相続が開始した後、その手続きが完了しないうちに、さらに次の相続が発生する場合を指します。

つまり、代襲相続は「誰が最初から相続人であるか」が問題となる制度であるのに対し、数次相続は「相続手続きが連続して発生すること」が問題となる点に違いがあります。

登記においても、代襲相続では最初の相続登記の段階で代襲者を含めた相続人を確定させる必要がありますが、数次相続では相続が複数回発生していることを前提に登記原因を整理する必要があります。

両者は似ているようで制度の趣旨が異なるため、自身の事案がどちらに該当するのかを正確に把握することが重要です。

第2章 数次相続では中間省略登記が認められる場合がある

数次相続が発生した場合の相続登記は、原則として、相続ごとに登記申請を行います。

例えば、父の相続と母の相続が連続して発生した場合、本来は「父→母」「母→子」というように、順番に登記を行うのが基本です。しかし、一定の条件を満たす場合には、中間の登記を省略し、最終的な相続人へ直接名義を移すことが認められるケースがあります。

これが、いわゆる「中間省略登記」と呼ばれる方法です。ただし、常に認められるわけではありません。

以下では、中間省略が可能となる代表的なケースを整理します。

2-1 中間の相続人が1人だけのケース

一次相続において、相続人が1人しかいない場合には、中間省略登記が認められる可能性があります。

例えば、父が亡くなり、母が唯一の相続人であったものの、父名義のまま登記をしないうちに母も亡くなった場合です。

このような場合、母が父の不動産を単独で相続することが確定しているため、母名義への登記を経ずに、最終的な相続人へ直接登記を行うことが可能とされています。

実際の手続きでは、中間名義人への登記を経ずに、相続を原因とする所有権移転登記を申請する形になります。

2-2 中間の相続人が複数人いるが1人だけが相続するケース

一次相続の相続人が複数人いる場合でも、遺産分割協議によって特定の1人が不動産を取得することが確定している場合には、中間省略登記が可能とされる場合があります。

例えば、父の相続において母と子が相続人であったが、遺産分割協議により母が単独で不動産を取得する内容で合意していたケースがこれに当たります。

このように一次相続の帰属が明確である場合、その後に母が亡くなったときには、中間の母名義への登記を経ずに、最終的な相続人へ直接登記申請を行うことができると解されています。

ただし、この場合は一次相続の遺産分割協議書や戸籍資料などにより、相続関係および取得内容が明確に証明できることが前提となります。

中間省略登記が可能かどうかは、相続関係や遺産分割の内容によって判断が分かれるため、事前の確認が重要です。

第3章 数次相続の登記原因・登録免許税の考え方

数次相続では、登記の方法だけでなく、「登記原因の記載方法」や「登録免許税の計算方法」も通常の相続とは異なります。

中間省略登記を行う場合でも、法律上は相続が複数回発生しているため、それぞれの相続をどのように扱うかを整理する必要があります。

第3章では、登記原因と登録免許税の基本的な考え方を確認します。

3-1 数次相続における登記原因の記載方法

数次相続の場合、登記原因は原則として、それぞれの相続ごとに記載します。

例えば、父が亡くなり、その後母が亡くなった場合には、以下のように相続が発生した日付を記載します。

「令和〇年〇月〇日相続」
「令和〇年〇月〇日相続」

中間省略登記を行う場合でも、実体上は複数回の相続が発生しているため、登記原因を一つにまとめることはできません。

登記申請書や登記原因証明情報では、父から母、母から子へと相続が連続している事実が分かるように記載する必要があります。

また、一次相続で遺産分割協議が行われている場合には、「相続」を原因とするのか、「遺産分割」を原因とするのかによって整理が異なります。例えば、法定相続分どおりに取得する場合は「相続」となりますが、特定の相続人が単独取得する場合には、遺産分割協議書を根拠として整理することになります。

登記原因の記載を誤ると、補正や再提出が必要になることもあるため、慎重な確認が重要です。

3-2 中間省略登記をする場合の登記原因

中間省略登記を行う場合でも、登記原因そのものを一つにまとめられるわけではありません。あくまで登記の申請手続き上、中間名義人への登記を経ずに申請できるという意味です。

例えば、父から母へ、母から子へと相続が発生している場合には、実体上は二段階の相続が存在します。
そのため、登記原因としても、それぞれの相続を前提に整理する必要があります。

登記原因証明情報では、戸籍関係資料などにより、父から母、母から子へと相続が連続している事実を明らかにしなければなりません。
中間省略登記は「登記の省略」であって、「相続の省略」ではありません。

したがって、相続が一回しか発生していないかのように記載することはできない点に注意が必要です。

3-3 数次相続における登録免許税の考え方

数次相続であっても、登録免許税は原則として「相続」を原因とする所有権移転登記の税率が適用されます。

相続による所有権移転登記の登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。中間省略登記を行う場合でも、税率自体が変わるわけではありません。

