目次
はじめに
不動産を相続する際、現金が十分にないのに相続税を払うことになってしまい困っている方もいるのではないでしょうか。
相続税は、不動産評価額に加え、現金や債務、基礎控除などを踏まえて計算されます。不動産に資産が偏っている場合は、不動産の相続税評価額を下げる方法が有効です。
本記事では、不動産の相続税評価額の計算方法と評価額を下げる方法を解説します。早めに相続税の対策を行い、納税資金の準備を始めましょう。
第1章 相続税評価額とは
相続税評価額とは、相続税を計算するために用いられる財産の評価額のことです。
不動産の評価額は、売買価格そのものではなく、国税庁の評価ルールに基づいて算定されます。実際には高く売れそうな土地でも、評価額は低い場合もあるため覚えておきましょう。
また、土地と建物は別々に計算を行う必要があります。
土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額をもとに計算するため、土地と建物の相続を行う場合は押さえておきましょう。
1-1 相続税評価額を下げるメリット
相続税評価額を下げるメリットは、納める相続税を抑えられる点です。
不動産は現金化に時間がかかるため、財産はあるのに納税資金が足りず、不動産の相続税が払えない状況に陥るケースは珍しくありません。
評価額を適正に下げることによって、相続税を払える可能性が高まるため、不動産の活用や売却などの選択肢を増やすことができます。
第2章 土地・建物の相続税評価額の計算方法
相続税が払えない不安がある場合は、概算でもよいので早めに相続税評価額を把握しておくことが大切です。
もし、納税が難しいと感じた場合は、相続税評価額を下げる選択肢がないか検討することをおすすめします。
では、土地と建物それぞれの基本的な計算方法を順番に確認していきましょう。
2-1 路線価方式による土地の評価方法
路線価方式は、市街地にある宅地などで使われる代表的な評価方法です。
路線価方式による相続税評価額の計算方法は以下の通りです。
- 相続税評価額=路線価×地積×各種補正率
基本は前面道路に設定された路線価に土地面積を掛けて算出し、必要に応じて奥行価格補正や不整形地補正などを反映します。
実際には土地ごとの個別事情が評価額に大きく影響するため、路線価図だけを見て判断するのではなく、形状や接道状況まで含めて確認することが大切です。
2-1-1 路線価方式による相続税評価額のシミュレーション
では、実際に路線価方式を使った相続税評価額を見ていきましょう。
今回は、路線価が25万円/㎡、土地面積が160㎡の土地を例にシミュレーションします。
- 路線価:25万円/㎡
- 土地面積:160㎡
- 補正前評価額:25万円×160㎡=4,000万円
- 補正率:0.90
- 最終評価額:4,000万円×0.90=3,600万円
不動産評価額が4,000万円の土地に補正率を反映することで、評価額を400万円下げることができます。補正率は、国税庁の公式ページで確認しておきましょう。
路線価方式では、どの補正が使えるかを見極めることがポイントです。
2-2 倍率方式による土地の評価方法
倍率方式は、路線価が設定されていない地域で採用される評価方法です。
倍率方式による相続税評価額の計算方法は以下の通りです。
- 相続税評価額=固定資産税評価額×評価倍率
固定資産税評価額に、国税庁が定める倍率を掛けて相続税評価額を求めます。
山林や郊外の宅地、地方の土地などではこの方式が使われることも多いため、対象地域かどうかを最初に確認しておきましょう。
また、評価額の確認ミスや、地目ごとの倍率の見落としがあると、評価額がずれてしまうことがあるため注意が必要です。
2-2-1 倍率方式による相続税評価額のシミュレーション
では、実際に路線価方式を使った相続税評価額を見ていきましょう。
今回は、固定資産税評価額が4,000万円の土地を例にシミュレーションします。
- 固定資産税評価額:4,000万円
- 評価倍率:1.1倍
- 相続税評価額:4,000万円×1.1 = 4,400万円
評価倍率は、国税庁の公式ページでお住まいの地域の数値を確認しておきましょう。
- 1.0倍の場合:4,000万円
- 1.1倍の場合:4,400万円
- 1.2倍の場合:4,800万円
また、評価倍率が変わると評価額に大きく差が出ます。確認する資料を誤ると申告額に影響しやすいため、専門家に相談して進めるとよいでしょう。
