相続不動産の売却で起こるトラブルとは?よくある事例と対処法を解説

相続不動産の売却で起こるトラブルとは?よくある事例と対処法を解説
執筆者: 中西孝志

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目次

はじめに

相続した不動産を売却しようと考えたとき、「思うように手続きが進まない」「相続人同士で意見がまとまらない」といったトラブルに直面するケースは少なくありません。相続不動産の売却は、通常の不動産売却とは異なり、相続人や登記、税金などが複雑に絡むためです。

本記事では、相続不動産の売却でよくあるトラブルとその解決方法、トラブルを未然に防ぐためのポイントについても紹介します。これから売却を検討している方や、すでに手続きを進めている方は、ぜひ参考にしてください。

第1章 相続不動産の売却に関するトラブルとその解決方法

相続不動産の売却に関するトラブルとその解決方法は以下の通りです。

トラブル内容解決方法
相続人同士で意見がまとまらない調停の利用や専門家の介入で合意形成を図る
相続登記が未完了で売却手続きが進まない相続登記を行う
共有名義で売却が進まない単独名義への変更や共有物分割を検討する
相続人と連絡が取れない不在者財産管理人の選任など法的手続きを検討する
税金の知識不足で損をする税理士に相談する
権利関係に問題があり売却できない権利関係を整理する
不動産会社選びで失敗する別の不動産会社への切り替えや再査定を検討する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1-1 相続人同士で意見がまとまらない

相続不動産の売却では、遺産分割協議がまとまらず、手続きが進まなくなるケースがあります。相続人全員の合意が必要となるため、1人でも反対すると売却に進むことができません。

1-1-1 トラブルの概要

遺産分割協議では、「売却して現金で分けたい人」と「そのまま保有したい人」で意見が対立したり、売却価格や分配方法について折り合いがつかないことがあります。

不動産は現金のように分割しやすい資産ではないため、意見の食い違いが起こりやすい傾向があります。また、実家に対する思い入れや「親の家を残したい」といった感情が強く働くことで、話し合いが感情的になり、関係性が悪化してしまうケースも少なくありません。

1-1-2 解決方法

相続人同士で意見がまとまらない場合、当事者同士だけで解決しようとすると話し合いが進まないことも少なくありません。そのようなケースでは、弁護士に間に入ってもらうことで、冷静に話し合いを進められる可能性があります。それでも合意に至らない場合は、家庭裁判所での調停を利用することも検討しましょう。

1-2 相続登記が未完了で売却手続きが進まない

相続登記が完了していない場合、不動産の売却手続きが途中で止まってしまいます。

1-2-1 トラブルの概要

相続登記とは、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する手続きのことです。相続登記が完了していない場合、登記簿上の所有者が被相続人のままとなっているため、不動産を売却することができません。

売却手続きを進めることは可能ですが、途中で止まってしまうのが一般的です。特に、買主が住宅ローンを利用する場合、金融機関は売主の名義を確認します。相続登記が未完了の状態では審査に通過しないため、売却手続きが進まなくなるでしょう。

1-2-2 解決方法

相続登記が未完了の場合、不動産の名義人を売主に変えるほかありません。相続登記には、戸籍の収集や書類作成など一定の手間と時間がかかります。そのため、売却を検討している段階で早めに着手しておくことが望ましいでしょう。なお、相続関係が複雑な場合や手続きに不安がある場合は、司法書士に相談するのがおすすめです。

1-3 共有名義で売却が進まない

相続不動産が共有名義になっている場合、売却の意思決定がスムーズに進まず、手続きが止まってしまうケースがあります。

1-3-1 トラブルの概要

相続によって不動産を複数人で共有している場合、不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要になります。そのため、1人でも売却に反対する人がいると、売却手続きを進めることができません。「価格に納得できない」「まだ売りたくない」など、意見の違いで話がまとまらないケースがあります。

1-3-2 解決方法

共有者同士の意見が揃わない場合は、まず全員で売却方針について話し合い、合意形成を図ることが重要です。合意が難しい場合には、特定の相続人が他の共有者の持分を買い取って単独名義にする方法や、共有物分割請求によって解決を図る方法もあります。また、自分の持分のみを売却することも可能です。

1-4 相続人と連絡が取れない

相続不動産の売却では、相続人の一部と連絡が取れず、手続きが進まなくなるケースがあります。

1-4-1 トラブルの概要

相続手続きでは、原則として相続人全員の関与が必要となります。しかし、相続人の中に所在が分からない人や、長年連絡を取っていない人がいる場合、遺産分割協議や売却手続きを進めることができません。

例えば、相続人の一人が遠方に住んでいて連絡がつかないケースや、疎遠になっている家族と連絡が取れないケースなどが挙げられます。また、相続人の存在自体を把握できていなかった場合には、手続きの途中で発覚し、やり直しが必要になることもあります。