最終的に不動産を取得する相続人を基準として、固定資産税評価額に0.4%を乗じて計算します。ただし、一次相続で遺産分割が行われている場合などは、登記原因の整理に応じて申請内容が変わるため、取得者の確定状況を踏まえて計算する必要があります。

具体的な登録免許税の金額は、不動産の固定資産税評価額をもとに算出します。そのため、事前に固定資産税評価証明書を取得して確認しておくことが重要です。

第4章 相続登記の中間省略の流れ・必要書類

数次相続の登記申請は、通常の相続登記よりも確認事項が多くなります。特に、中間省略登記を検討する場合は、相続関係の整理が重要です。

第4章では、数次相続における登記申請の基本的な流れをSTEPごとに解説します。

STEP① 相続不動産の情報を集める

まずは、対象となる不動産の内容を正確に把握します。

登記事項証明書を法務局で取得し、所有者や地番、家屋番号を確認します。併せて、固定資産税評価証明書を取得し、登録免許税の計算に備えます。

不動産の表示に誤りがあると、登記申請書の作成に影響が出るため、最初の確認が重要です。

STEP② 一次相続の相続人調査をする

数次相続が発生した際、スムーズに手続きを進めるためにも、相続人調査をしておきましょう。

相続人調査とは、被相続人の出生から死亡までの全部の戸籍収集、および被相続人の財産を受け取る権利がある法定相続人の戸籍収集を行い、被相続人の法定相続人が誰かを調べることです。

なお、相続人調査は個人でも出来ますが、相当な時間と労力を要する場合がある、非常に手間のかかる手続きです。

これについて、司法書士などの専門家であれば、相続人調査を代行することが認められています。そのため、スムーズに相続人調査をしたい方は、司法書士などの専門家に相談されることを推奨します。

STEP③ 遺産分割協議を行う

相続人が複数いる場合は、誰が不動産を取得するのかを決めるために、遺産分割協議を行います。

遺産分割協議とは、法定相続人全員が参加し、相続財産の分配方法や取得者を決定する話し合いです。数次相続の場合には、一次相続と二次相続のそれぞれについて、どのように財産が承継されたのかを整理する必要があります。

特に中間省略登記を検討する場合には、一次相続において誰が不動産を取得したのかが明確であることが前提となります。そのため、一次相続の遺産分割内容をきちんと確定させておくことが重要です。

協議が成立したら、その内容を遺産分割協議書として書面化し、相続人全員が署名押印します。この遺産分割協議書は、数次相続の登記申請において重要な添付書類となります。

内容に不備があると補正を求められることもあるため、取得者の表示や不動産の表示は正確に記載する必要があります。

STEP④ 必要書類の収集・作成をする

数次相続の登記申請では、通常の相続登記よりも書類が多くなる傾向があります。

主な必要書類は、次のとおりです。

  • 被相続人の戸籍謄本一式
  • 相続人全員の戸籍謄本および住民票
  • 遺産分割協議書
  • 固定資産税評価証明書
  • 登記申請書
  • 登記原因証明情報
  • 委任状(司法書士に依頼する場合)

中間省略登記を行う場合は、相続の連続性が分かる資料を揃えることが重要です。

STEP⑤ 法務局へ登記申請する

必要書類がそろったら、不動産が所在する地域を管轄する法務局へ登記申請を行います。

相続登記は、原則として不動産ごとに管轄法務局が決まっているため、まずは申請先を確認しておくことが重要です。申請方法としては、法務局の窓口での提出で対応できるほか、郵送やオンラインでの申請も可能です。

ただし、郵送で申請する場合は、書類の不足や記載ミスがあってもその場で確認できないため、返送や補正対応により時間がかかることがあります。

また、登録免許税は、申請時に納付します。一般的には、収入印紙で納付するため、申請書類とあわせて準備が必要です。

なお、申請後、書類に不備がある場合は法務局から補正を求められます。

補正が必要になると、追加資料の提出や申請書の修正が必要となり、登記完了までの期間が延びる可能性があります。数次相続や中間省略登記では、相続関係が複雑になりやすく、補正が発生しやすい傾向があります。

手続きを確実に進めたい場合は、事前に司法書士へ相談するのも一つの方法です。

まとめ:数次相続の登記申請についてお気軽にご相談ください

この記事では、数次相続についての概要や登記申請に関する流れ、どのように対応すべきかを中心に解説しました。

数次相続は、その特性上、様々な対応を同時に求められます。そのため、通常の相続と比較し、手続きの漏れが発生しやすい側面もあります。不備なく対応を進めるためには、司法書士等の専門家の意見を取り入れつつ、慎重に手続きを進める必要があります。

「住まいの賢者」では、数次相続の登記申請に詳しい専門家と連携して、相談を受け付けております。数次相続の登記申請についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者

山田 愼一(やまだ しんいち)

山田 愼一(やまだ しんいち)

グリーン司法書士法人 代表社員/司法書士/行政書士

長年にわたりお客様と誠実に向き合い、幅広い課題解決を支えてきた実績を持つ。読者の「頼んでよかった」に応えることを信条とし、専門性に基づいた“プラスワン”の情報提供を心がけている。

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