2-3 建物の評価方法
建物の相続税評価額は、原則として固定資産税評価額をそのまま用います。
自宅であれば計算は比較的シンプルですが、賃貸アパートや貸家になると、借家権割合や賃貸割合を踏まえて評価額が下がることがあります。
建物は構造や築年数だけではなく、実際にどのように使われているかも重要です。建物も使い方次第で相続税対策につながるため、建物の評価区分まで含めて確認しましょう。
2-3-1 自宅の相続税評価額のシミュレーション
自宅の相続税評価額の計算方法は以下の通りです。
- 相続税評価額=固定資産税評価額
固定資産税評価額が4,000万円の自宅は、そのまま同じ金額が相続税評価額となります。
- 固定資産税評価額:4,000万円
- 相続税評価額:4,000万円
2-3-2 賃貸の相続税評価額のシミュレーション
賃貸の相続税評価額の計算方法は以下の通りです。
- 貸家評価額=固定資産税評価額×(1−借家権割合×賃貸割合)
賃貸物件は、自宅よりも評価額が低くなる傾向があります。
以下の例では、同じ固定資産税評価額4,000万円の建物でも、自宅なら4,000万円、賃貸中なら2,920万円となり、賃貸建物のほうが評価額が下がります。
- 固定資産税評価額:4,000万円
- 借家権割合:30%
- 賃貸割合:90%
- 貸家評価額:4,000万円 ×(1−0.3×0.9)=2,920万円
賃貸住宅の取得ができる場合は、不動産の評価額を下げられる可能性があるでしょう。
第3章 不動産の評価額を下げる方法
不動産の評価額を下げる際は、無理に資産を動かさず、評価ルールに沿って適正額へ近づけることが大切です。
特に、不動産の相続税が払えないケースでは、評価額の圧縮と現金対策を同時に考えながら方法を選ぶ必要があります。
ここからは、不動産の評価額を下げる方法を解説します。
3-1 賃貸住宅を取得する
賃貸住宅を取得したり建築したりすると、相続税評価額を下げやすくなります。
例えば、更地や自宅のままでは高く評価される土地でも、賃貸物件が建つことで所有者の自由な利用が制限されるため、その分だけ評価減が認められます。
また、賃貸住宅を取得すると賃料収入が入るため、相続税が払えないリスクへの備えにもつながるでしょう。ただし、空室が多いと賃貸割合が下がり、期待したほど評価減が得られないこともあるため注意が必要です。
3-2 貸付の駐車場にする
土地を貸付用の駐車場として活用すると、状況によっては評価額の見直しにつながります。
特に月極駐車場のように、区画が明確で継続的な貸付関係がある場合は、収益資産として期待ができるでしょう。
ただし、アパート経営のように借地借家法が強く働くわけではないため、必ず大きな評価減が得られるとは限りません。売却しにくい土地を活かしながら、相続税が払えないときの納税資金を少しずつ準備する方法が現実的といえるでしょう。
3-4 小規模宅地等の特例を活用する
小規模宅地等の特例は、亡くなった人が居住や事業に使っていた土地を相続する際、一定の要件を満たすと、土地の評価額を最大80%減額することができる制度です。
本来は相続税が高額になりそうな土地でも、納税額を大きく圧縮できるため、不動産の相続税が払えないと悩む方にとって、最優先で活用すべき特例です。
ただし、適用要件が細かく定められているため、専門家に相談することをおすすめします。
3-5 評価ミスを見直す
相続税を申告する際、土地の形状や接道条件などが正しく反映されていないと、評価額が本来より高くなることがあります。
例えば、不整形地なのに整形地として扱っていたり、高低差のある土地なのに補正を考慮していなかったりすると、過大評価につながります。
相続税が払えない場合は、売却や借入を急ぐ前に、まず評価ミスがないか確認しましょう。実際に、再評価によって申告額が下がることも珍しくありません。
3-6 固定資産税の減額を申請する
建物や土地の状況によっては、固定資産税評価額自体の見直しや減額申請が検討できる場合があります。
例えば、災害で損傷した建物や老朽化が著しく進んだ建物、利用価値が大きく下がっている不動産などは、自治体に相談する余地があります。
明らかな評価誤りや災害等がある場合は、市区町村に評価内容の確認や見直しの可否を相談するとよいでしょう。
第4章 相続税評価額をさらに下げられる土地の特徴
土地の相続税評価額は、面積や路線価だけで決まるわけではありません。
