市街化調整区域の不動産は相続すべき?メリット・デメリットを解説

市街化調整区域の不動産は相続すべき?メリット・デメリットを解説
執筆者: 中西孝志

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はじめに

家族の逝去に伴い、不動産を相続する事例は少なくありません。

しかし、相続した不動産が「市街化調整区域」にあると知り、不安を感じている方もいらっしゃいます。

市街化調整区域の不動産は、一般的な住宅地とは異なり、建築や開発に制限があるため、相続すべきかどうか判断に迷いやすい傾向があります。
実際に、「売却できるのだろうか」「税金や管理の負担が大きいのではないか」などの不安を抱えたまま、手続きを進めている方も少なくありません。

この記事では、市街化調整区域とはどのような区域なのかを整理したうえで、相続するメリット・デメリット、そして相続したくない場合の選択肢について解説します。

ご自身やご家族にとって最適な判断をするための参考にしてください。

第1章 市街化調整区域とは

市街化調整区域とは、都市計画法に基づき、原則として市街化を抑制するために定められた区域のことをいいます。
市街化調整区域は、農地や自然環境を守る目的で開発が抑えられているため、原則として、新たな建物を建てることはできません。

市街化調整区域の特性上、住宅を新築する場合や用途を変更する場合には、自治体の許可が必要となるケースが多く見られます。そのため、相続した不動産がこれに該当する場合、対応に苦慮するケースは多く見られます。

ただし、すべての建築が禁止されているわけではありません。既存の建物の建て替えや、一定の条件を満たす場合には、例外的に許可が下りることもあります。

このように、市街化調整区域の不動産は、一般的な住宅地とは法的な扱いが異なります。そのため、相続した場合にどのような活用ができるのか、売却が可能なのかといった点を慎重に検討する必要があります。

第2章 市街化調整区域にある不動産を相続する4つのデメリット

市街化調整区域の不動産は、一般の住宅地と比べて法的な制限が多いため、相続後に想定外の負担が生じることがあります。

第2章では、市街化調整区域に関する代表的なデメリットを4つに分けて整理します。

2-1 新たに住宅を建築する際に許可が必要となる

市街化調整区域にある不動産のデメリットの1つは、新たに住宅を建築する際に許可が必要となる点です。

当該区域では、原則として新たな建物の建築が制限されています。そのため、相続した土地に住宅を建てようとする場合でも、自治体の許可が必要となるケースが一般的です。
許可を得るためには、一定の要件を満たす必要があり、誰でも自由に建築できるわけではありません。

こうした理由から、市街化調整区域にある不動産は、通常の不動産と比較し、不動産の活用が制限されやすい傾向にあります。そのため、不動産を相続したあとは、自身での土地活用や売却を検討する際にも、慎重な判断が求められます。

2-2 住宅の建て替え時に許可が必要となる

市街化調整区域にある不動産では、住宅の建て替えにあたって許可が必要となる場合があります。既存の住宅が建っている場合でも、建て替えの際に制限を受けることがあります。

特に、建物の用途や規模を変更する場合には、改めて自治体の許可を求められるケースが見られます。相続不動産の中には、築年数が長く、老朽化している建物も少なくありません。

そのような場合であっても、自由に再建築できるとは限らない点には注意が必要です。

2-3 商業施設などが少なく暮らしにくい場合がある

市街化調整区域は、市街地の拡大を抑制する目的で指定されているため、周辺に商業施設や公共施設が少ない場合があります。

その結果、市街化区域の住宅地と比べて、生活の利便性が低くなる可能性があります。

相続した不動産を住居として利用する場合には、交通環境や買い物環境など、周辺状況を事前に確認しておくことが大切です。

2-4 売却しにくい場合がある

市街化調整区域の不動産は、建築制限があることや、周辺の利便性が十分でない場合があることから、購入希望者が限られる傾向があります。

そのため、相続した不動産を売却しようとする場合でも、買い手が見つかるまでに時間がかかることがあります。また、購入希望者が見つかったとしても、同条件の市街化区域の物件と比べて、立地面の制約から価格が低く評価される可能性もあります。

このように、市街化調整区域の不動産は、売却に時間や価格面での制約が生じることがある点を理解しておくことが大切です。

第3章 市街化調整区域にある不動産を相続するメリット

市街化調整区域の不動産には制限がある一方で、一定のメリットもあります。そのため、デメリットだけで判断するのではなく、活用の可能性や費用面も含めて総合的に検討することが大切です。

第3章では、代表的なメリットを2つ紹介します。

3-1 固定資産税が安価な場合が多い

市街化調整区域の土地は、市街化区域と比べて地価が低い傾向にあります。そのため、固定資産税の評価額も比較的低くなる場合が多く、税負担が抑えられることがあります。

特に、農地や山林として扱われる土地の場合は、住宅用の土地と比較し、固定資産税評価額が低くなり、結果として固定資産税も抑えられる傾向が見られます。

そのため、相続した不動産の売却を急がず、保有を継続する場合は、不動産の維持費が少ない点がメリットとなりえます。

3-2 自然豊かで静かな環境である

市街化調整区域は、開発を抑制する区域であるため、自然環境が比較的多く残されていることがあります。人口が密集した地域や再開発が進んでいる地域と比べると、高層建築物が少なく、落ち着いた居住環境となっている場合があります。

