相続不動産の管理費を払わないとどうなる?滞納リスクと対処法を解説

相続不動産の管理費を払わないとどうなる?滞納リスクと対処法を解説
執筆者: 中西孝志

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はじめに

「相続したマンションに誰も住んでいなくても、毎月の管理費は払い続けるべき?」

こんな疑問を持つ方は少なくありません。

結論からいうと、相続したマンションの管理費は、相続人が支払い義務を負います。

管理費の支払いを放置していると、延滞金の発生から訴訟・差し押さえ・競売へと事態が深刻化するリスクがあります。

この記事では、相続不動産の管理費について詳しく解説するとともに、払わない場合のリスクや払うのが難しい場合の対処法を解説します。

第1章 相続不動産(マンション)の管理費を払うのは誰?

被相続人(亡くなった人)がマンションを所有していた場合、亡くなった後も管理費や修繕積立金の支払い義務はなくなりません。その支払いは、相続人が義務を引き継ぐことになります。

本章では、相続が発生した後の管理費について詳しく解説します。

1-1 相続人が管理費の支払い義務を引き継ぐ

被相続人が所有していたマンションを相続した場合、管理費・修繕積立金の支払い義務は相続人に引き継がれます。

この義務の根拠となるのは、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)および各マンションの管理規約です。区分所有法では、区分所有者(マンションの所有者)は管理費や修繕積立金を管理組合に支払う義務があると定められており、所有権を相続した時点で、この義務も自動的に引き継がれます。

参考:建物の区分所有等に関する法律 | e-Gov 法令検索

よくある誤解として、「相続登記(名義変更)をしていないから支払い義務はない」と考えるケースがありますが、これは誤りです。支払い義務は登記の有無にかかわらず、相続の発生と同時に生じます。

また、「誰も住んでいないから払わなくていい」という考えも通用しません。管理費とは建物の共用部分の維持管理や将来の修繕に充てられるものであり、居住の有無は支払い義務に影響しないためです。

空室であっても、所有している限り支払い義務は続くのです。

1-2 被相続人が滞納していた管理費も相続される

注意が必要なのは、被相続人が生前に管理費を滞納していた場合です。その滞納分についても、相続財産の負債として引き継ぐことになります。

滞納している管理費の元本だけでなく、管理規約に基づいて加算された延滞金(遅延損害金)も含めた金額が相続する債務となります。

延滞金に気づかないまま相続すると、思わぬ高額の支払いを求められることになりかねません。相続前に滞納の有無を確認するには、管理組合に問い合わせるか、被相続人の通帳・郵便物を確認しましょう。

なお、これらの未払いの管理費や修繕積立金は「相続債務」として扱われるため、相続税の課税価格から差し引く(債務控除する)ことが可能です。滞納がある場合は、必ず相続税申告の際に含めるようにしましょう。

1-3 相続人が複数いる場合の管理費の扱いは?

相続人が複数いる場合の管理費は、民法上「不可分債務」として扱われます(民法第428条)。不可分債務とは、人数分で割って支払うことができず、相続人などの債務者全員がそれぞれ全額を支払う義務を負う形式の債務のことです。

つまり、遺産分割協議が完了して相続する人が確定するまでは、管理組合はどの相続人に対しても全額を請求することができます。

一方で、生前に被相続人が滞納していた管理費については「可分債務」として扱われます。可分債務とは、複数の相続人が各自の相続分に応じて分割して負担する債務のことです。

たとえば、3人の相続人がいて法定相続分が各3分の1であれば、滞納した管理費の支払い義務もそれぞれ3分の1ずつ負担することになります。

このように、相続後に発生した管理費は不可分債務、相続前に滞納していた管理費は可分債務という違いがあることに注意しましょう。

第2章 相続したマンションの管理費を払わないとどうなる?滞納リスクを解説

相続不動産の管理費を放置していると、次第に深刻なリスクへと変わっていきます。

リスクがどのように拡大していくのか、ステップごとに見ていきましょう。

STEP① 延滞金・遅延損害金が発生する

管理費を滞納すると、まず延滞金(遅延損害金)が加算されます。

多くのマンションの管理規約では、滞納した管理費に対して年利10〜14.6%程度の遅延損害金が定められています。

滞納が長期化するほど元本も増えていくため、金額は雪だるま式に膨らんでいきます。

管理費を滞納していると、管理組合から相続人へ督促状や内容証明郵便が届きます。これらに対応せず無視し続けると、次のステップへ進みます。

STEP② 管理組合から訴訟を起こされる

督促を無視し続けると、管理組合は法的手段に踏み切ります。区分所有法26条に基づき、管理組合は少額訴訟や通常訴訟を提起することができます。

訴訟の前段階として、支払督促という手続きが取られることもあります。支払督促に対して相続人が異議を申し立てなければ、そのまま強制執行(差押え)へと移行します。

STEP③ 給与・預金が差し押さえられる

訴訟で判決が確定すると、管理組合は強制執行を申し立てることができます。

差押えの対象は、相続不動産だけではありません。相続人自身の給与や銀行口座も対象となります。

会社員の場合、給与の4分の1まで、あるいは手取り額が44万円を超える場合は33万円を差し引いた金額を差押え可能です。

給与の差押えは勤務先への通知が必要となるため、職場に滞納の事実が知られるリスクがあります。また、銀行口座が差し押さえられると、家賃や光熱費の支払い、生活費など日常生活にも支障が出るでしょう。