見た目には同じ広さでも、形が悪い土地や高低差のある土地、周辺環境に難がある土地は、補正や減額の対象になる可能性があります。本来なら下げられるはずの評価額をそのまま申告してしまうことがないように、土地の特徴を見極めることが大切です。
では、相続税評価額をさらに下げられる土地の特徴を解説します。
4-1 形の悪い土地
三角形に近い土地や旗竿地、極端に間口が狭い土地など、いわゆる形の悪い土地は評価減の対象になる可能性があります。
このような土地は建物配置が難しく、駐車スペースを取りにくいなど、利用価値が下がりやすいため、整った長方形の土地より低く評価されやすい傾向があります。
土地の形状が特殊な場合は、丁寧に検証を行いましょう。
4-2 傾斜地・高低差のある土地
傾斜地や道路との間に高低差がある土地も、相続税評価額が下がりやすい土地です。
平坦地と比べると造成費や擁壁工事費がかかりやすく、建物の建築や駐車場の設置に制約が出るため、利用価値が低く見られやすい傾向があります。
使いにくさが明確な土地は、現況写真や測量図、造成履歴などを確認して判断しましょう。
4-3 騒音・振動がある土地
線路沿いや工場の近隣など、騒音や振動の影響を受けやすい土地は居住環境や利用快適性が下がるため、減額要因として検討されることがあります。
特に住宅地では、静かな住環境が重視されるため、騒音や振動は購入希望者にとって大きなマイナスです。ただし、どの程度の影響があるかはケースによるため、一律に下がるわけではありません。
減額を狙うためにも、現地の状況を客観的に示せる資料をそろえることが大切です。
4-4 墓地・嫌悪施設が近い土地
墓地や火葬場、下水処理施設など、一般に嫌悪施設と呼ばれるものが近い土地は、心理的な抵抗感から需要が下がる傾向があります。
相続税評価でも、その土地の利用価値や市場性が低いと判断された場合は、評価減の可能性が出てきます。距離や視認性、地域の受け止め方によって差がありますが、購入や居住をためらう方が増える要因である以上、減額できる可能性はあるでしょう。
4-5 接道条件が悪い土地
接道条件が悪い土地は、建築や再建築に制限がかかる場合があり、相続税評価でも不利になりやすい特徴を持っています。
また、再建築不可の可能性がある土地も、購入希望者は大きく限定されるため、相続税評価の補正や減額検討につながります。
建て替えが難しい土地ほど、評価の見直し余地は大きいと考えられるでしょう。
4-6 高圧線・土砂災害区域の土地
高圧線下にある土地や土砂災害警戒区域などの災害リスクを抱える土地も、相続税評価額が下がる可能性があります。
ハザードマップや都市計画情報、送電線の位置図などを確認し、買主にとってマイナス要因になる不動産を所有している場合は客観的な資料を揃えておきましょう。
第5章 法人化による不動産の相続税対策
不動産の相続税対策として、個人所有のまま不動産を保有するだけではなく、法人化を検討する方法があります。
法人化とは、資産管理会社などを設立し、不動産の管理や保有を会社経由で行う方法です。
家賃収入を法人に集約しやすくなり、所得分散や資産承継の設計がしやすい点がメリットですが、設立費用や運営コストがかかるため、誰にでも向く方法とはいえません。
では、法人化をするメリットとデメリットを比較しましょう。
5-1 法人化のメリット
法人化のメリットは、資産承継を計画的に進めやすくなる点です。
例えば、家賃収入を法人に移し、個人の所得税の負担を分散させることで、1人に適用されていた税率よりも低くなります。また、不動産そのものではなく法人株式の承継という形を取れるため、不動産を複数の相続人に相続させる課題にも対応しやすくなるでしょう。
不動産の相続税が払えないリスクを考えるうえでは、資産を現金収入へ変えやすい仕組みを整えられる点は魅力といえます。
5-2 法人化のデメリット
法人化のデメリットは、会社設立の費用や法人住民税の発生、会計処理の手間などが挙げられます。個人で保有していたときよりも事務負担が増える点は避けにくいでしょう。
また、不動産を法人へ移す際には、登録免許税や不動産取得税などの税金が発生します。相続税対策になると思って進めていても、入口で多額のコストがかかるため注意が必要です。
不動産の相続税が払えない不安だけで、短期的に判断することは避けましょう。
第6章 生前贈与で相続税評価額を抑える方法