そのため、一般的な住宅地としての活用が難しい場合であっても、セカンドハウスや将来的な居住地として検討できるケースもあります。
都市部の喧騒から離れた生活を望む方にとっては、こうした環境が魅力となることもあるでしょう。

第4章 市街化調整区域の不動産を相続したくないなら相続放棄を検討しよう

市街化調整区域の不動産を相続するかどうか迷う場合、相続放棄という選択肢があります。

相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産を一切相続しないことです。ここでいう財産には、借金などの負債も含むため、マイナスの相続を避けたい際に使われることがあります。なお、相続放棄は、家庭裁判所で手続きをする必要があります。

4-1 相続放棄の申請方法

相続放棄は、家庭裁判所に対して申述を行うことで成立します。申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所であり、通常、以下の流れで申述することになります。

  1. 相続財産の概要を確認する
  2. 家庭裁判所へ相続放棄の申述書を提出する
  3. 裁判所からの照会書に回答する
  4. 受理通知書が届く

なお、相続放棄を申請する際の必要書類としては、申述書のほか、被相続人の戸籍謄本や住民票除票、申述人の戸籍謄本などが求められます。

書類に不備がなければ、通常は書面審査で手続きが進みます。

4-2 どのような場合に相続放棄を検討すべきか?

市街化調整区域にある不動産の相続放棄を検討する場合は、以下の視点を意識することが重要です。

  • 相続したとしても、該当の不動産の活用が見込めない場合
  • 維持するメリットよりも、固定資産税の支払い等のデメリットのほうが上回る場合

例えば、広大な山林を相続したとしても、自分がその土地を有効活用するビジョンが見えなければ、相続放棄したほうがよい可能性があります。また、購入希望者が現れる見込みがない場合、負担が長期化する可能性があるため、その場合も相続放棄を検討すべきと言えます。

一方で、将来の活用可能性や資産価値の向上が見込める場合には、安易に放棄しないほうがよい場合もあります。

なお、相続放棄は一度受理されると撤回できません。そのため、判断に迷う場合は、専門家に相談しながら慎重に検討することが大切です。

第5章 市街化調整区域の不動産を相続放棄するときの注意点

相続放棄は、市街化調整区域の不動産を引き継がないための有効な手段です。

しかし、相続放棄の手続きにはいくつかの重要な注意点があります。第5章では、特に理解しておきたい3つのポイントを整理します。

5-1 他の遺産もすべて相続できなくなる

相続放棄は、不動産だけを対象に行うことはできません。一部の財産のみを放棄することは認められておらず、被相続人の財産や負債をすべて引き継がないという意思表示になります。

そのため、預貯金や有価証券など、価値のある財産が含まれている場合でも、相続できなくなります。結果として、相続財産の全体像を把握せずに放棄を選択すると、不利益が生じる可能性があります。

相続放棄を検討する際は、「ほかに価値がある財産も放棄しようとしていないか」も含めて慎重に判断していきましょう。

5-2 相続放棄には期限が設定されている

相続放棄は、熟慮期間と呼ばれる期限が設定されています。具体的には、「自己のために相続があったことを知った日から3か月以内」に行う必要があります。

期間内に家庭裁判所へ申述を行わなければ、原則として単純承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなります。

相続があったことを知った日から3か月以内となると、ゆとりがあるように見えますが、相続放棄に関する書類の収集等には、時間がかかるものも少なくありません。そのため、期限間近になってから相続放棄の手続きを開始しようとすると、手間取ってしまい、結果的に熟慮期間を過ぎてしまう恐れがあります。

相続放棄を検討する際は、なるべく早く用意を始めましょう。司法書士等の専門家であれば、手続きを代行できるため、時間が取れない方は、依頼をご検討ください。

5-3 相続発生時に「現に占有」していた場合には放棄後も管理が必要となる

相続放棄をしても、一定の場合には不動産の管理責任が残ることがあります。

民法940条では、相続放棄をした者が相続財産を「現に占有」している場合には、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまでの間、自己の財産と同じ注意をもって保存しなければならないと定められています。

例えば、相続開始前からその不動産に居住していた場合あなどには、建物の倒壊や第三者への損害を防ぐための最低限の管理が求められる可能性があります。

そのため、「相続放棄をすれば一切関与しなくてよい」というわけではない点に注意が必要です。

まとめ:市街化調整区域の不動産相続についてお気軽にご相談ください

この記事では、市街化調整区域の概要を確認したうえで、区域内の不動産を相続するデメリット・メリットや、相続放棄を検討すべき場面の考え方について解説しました。

市街化調整区域の不動産は、その特性上、取り扱いに苦慮する方が少なくありません。特に、該当の不動産が山林等であれば、相続後の取り扱いが難しくなるため、相続放棄を検討すべき場面も多くなります。
しかし、市街化調整区域の中でも、比較的市街地に近い地域の不動産であれば、特に問題なく活用できるケースもあるため、相続放棄すべきかどうかについては、事例ごとに慎重に判断する必要があります。

「住まいの賢者」では、市街化調整区域の不動産相続に強い司法書士と連携し、市街化調整区域の不動産相続に関する相談や依頼を受け付けています。市街化調整区域の不動産の相続手続きや相続放棄でお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合せください。

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この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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