1-4-2 解決方法

相続人と連絡が取れない場合は、まず所在調査を行い、連絡先の特定を試みることが必要です。それでも連絡が取れない場合には、家庭裁判所に申し立てを行い、不在者財産管理人の選任を検討します。不在者財産管理人が選任されることで、その相続人の代理として遺産分割協議や売却手続きを進めることが可能になります。

1-5 税金の知識不足で損をする

相続不動産の売却では、税金に関する知識が不足していることで、想定以上の負担が発生してしまうケースがあります。

1-5-1 トラブルの概要

不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が課されます。しかし、仕組みや特例を十分に理解しないまま売却してしまうと、本来よりも多くの税金を支払ってしまうことがあります。

例えば、空き家特例や取得費加算の特例を利用できるにもかかわらず、制度を知らずに売却してしまうケースです。これらの特例を活用できれば税負担を軽減できますが、いずれも適用には期限があるため、売却のタイミングを誤ると利用できなくなってしまいます。

1-5-2 解決方法

税金で損をするリスクを避けるためには、税理士に相談することが有効です。

相続不動産の売却では、譲渡所得税の計算や特例の適用可否によって税額が大きく変わります。特に、空き家特例や取得費加算の特例には期限があるため、売却のタイミングも含めて専門的な判断が必要になります。税理士に相談することで、適用できる特例や最適な売却時期を踏まえたアドバイスを受けられるでしょう。

1-6 権利関係に問題があり売却できない

相続不動産の売却では、権利関係に問題があることで、そもそも売却できないケースがあります。

1-6-1 トラブルの概要

不動産には、所有権以外にも権利が設定されている場合があります。例えば、抵当権が残っている、仮登記がされている、境界が確定していないといったケースです。これらの問題があると、買主が安心して購入できないため、売却が難しいケースが多いでしょう。

1-6-2 解決方法

このような場合は、売却前に権利関係を整理しておくことが重要です。例えば、抵当権が残っている場合は抹消手続きを行い、仮登記がある場合はその内容を確認したうえで対応を検討します。また、境界が不明確な場合には測量を行い、境界を確定させる必要があります。これらの対応には専門的な知識が必要となるため、司法書士や土地家屋調査士などの専門家に相談しましょう。

1-7 不動産会社選びで失敗する

相続不動産を売却する際、不動産会社選びに失敗することでトラブルになる可能性があります。

1-7-1 トラブルの概要

不動産会社によって査定価格や販売戦略は異なるため、1社だけの情報で判断してしまうと、適正な価格で売却できない可能性があります。

例えば、最初に高めの査定価格を提示して契約を取り、その後に「なかなか売れない」などの理由で価格の引き下げを提案されるケースがあります。その結果、売却が長期化したり、最終的に相場よりも低い価格で売却してしまうことがあります。

1-7-2 解決方法

このような場合は、現在の販売状況や価格設定が適切かを見直すことが重要です。別の不動産会社に相談するなどして、提示されている価格が市場相場と乖離していないかを確認しましょう。もし、売却活動が進んでいない、当初の査定価格より大幅に低い金額を提示されたなどがあれば、他社に依頼するのも選択肢の一つです。

第2章 相続不動産の売却トラブルを防ぐためにやっておくべきこと

相続不動産の売却では、事前の準備次第でトラブルの発生を防ぐことが可能です。ここでは、相続不動産の売却トラブルを未然に防ぐために、あらかじめ押さえておくべきポイントについて解説します。

2-1 相続登記は早めに行う

売却直前になって相続登記を行おうとすると、戸籍の収集や書類準備に時間がかかり、スケジュールの遅れに繋がります。このような事態を防ぐためには、相続不動産の売却を検討している場合は、早めに相続登記を済ませておくことが大切です。

2-2 遺言書を残してもらう

被相続人が生前に遺言書を残している場合、遺産の分け方が明確になるため、相続人同士のトラブルを防ぎやすくなります。遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があり、意見がまとまらないと手続きが進まなくなることがあります。こうしたトラブルを防ぐためにも、可能であれば生前の段階で遺言書を作成しておくことが望ましいでしょう。

2-3 税金や特例を事前に確認しておく

税金や特例の有無によって手取り額が変わるため、事前に確認しておくのがおすすめです。

空き家特例や取得費加算の特例を利用できるかどうかで、税負担に差が生じます。空き家特例は相続開始から3年を経過する年の年末まで、取得費加算の特例は相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却する必要があります。

2-4 権利関係や不動産の状態を整理しておく

不動産の権利関係や状態に問題があると、売却手続きが進まない原因になります。例えば、仮登記や抵当権が残っている場合や、境界が確定していない場合などは、事前に対応が必要です。

