目次
はじめに
配偶者が亡くなった際、不動産を相続する事例は珍しくありません。また、その不動産について、「自身が亡くなった後にどのように取り扱うべきか」について悩む方も見受けられます。
このような配偶者が亡くなった後の相続は、「二次相続」と呼ばれています。
多くの場合、二次相続では、相続人が子どものみとなり、基礎控除額の減少・配偶者の税額軽減措置が使えないことなどから、相続税の負担が重くなりやすい傾向があります。
このような状況を避けるため、二次相続の発生に合わせて、小規模宅地等の特例の適用を受けることを検討する方は多くおられます。
しかし、二次相続でも本当に小規模宅地等の特例を適用できるのか、一次相続と条件が同じなのかについて、不安を感じるケースも多いでしょう。
この記事では、二次相続でも小規模宅地等の特例の適用を受けられるのかどうかについて解説します。そのうえで、適用を受けられないケースや、特例を利用する際の注意点にも触れていきます。
第1章 小規模宅地等の特例は二次相続でも適用を受けられる
結論からお伝えすると、小規模宅地等の特例は、要件を満たしていれば二次相続でも適用を受けることができます。
小規模宅地等の特例とは、被相続人(亡くなった人)の自宅や事業に使用していた宅地の評価額を大きく下げる制度です。相続税は、原則通りに計算すると、数百万円単位の支払いも珍しくありません。そうなると、自宅や事業用の宅地を売却しなければ相続税を支払えなくなる恐れがあります。
小規模宅地等の特例は、このような事態を避けるための制度です。相続税のうち、不動産に関連する部分の計算は「宅地等の評価額」によって計算されます。特例が適用されれば、この評価額が最大で80%下がるため、相続税の負担もかなり軽くなります。そのため、小規模宅地等の特例を利用すれば相続税を大幅に節税できます。
小規模宅地等の特例は、制度上、一次相続と二次相続で内容が変わるものではありません。
適用できるかどうかは、相続が発生した時点での相続人の状況や居住状況が要件を満たしているかによって判断されます。
ただし、二次相続では、配偶者がすでに亡くなっているため、配偶者特有の優遇が使えなくなります。その結果、一次相続よりも、同居要件などの条件を満たせるかどうかが重要となり、適用が難しくなるケースもあります。
次章では、二次相続で小規模宅地等の特例が適用されない代表的なケースについて整理します。
第2章 二次相続で小規模宅地等の特例の適用を受けられないケース
第1章でも述べた通り、小規模宅地等の特例は、二次相続でも要件を満たせば適用できます。しかし、状況によっては適用を受けられないケースもあります。
第2章では、小規模宅地等の特例の適用を受けられない代表的なケースを整理します。
2-1 遺産に対象となる宅地がない場合
二次相続の遺産に、特例の対象となる宅地が含まれていない場合、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません。
小規模宅地等の特例は、被相続人が所有していた宅地等に対して適用される制度です。
そのため、一次相続の段階で自宅を売却していた場合や、生前に不動産を贈与していた場合には、二次相続時点で評価減の対象となる土地が存在しないことになります。
また、建物のみを相続する場合も、土地が含まれていなければ特例の対象とはなりません。
二次相続で特例を利用するためには、被相続人名義の宅地が遺産に含まれていることが前提となる点を理解しておくことが重要です。
2-2 小規模宅地等の特例の要件を満たす相続人がいない
小規模宅地等の特例は、相続人が一定の要件を満たしている場合にのみ適用される制度です。
そのため、要件を満たす相続人がいない場合には、特例の適用を受けることはできません。
二次相続では、相続人が子どものみとなるケースが一般的です。被相続人の子どもが、特定居住用宅地等について特例の適用を受けるためには、被相続人と同居していた親族であることや、いわゆる家なき子の要件を満たすことなどが求められます。
これらの条件を満たす相続人がいない場合、評価減を受けることはできません。
これに対し、一次相続では、配偶者が自宅を相続する場合、原則として同居要件を問われずに特例を利用できるため、「自宅は特例が使えるもの」と考えてしまいがちです。しかし、二次相続では生存配偶者がいないため、同様の前提で判断すると、特例が適用できない可能性があります。
そのため、一次相続の段階から、将来の二次相続を見据え、誰が不動産を取得するかを含めた承継方法を検討しておくことが重要です。
第3章 一次相続・二次相続で小規模宅地等の特例の適用を受ける際の注意点
小規模宅地等の特例は、制度自体は一次相続と二次相続で変わりません。しかし、誰が宅地等を取得するかによって、税負担は大きく変わります。
第3章では、一次相続と二次相続を通して検討すべきポイントを整理します。
3-1 一次相続で子供が不動産を相続することも検討する
二次相続対策として、一次相続の段階で子どもに不動産を相続させることも選択肢となります。
