目次
はじめに
不動産の相続に併せて、相続登記を行う際には、登録免許税を納める必要があります。
しかし、「いくらかかるのか」「どのように計算するのか」が分からず、不安に感じている方も少なくありません。特に、複数の不動産を相続した場合や、マンションを相続した場合には、計算方法が複雑に見えることがあります。
登録免許税の金額を誤って申請・納付してしまうと、後からの補正や再度の手続きが必要になる可能性もあるため、正確な理解が重要です。
この記事では、相続登記における登録免許税の計算方法を、具体例を交えながら分かりやすく解説します。
まずは、基本となる計算の流れから確認していきましょう。
第1章 相続登記の登録免許税を計算する流れ
相続登記における登録免許税は、原則として「固定資産税評価額 × 0.4%」で計算します。しかし、評価額の合計方法や端数処理のルールを正しく理解していなければ、正確な税額は算出できません。
第1章では、具体例を用いながら、計算の流れを順番に整理します。
STEP① 相続不動産の固定資産税評価額を確認する
まずは、相続する不動産の固定資産税評価額を確認します。
固定資産税評価額は、市区町村から送付される固定資産税の納税通知書や、固定資産評価証明書で確認できます。
なお、被相続人が書類管理を丁寧にしていた場合は、納税通知書で確認するのが最も確実です。
登録免許税は、この評価額を基準として計算します。
STEP② すべての不動産の評価額を合計する
複数の不動産を相続した場合は、それぞれの固定資産税評価額をすべて合計します。この際、それぞれの不動産ごとに登録免許税を算出するのではなく、合算して課税標準額を求めます。
なお、共有持分のみを相続した場合は、自身の持分割合に応じた評価額を計算してから合計します。例えば、固定資産税評価額5,000万円の不動産を、共有持分10分の3だけ相続した場合は、1,500万円が評価額の対象となります。
STEP③ 1,000円未満の端数を切り捨て課税標準額を計算する
固定資産税評価額が確定したら、1,000円未満の端数を切り捨てます。
この金額が、登録免許税の課税標準額となります。
STEP④ 課税標準額に税率を掛ける
課税標準額に、税率0.4%を掛けて税額を算出します。相続による所有権移転登記の場合、この0.4%が原則の税率ですが、遺贈等による取得の場合、税率が2%となる点はご注意ください。
STEP⑤ 税額のうち100円未満の金額を切り捨てる
最後に、算出された税額のうち100円未満の金額を切り捨てます。
この金額が、実際に納付する登録免許税となります。
なお、固定資産税評価額が小さい不動産では、計算結果が1,000円に満たない場合もあります。この場合は、登録免許税額が1,000円に切り上げられます。
計算例
例えば、土地と建物をあわせた固定資産税評価額の合計が2,345万6,789円だった場合を考えてみましょう。
まず、1,000円未満を切り捨てて、2,345万6,000円とします。
次に、この金額に0.4%を掛けます。
2,345万6,000円 × 0.4% = 93,824円
最後に、100円未満を切り捨てるため、93,800円が登録免許税となります。
第2章 マンション(敷地権付き区分建物)の登録免許税の計算方法
マンションを相続した場合、登録免許税の計算方法について戸惑う事例は少なからず見られます。これは、マンションが「建物」だけでなく「敷地権(共有持分の土地)」と一体になっているためです。
第2章では、敷地権付き区分建物を相続した場合の登録免許税の計算について、具体例を挙げつつ確認していきます。
2-1 敷地権とは何か
敷地権とは、共有の建物(マンション等)が建っている土地の共有持分のことです。
例えば、100戸のマンションを、100人が所有している場合は、土地全体を100人で共有している状態になります。
各区分所有者は「専有部分(部屋)」に加え、「敷地権」という土地の持分を持っています。なお、敷地権の割合は、登記事項証明書に記載されています。
2-2 具体的な計算例
それでは、以下の事例をモデルに、敷地権付き区分建物を相続した場合の登録免許税を算出してみましょう。
- 専有部分(建物)の固定資産税評価額:1,200万円
- 土地全体の固定資産税評価額:2億円
- 敷地権割合:1/100(1%)
まず、敷地権部分の評価額を計算します。
- 2億円×1%=200万円
次に、敷地権部分の評価額と、専有部分の評価額を合算します。
- 1,200万円+200万円=1,400万円
ここで出てきた金額が、課税標準額の基礎となる評価額となります。登録免許税は、この評価額に、税率をかけることで算出されます。なお、税率は通常の不動産と同様、相続時は0.4%となります。