STEP④ マンションが競売にかけられる

差押えできる財産が見当たらない場合や滞納額が大きい場合は、マンションそのものが競売にかけられます。

区分所有法7条では、管理組合に「先取特権」が認められています。先取特権とは、マンションの管理費などを滞納した人に対して、法律上、他の債権者よりも優先的に未払い分を回収できる権利のことです。

売却によって得られる金額が滞納額・延滞金・競売費用を下回る場合、手元に何も残らないどころか不足分の支払いを求められる可能性もあります。

また、競売の手続きが完了するまでの期間も、延滞金は増え続けます。督促状が届いた段階で管理組合に連絡をとって交渉するなど、早めの対処が最終的な損失を最小限に抑えることにつながるのです。

第3章 相続放棄すれば相続不動産の管理費は払わなくていい?

一般的にマンション管理費は月1~2万円、修繕積立金で月1〜3万円かかります。マンションを相続すると、年間20〜50万円という少なくない負担を負うことになるのです。

管理費などの負担が重い場合や、被相続人の滞納額が大きい場合には、相続放棄も選択肢の一つです。ただし、相続放棄には条件があり、期間や手続きを誤ると放棄できなくなることがあるので注意しましょう。

この章では、相続放棄と管理費の関係について詳しく解説します。

3-1 相続放棄が認められる条件

相続放棄は、相続の開始を知った日(通常は被相続人が死亡した日)から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。この期間を過ぎると、原則として相続放棄はできません。

また、相続放棄が認められるためには、相続を「単純承認」していないことが条件です。

単純承認とは、亡くなった人(被相続人)の預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金といったマイナスの財産もすべて無条件で引き継ぐ相続のことです。特別な手続きをせずに相続開始から3ヶ月が経過すると、自動的にこの単純承認を選択したものとみなされます。

ただし以下のような行為があると、意図していなくても単純承認したとみなされ、後から相続放棄ができなくなるリスクがあります。

  • 相続財産(不動産・預貯金など)を売却する
  • 相続財産を自分のために使う
  • 被相続人の債務を自分の判断で返済する

3-2 相続放棄「前」に管理費を払うとどうなるか

「相続放棄を考えているが、差押えを避けるために管理費だけは払っておきたい」というケースがあります。この場合、支払いが単純承認にあたるかどうかが問題になります。

以下のような目的や状況で管理費を支払った場合は、「保存行為」として単純承認にあたらないと判断される可能性があります。

  • 滞納による差し押さえを防ぐため、最低限の管理費を支払う
  • 管理不全による資産価値の下落を防ぐために管理費を支払う

保存行為とは、相続財産の価値が減ったりなくなったりすることを防ぐために、現状を維持する行為を指します。

一方で、次のように対応した場合、単純承認とみなされるリスクがあります。

  • 今後も継続的に支払い続けることを約束する
  • 自らの意思で積極的に被相続人の債務を処理する
  • 「相続人として支払います」と管理組合に明確に表明する

保存行為にあたるかどうかの判断は、個別の状況によって異なります。専門家でなければ判断が難しいケースもあるため、相続破棄を考えている場合は自己判断で管理費を払わないようにしましょう。

3-3 相続放棄「後」の管理費はどうなるか

相続放棄が認められると、管理費の支払い義務はなくなります。

相続放棄をした人は初めから相続人でなかったものとみなされるため、被相続人が滞納していた分を含めて支払い義務がなくなるのです。

ただし相続放棄をすると、不動産の管理費の支払い義務は次の順位の相続人に移ります。たとえば子が全員放棄した場合、被相続人の親や兄弟姉妹に相続権が移ります。

また、相続放棄前に支払った管理費は、原則として返還されません。

第4章 相続不動産の管理費を払えない場合の対処法

相続したものの、滞納して高額になった管理費の支払いは難しいというケースもあるでしょう。管理費の支払いが難しい場合でも、適切な対処法をとることでリスクを最小限に抑えられます。