一次相続の際、生存配偶者であれば小規模宅地等の特例の適用を受けやすいため、自宅を生存配偶者が相続するケースが多く見られます。
しかし、生存配偶者が自宅を取得した場合、その後に発生する二次相続では、子どもが改めて要件を満たせるかどうかが問題となります。特に、同居していない場合や、子どもが別の持ち家を所有している場合には、特例が使えない可能性があります。
特例を受けられなかった場合、二次相続で想定以上の相続税が発生するケースもあるため、注意すべきポイントです。
そのため、一次相続の段階で、子どもが自宅を取得することを含め、将来の二次相続まで見据えた分割を検討することが重要です。
配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は、単独で考えるのではなく、一次相続と二次相続を通じた総額で検討する必要があります。
3-2 小規模宅地等の特例の適用要件は配偶者と子供で異なると理解しておく
小規模宅地等の特例は、誰が宅地を取得するかによって、適用の前提条件が異なる制度です。制度上、配偶者と子どもでは取り扱いが同じではありません。
配偶者が特定居住用宅地等を取得する場合、原則として同居の有無は問題とされず、比較的適用しやすい立場にあります。
これに対し、子どもが取得する場合には、追加の要件を満たすことが前提となります。そのため、一次相続では問題なく特例を利用できた場合でも、相続人の立場が変わる二次相続では、同じように適用できるとは限りません。
小規模宅地等の特例は「宅地」であれば自動的に適用される制度ではなく、取得する相続人の属性によって判断が分かれる点を理解しておくことが重要です。
具体的な要件の内容については、次章で詳しく整理します。
第4章 小規模宅地等の特例の同居要件
第3章でも述べた通り、小規模宅地等の特例を適用できるかどうかは、相続人の立場によって要件が異なります。
特に二次相続では、配偶者がいないため、子どもが要件を満たせるかどうかが重要になります。ここでは、配偶者と子どもの場合に分けて整理します。
4-1 配偶者の場合
被相続人の配偶者が居住用の宅地等を相続する場合、原則として同居要件は問われません。
そのため、相続開始直前に別居していた場合であっても、制度上は特例の適用を受けることが可能です。このような取扱いから、一次相続では配偶者が自宅を取得し、小規模宅地等の特例を利用するケースが多く見られます。
一方で、二次相続では生存配偶者が相続人とならないため、生存配偶者に認められていた前提条件は適用されません。その結果、相続人の要件がより厳密に問われることになる点に注意が必要です。
4-2 子どもの場合
子どもが特定居住用宅地等の特例を受けるためには、原則として「同居要件」または「家なき子要件」のいずれかを満たす必要があります。
4-2-1 被相続人と子どもが同居していた場合
被相続人と子どもが同居していた場合は、以下の2つの要件を満たす必要があります。
- 相続発生時点で被相続人と同居していたこと
- 相続税の申告期限までその宅地等を保有し続けること
この「継続保有・継続居住」の要件を満たさなければ、特例は適用されません。
二次相続では、親が単独で居住していたケースもあり、子どもが同居要件を満たしていない場合も少なくありません。そのような場合には、次に述べる家なき子特例の適用可否が検討対象となります。
4-2-2 家なき子特例を利用する場合
被相続人と同居していなかった場合でも、一定の条件を満たせば、いわゆる「家なき子特例」により特例の適用を受けられる可能性があります。
家なき子特例の適用要件は、以下の4つとなっています。
- 故人に配偶者や同居していた相続人がいない
- 相続開始前の3年間にわたり持ち家等に住んだことがない
- 相続した宅地を相続税申告期限まで所有し続けている
- 相続開始時に居住している家屋をこれまで一度も所有したことがない
これらの要件は、いずれも、「相続人は自己所有の不動産がない」ことを前提としているため、家なき子特例と呼ばれています。
二次相続で特例を利用できるかどうかは、子どもの居住状況や不動産の保有状況によって大きく左右される点を理解しておくことが重要です。
まとめ:不動産の相続についてお気軽にご相談ください
この記事では、二次相続の際に小規模宅地等の特例が適用できるかどうかについてを中心に、特例を受けられないケースや、適用を受ける際の注意点について解説しました。
繰り返しにはなりますが、二次相続の段階でも、要件さえ満たしていれば小規模宅地等の特例の適用は受けられます。しかし、同居要件・家なき子特例の要件のいずれかを満たさなければならないことから、実際に二次相続が発生した際に、特例の適用を受けられない事例は少なからずあります。
そのため、二次相続が発生する前に、どのような対策を取っておくべきかを入念に検討することが非常に重要となります。
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