- 1,400万円 × 0.4% = 56,000円
結論として、今回のケースでは、56,000円 が登録免許税となります。
2-3 敷地権付き区分建物を相続した際の注意点
マンションのような敷地権付き区分建物を相続した際、以下の勘違いや、ミスをしてしまう事例が多く見られます。
- 専有部分のみで、登録免許税を計算してしまう
- 計算の際、土地全体の評価額をそのまま使ってしまう
- 敷地権割合を確認していない
誤った考え方をしてしまうと、登録免許税を過少に申告してしまったり、非常に高額な登録免許税の納付が必要と思ってしまったりするため、注意が必要です。
マンション等の相続について、不安な点がある方は、司法書士等の専門家に確認し、疑問を解消しておきましょう。
第3章 相続登記の登録免許税が免税となるケース
相続登記の登録免許税は、原則として「固定資産税評価額 × 0.4%」で計算し、その結果が税額となります。しかし、一定の条件を満たす不動産については、租税特別措置法により、登録免許税が免税となるケースが見られます。
相続時に、登録免許税が免税となる主な条件として、以下のいずれかが挙げられます。
- 土地を相続した個人が、所有権の移転をする前に亡くなったとき
- 当該不動産が土地であり、その土地の固定資産税評価額が100万円以下であること
3-1 登記完了前に相続が再度発生した場合
条件1に当てはまるケースの具体例は、以下の通りとなります。
A→Bで土地の相続があったにも関わらず、Bが登記を完了する前に亡くなり、B→Cにその土地をさらに相続したときがこれに該当します。
この場合は、Cは「A→Bの相続で必要だった登録免許税の納付」が不要になるイメージです。そのため、B→Cの相続に伴って発生する登録免許税の納付義務は生じます。
「登録免許税が完全に免税となる」わけではない点にご注意ください。
3-2 固定資産税評価額が100万円以下の場合
条件2についても、例を挙げていきます。固定資産税評価額70万円の土地を相続した場合、通常であれば、「70万円×0.4%=2,800円」と計算され、2,800円が登録免許税となります。
しかし、当該土地は、固定資産税評価額が100万円以下であることから、登録免許税が免税となります。
なお、持分の評価額が100万円以下の場合も、免税となる場合があります。
ただし、土地の上に建物が建っていた場合は、この規定は適用されません。また、この規定は、2027年3月31日までの制度と期限が定められています。それ以降にどうなるかは、最新の情報をご確認ください。
相続した土地が、免税措置の対象になっているかどうかについて不安な方は、司法書士・税理士等の専門家にご相談ください。
第4章 相続登記の登録免許税の納付方法
登録免許税の金額が分かったら、次は納付手続きを行います。相続登記では、原則として登記申請と同時に登録免許税を納めます。
ここでは、具体的な納付方法を確認していきましょう。
4-1 収入印紙で納付する方法
相続登記の登録免許税は、一般に収入印紙で納付します。算出した税額分の収入印紙を購入し、登記申請書に貼付して提出します。
収入印紙は、郵便局や法務局内の売店などで購入できます。
なお、納税する際の印紙は、登記申請書の所定の欄に貼付し、消印はせずに提出することが一般的です。誤って消印してしまうと、原則としてその印紙は使用できなくなるため、誤った対応をしないようご注意ください。
4-2 オンライン申請の場合の納付方法
オンラインで登記申請を行う場合は、電子納付を利用できます。インターネットバンキングなどを通じて、登録免許税を納付する仕組みです。
法務局に出向いたり、収入印紙を用意したりする手間がないため、オンライン申請に抵抗のない方にはお勧めできる手段です。
ただし、オンライン申請を行う際は、マイナンバーカードが必要なほか、専用ソフトを事前に用意しなければならないなど、準備段階でのハードルが高い面があります。この点にはご注意ください。
4-3 登録免許税を多く払ってしまった場合の対処法
登録免許税の計算を誤り、登録免許税を多く納めてしまった場合は、還付請求が可能です。
法務局に対し、「還付通知請求・申出書」を提出することで、過納分の返還を受けられます。還付は、収入印紙での返却・指定口座への入金のいずれかで行われます。
ただし、還付請求が出来る期限は、原則として納付から5年以内と設定されています。後述する納税額が不足していた場合と異なり、法務局から連絡が入ることはほぼないため、計算ミスをしていないか、早めに確認しておくことが重要となります。
4-4 登録免許税が不足していた場合