この章では、管理費を支払えない場合に取るべき対処法を紹介します。ご自身の状況に応じた方法を検討してください。

4-1 管理組合に相談する

管理費の支払いが難しい場合、まず行うべきなのは管理組合への連絡です。

相続が発生したら速やかに管理組合へ連絡し、所有者の変更(名義変更)手続きを進めましょう。

管理費の支払いが一時的に難しい場合、管理組合によっては分割払いの交渉に応じてくれるケースもあります。

滞納が長期化して法的手続きに発展してからでは交渉の余地が少なくなります。困っていることを早めに伝え、誠実に対応する姿勢が重要です。

4-2 相続放棄を検討する

マンションの資産価値が低く、滞納額が大きい場合は、相続放棄が現実的な選択肢といえます。

相続放棄をすれば、管理費を含む被相続人の一切の債務を引き継がずに済みます。

ただし、相続放棄は相続全体の放棄を意味するため、プラスの財産(預貯金・他の不動産など)も一切受け取れなくなります。

また、相続放棄は相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があるため、早めの判断が必要です。

4-3 賃貸に出して管理費を家賃でカバーする

相続したマンションの管理費を払い続けるのは難しいものの、所有はしておきたいという場合もあるでしょう。

そんなときの対処として、賃貸に出すという方法もあります。

地方のマンションでも、立地や間取りによっては一定の賃貸需要があります。毎月の家賃収入で管理費・修繕積立金をまかなうことができれば、相続人自身の資産から払わなくても済みます。

ただし、部屋の借り手が見つからず空室となるリスクはあります。

空室が続くと、家賃収入がないのに管理費の支払いだけは継続します。このような空室のリスクも踏まえたうえで判断しましょう。

4-4 早期売却で管理費の負担を断ち切る

資産価値が下がり続けているマンションであれば、早期売却が最も合理的な選択になるケースも少なくありません。

誰も住む予定がない空き家マンションを長期間保有し続けると、管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険料といったコストが毎年積み上がります。

売却によって所有権を手放せば、その後の管理費等の支払い義務は一切なくなります。

なお、売却にあたっては滞納している管理費の全額清算が事実上の必須条件となります。マンションの管理費には区分所有法7条で認められた先取特権があり、この権利は新しい所有者(買主)に対しても効力が及びます。

そのため、滞納がある状態では買主が住宅ローンを組めなかったり、購入を避けられたりするのが一般的です。

実際には売却代金の中から滞納分を直接管理組合に支払うことで清算しますが、滞納額が膨らみすぎると売却代金だけでは足りずに自己負担が発生し、売却自体が困難になるケースもあります。

まとめ:相続不動産の管理費でお悩みなら住まいの賢者へご相談ください

相続したマンションの管理費は、相続登記の有無や居住の有無にかかわらず、相続人が支払い義務を負います。放置すれば延滞金・訴訟・差し押さえ・競売と、リスクは段階的に拡大していきます。

管理費を支払えず、かといってどうすればよいかわからないという状況でも、早めに動くことで選択肢は広がります。

管理組合への相談、相続放棄の検討、賃貸活用、早期売却など、ご自身の状況に合った対処法を選ぶことが重要です。

住まいの賢者では、相続に関する手続きと不動産売却を一括してご相談いただけます。「相続放棄すべきか迷っている」「管理費が払えないまま放置してしまった」「早く売却したいがどうすればいいかわからない」といったお悩みも、専門家がわかりやすくサポートします。まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

売却予定でも管理費は払う必要がある?

はい、売却が完了するまでは支払い義務が続きます。

売却するという理由で滞納していると、滞納情報が買主や仲介業者に伝わり、価格交渉で不利になるケースがあります。また、滞納額が大きいと買主のローン審査に影響したり、売却自体が難しくなったりすることもあります。売却完了まで管理費の支払いは継続しましょう。

相続人が複数いる場合の管理費負担はどうなる?

原則として、各相続人が法定相続分に応じて管理費を負担します。ただし、管理組合は特定の相続人に対して全額を請求することもできるため、一人に請求が集中するケースがあります。

もし自分だけが管理費を立替払いした場合は、他の相続人に対して求償権(立替分を請求する権利)を行使することができます。ただし、実際に回収できるかどうかは別問題であるため、遺産分割協議の段階で費用負担についても明確にしておくことが重要です。

マンションの所有者が死亡した後に相続人がいない場合、管理費はどうなる?

相続人が全員相続放棄した場合、または相続人自体が存在しない場合は、家庭裁判所に申し立てることで相続財産清算人(旧:相続財産管理人)が選任されます。清算人は相続財産の範囲内で管理費を含む債務の清算を行います。

管理組合が未払いの管理費を回収するためには、清算人の選任申立てに関与するなどの対応が必要になるケースがあります。最終的に残った財産がある場合は、国庫に帰属します。

この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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