また、建物の老朽化や残置物の有無なども、売却価格や売却期間に影響を与える要素となります。これらを整理せずに売却を進めると、途中で問題が発覚し、手続きが止まる可能性があります。そのため、売却前の段階で不動産の状況をしっかり確認し、必要に応じて対応しておくことが重要です。

2-5 複数の不動産会社に査定を依頼する

不動産会社によって査定価格や販売戦略は異なるため、1社だけに相談して売却を決めるのは避けるべきです。また、不動産会社の中には、最初に高めの査定価格を提示して契約を取り、その後に価格の引き下げを提案してくるケースもあります。その結果、売却が長期化したり、最終的に相場よりも低い価格で売却したりする必要があるでしょう。

複数の不動産会社に査定を依頼し、価格や提案内容を比較することで、適正な価格での売却に繋がります。納得のいく取引を実現するためにも、慎重に不動産会社を選ぶことが望ましいでしょう。

第3章 相続不動産の売却はなぜトラブルになりやすいのか

相続不動産の売却は、通常の不動産売却と比べてトラブルが発生しやすい傾向があります。ここでは、なぜ相続不動産の売却でトラブルが起こりやすいのか、その主な理由について解説します。

3-1 相続・登記などが複雑に絡むため

相続不動産の売却では、不動産の売買手続きだけでなく、相続や登記に関する手続きを同時に進める必要があります。

例えば、相続人の確定ができていなければ遺産分割協議を行うことができず、協議がまとまらなければ相続登記も進められません。また、相続登記が完了していなければ、不動産の売却手続きが途中で止まってしまいます。

一連の流れが全て繋がっているため、どの工程も欠かすことができません。複数の手続きが同時に絡み合うことが、相続不動産の売却が難しく、トラブルが起こりやすい大きな理由の一つです。

3-2 法律・税金の知識が必要になるため

相続不動産の売却では、不動産取引に関する知識だけでなく、相続や税金に関する知識も求められます。

譲渡所得税の仕組みや、空き家特例・取得費加算の特例といった制度を知らずに売却すると、本来よりも多くの税金を支払ってしまうケースがあります。また、特例には適用期限があるため、手続きの順番やタイミングを誤ることで、本来利用できたはずの制度が使えなくなることもあります。

さらに、相続に関する法律の理解が不十分なまま手続きを進めると、遺産分割協議の進め方や名義変更の方法を誤り、結果として手続きのやり直しが必要になることもあります。

3-3 相続人同士の利害調整が必要になるため

不動産は現金のように分割しやすい資産ではないため、売却するかどうかの意見が分かれることがあります。特に、思い入れのある実家などの場合は、感情的な対立に発展するケースも少なくありません。

相続人の人数が多い場合や、普段から連絡を取り合っていない関係性の場合には、意見の調整が難しく、話し合いが長期化する傾向があります。その結果、売却のタイミングを逃したり、不動産を活用できないまま放置してしまったりします。

まとめ

相続不動産の売却では、相続人同士の意見の対立や相続登記の未了、税金の知識不足など、様々なトラブルが発生する可能性があります。一方で、相続登記を早めに行うことや、税金・特例の内容を事前に確認しておくこと、複数の不動産会社に相談することなど、適切な準備を行うことで防げるトラブルも少なくありません。

ただし、相続不動産の売却は、相続・登記・税金といった専門的な要素が複雑に関係するため、全てを自己判断で進めるのは難しいケースが多いのも実情です。不安がある場合や、手続きをスムーズに進めたい場合は、早い段階で専門家へ相談することを検討しましょう。

住まいの賢者では、司法書士法人と連携する不動産会社として、相続登記から売却までをワンストップでサポートしています。相続不動産の売却でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

相続不動産の売却に関してよくある質問

ここでは、相続不動産の売却に関してよくある質問に回答します。

これまで相続登記がされていないのですが、遡って名義を変更する必要はありますか?

売却するためには相続登記を行い、現在の所有者へ名義を変更する必要があります。

たとえ何世代にもわたって名義変更がされていない場合でも、過去に遡って相続人を確定し、順番に手続きを進めることになります。このようなケースでは、相続人の数が増えていたり、連絡が取れない相続人がいるなど、手続きが複雑になることも少なくありません。

相続登記が未了のままでは売却を完了させることができないため、早めに対応しておくことが重要です。状況が複雑な場合は、司法書士に相談することでスムーズに進めやすくなります。

共有名義人が反対していると不動産の売却は難しいですか?

原則として共有名義の不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要となるため、1人でも反対している場合は売却が難しくなります。

このような場合は、まず話し合いによって合意形成を図ることが基本となりますが、どうしても意見がまとまらない場合には、家庭裁判所での調停や共有物分割請求といった手続きを検討することになります。

なお、自分の持分のみを売却することは可能ですが、一般的に価格が大きく下がる傾向がある点に注意が必要です。

この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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