相続が始まってから慌てて対策するより、生前のうちに資産を移しておくほうが有効な場合も多くあります。
生前贈与は、財産を少しずつ次世代へ移転することで、将来の相続財産を圧縮しやすくする方法です。ただし、贈与する場合は贈与税が発生するため、やみくもに進めると逆に負担が増えるリスクもあります。
最初にどの制度を使うのか、どの財産を移すのかを整理しておくことが大切です。
ここからは、生前贈与で相続税評価額を抑える方法を解説します。
6-1 暦年贈与を行う
暦年贈与とは、毎年の基礎控除の範囲で少しずつ財産を移転していく方法です。
計画的に続けることで将来の相続財産を圧縮してくれる可能性がありますが、名目だけで実際に受贈者が管理していない場合、あとから贈与として認められないリスクがあります。
暦年贈与を行うためにも、通帳管理や贈与契約書などで記録をしておき、証拠を残しておくことが大切です。
6-2 相続時精算課税制度を活用する
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与を行う際、累計2,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。また、現行制度では2024年以後、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が創設されています。
贈与者が亡くなり、相続が発生した際にまとめて精算するため、将来値上がりしそうな資産や早めに承継しておきたい不動産がある場合に検討するとよいでしょう。
ただし、一度選択すると暦年贈与へ戻しにくいため、慎重に判断する必要があります。
6-3 居住用財産の3,000万円控除を活用する
居住用財産の3,000万円控除とは、マイホームを売却したときの譲渡所得への特例です。
直接的に相続税評価額を下げる制度ではありませんが、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できるため、自宅を整理して現金化する選択肢を考える際に利用したい特例です。
相続税が高くなりそうなのに現金が少ない場合は、生前に住み替えや売却を進めて資産構成を見直すことで、将来の納税負担を軽減しやすくなるでしょう。
第7章 不動産の節税対策は専門家に相談しよう
不動産の相続税対策は、自己判断だけで進めるには限界があります。
相続に悩んだ場合は、役割の異なる専門家の力を組み合わせることが重要です。早めに相談することで、使える特例を逃しにくくなり、期限直前の混乱も避けられるでしょう。
以下は、不動産の相続について相談できる専門家です。
| 専門家 | 相談できる内容 |
|---|---|
| 税理士 | 相続税評価額の計算、特例適用、納税額の試算、再評価の可否 |
| 司法書士 | 相続登記、不動産の名義変更、相続放棄 |
| 弁護士 | 相続人の争い、遺留分、交渉・調停対応 |
| 不動産会社 | 不動産の売却査定、活用提案、収益化の可否、市場価格の確認 |
| 土地家屋調査士 | 測量、境界確認、地積更正、現況把握 |
| 行政書士 | 一部の書類作成、手続き補助 |
専門家へ相談するときは、誰に何を聞くべきかを整理しておくとスムーズです。
7-1 専門家に相談する前に準備すること
専門家に相談する前に、なるべく以下の基本資料をそろえておくと精度が上がります。
- 固定資産税納税通知書
- 登記事項証明書
- 公図
- 測量図
- 路線価がわかる資料
- 賃貸借契約書
- 預金残高
- 保険の内容
- 遺言書
また、誰がどの不動産を取得したいのか、相続人同士の希望を大まかに整理しておくと、より確実な提案を受けやすくなるでしょう。
相談の場で資料が不足していると、具体策まで踏み込めないため、準備を整えてから相談することが大切です。
まとめ:不動産の相続税評価額を下げるには事前の対策が重要
不動産の相続税評価額を下げるためには、土地や建物の評価方法を確認し、使える補正や特例を漏れなく活用することがポイントです。
また、相続は発生してからでは選べる手段が限られます。元気なうちから資産状況を整理し、専門家のアドバイスを取り入れながら準備を進めることが大切です。
「住まいの賢者」では、司法書士と連携して、相続登記を始めとする相続の相談を一括で対応しています。不動産の相続問題にお悩みの方は、ぜひ無料相談をご活用ください。