計算を誤り登録免許税を過少に申告しており、納税額が不足していた場合、法務局から補正の連絡が入ります。
この際、補正の完了、および不足分の納付が完了するまでは、登記手続が進まないことが大多数です。そのため、補正の連絡が来た際は、出来るだけ早く対応を完了させましょう。
第5章 相続登記の登録免許税を計算するときの注意点
登録免許税の計算自体は「固定資産税評価額 × 0.4%」という単純な式です。しかし、前提条件を誤ると、税額が大きく変わることがあります。
第5章では、特に注意しておきたいポイントを解説します。
5-1 法定相続人以外が遺贈によって不動産を取得すると税率が上がる
相続による所有権移転登記の税率は、原則として0.4%です。
ただし、法定相続人以外の人が遺贈によって不動産を取得する場合には、税率が異なります。例えば、法定相続人ではない被相続人の友人が不動産を取得する場合は、これに該当します。
この場合は、通常の所有権移転と同様に2.0%の税率が適用されます。
仮に、固定資産税評価額2,000万円の不動産の場合は、相続か遺贈かによって、それぞれ以下の通りに計算結果が変わってきます。
- 相続による取得:2,000万円×0.4%=8万円
- 遺贈による取得:2,000万円×2%=40万円
登録免許税は、取得原因によって税率が異なるため、自身の取得の方法がどのようになっているかあらかじめ確認しておきましょう。
5-2 固定資産税がかからない土地でも登録免許税はかかる
「固定資産税が課税されていない土地だから、登録免許税もかからない」と誤解されることがあります。
例えば、固定資産税評価額が30万円未満の土地や、山林等の過疎地であれば、固定資産税がかからない傾向があります。
しかし、登録免許税は固定資産税とは別の制度です。そのため、固定資産税が非課税となっている土地であっても、固定資産税評価額が付されていれば、登録免許税は課税されます。
固定資産税評価額がゼロでない限り、登録免許税は発生すると考えておきましょう。
まとめ:相続登記についてお気軽にご相談ください
この記事では、相続登記に伴う登録免許税の計算方法やその納付方法、注意点について解説しました。
登録免許税の計算そのものは、固定資産税評価額さえ確認できていれば、そこまで難しいものではありません。しかし、相続登記は、登録免許税以外にも様々な対応が求められるため、その中の一つとして捉えると、思わぬミスをしてしまう可能性は十分にあります。
ミスなく、スムーズに手続きを進めるためには、専門家の力を借りるのも有力な選択肢の1つです。
「住まいの賢者」では、相続登記に詳しい専門家と連携して、相談を受け付けております。相続登記についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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よくあるご質問
複数の不動産がある場合、登録免許税はどのように計算しますか?
複数の土地や建物を相続した場合は、それぞれの固定資産税評価額をすべて合計してから登録免許税を計算します。
不動産ごとに個別に税額を算出するのではなく、まず評価額を合算し、その合計額に税率0.4%を掛けるのが原則です。その後、1,000円未満を切り捨てて課税標準額を求め、最後に100円未満を切り捨てた金額が納付額となります。
なお、共有持分のみを相続した場合は、自身の持分割合に応じた評価額を算出してから合計します。
マンションの登録免許税はどのように計算しますか?
マンションを相続した場合も、基本的な税率は0.4%です。ただし、マンションは「建物部分」と「敷地権(共有持分の土地)」に分かれています。
登録免許税は、建物の固定資産税評価額と、敷地権部分の評価額を合算して計算します。なお、敷地権割合は登記事項証明書に記載されているほか、固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書や評価証明書で確認できます。
建物部分のみで登録免許税の計算をしてしまうと、税額が不足する恐れがあるため、必ず敷地権部分も含めて計算しましょう。
登録免許税の計算を間違えた場合、修正できますか?
登録免許税を多く納めてしまった場合は、所定の手続きにより還付を受けることが可能です。一方で、税額が不足していた場合は、法務局から補正の連絡が入り、不足分を追加で納付することになります。
不足分の納税が完了するまでは、登記も完了しません。
いずれの場合も、修正自体は可能ですが、手続きに時間がかかることがあります。
登録免許税の算出に不安がある場合は、法務局への相談・司法書士等の専門家への相談を通して、事前に解決しておきましょう。