目次
はじめに
不動産を相続する際、相続税の計算・申告は避けて通れない重要な手続です。特に土地や建物の評価額の計算は複雑で、適切な知識がないと予想外の税負担が生じる可能性があります。
2024年の税制改正により、相続税の計算方法に大きな変更が加えられました。この記事では、不動産の相続税を計算する流れや土地・建物の相続税評価額の計算について解説します。
第1章 土地・建物などの不動産を相続すると相続税がかかる
不動産を相続する際には、その評価額に応じて相続税が課せられる可能性があります。特に都市部では、土地や建物の評価額が高額になることが多く、相続財産の中に不動産があるだけで相続税がかかるケースも少なくありません。
相続税の申告と納付は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があり、早めの準備が求められます。
相続税には基礎控除が用意されている
相続税には「基礎控除」と呼ばれる非課税枠が設けられており、遺産総額から基礎控除額を引いた金額に相続税が課せられます。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出します。
なお、法定相続人とは、故人の配偶者や子供など、民法で定められた一定の範囲の相続人のことです。
例えば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円となり、遺産総額がこれ以下であれば相続税は課せられません。ただし、相続人の数え方には注意が必要です。
相続放棄をした人がいても、基礎控除の計算上はその人も含めて法定相続人の数を算出します。また、養子がいる場合には、実子の有無に応じて基礎控除に含められる人数に制限があります。
第2章 土地・建物などの不動産の相続税を計算する流れ
不動産を相続する際の、土地や建物などの不動産を含む相続税の計算手順を、5つのステップに分けて解説します。
STEP① 土地・建物の相続税評価額を計算する
まず、土地・建物の相続税評価額を計算します。土地の相続税評価額は、主に「路線価方式」と「倍率方式」の2つの方法で算出されます。
建物の評価額は、原則として固定資産税評価額をそのまま使用します。ただし、不動産の用途によっては、評価額を減額する特例や控除を利用することができるため、忘れないよう注意が必要です。
STEP② 遺産総額を計算する
遺産総額の計算では、被相続人が所有していたすべての財産を洗い出し、その評価額を合計します。具体的には、現金、預貯金、不動産、有価証券、生命保険金、退職金などです。
また、被相続人の債務(借入金や未払いの税金など)や葬式費用は、遺産総額から差し引くことができます。
STEP③ 基礎控除を引き課税対象額を計算する
基礎控除額を前述のように「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算し、遺産総額から基礎控除額を差し引きます。
STEP④ 相続税の税率を掛ける
相続税の計算は2つのステップに分かれます。まずは相続税の総額を計算し、次に各相続人の税額を計算します。
相続税の総額を計算するためには、課税対象額を法定相続分(民法で定められた、法定相続人ごとの遺産の取り分の割合)で按分し、各相続人の取得額に応じた税率を適用し、各相続税を算出した後、これを合計して計算します。
相続税の税率は累進課税方式で、取得額が多いほど高い税率が適用されます。例えば、取得額が1,000万円以下の場合は10%、3,000万円以下は15%(控除額50万円)など、段階的に税率と控除額が設定されています。
次に、相続税の総額を、遺産分割などで実際に相続する財産の割合で按分することで、各相続人の相続税額が決まります。
STEP⑤ 控除・加算を行う
計算された相続税額から、適用可能な控除を差し引きます。代表的な控除は、配偶者控除(1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い額まで非課税)や未成年者控除、障害者控除です。
反対に、被相続人の配偶者や父母、子以外の相続人(兄弟姉妹や甥姪など)は、算出された相続税額に2割加算されることがあります。これらの控除・加算を適用した後、最終的な納付税額が確定します。
第3章 土地の相続税評価額を計算する方法
土地の相続税評価額を算出するには、主に「路線価方式」と「倍率方式」の2つの方法があります。都市部では路線価方式が一般的で、国税庁が定める路線価を基に評価します。
なお、路線価が設定されていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じる倍率方式が用いられます。また、借地の場合は借地権割合に準じて計算されます。
3-1 2つの計算方法
路線価方式
路線価方式は、市街地など路線価が設定されている地域の土地評価に適用されます。国税庁が公表する路線価に土地の面積や形状に応じた補正率を乗じて評価額を求めるやり方です。
基本的な計算式は以下のとおりです。路線価は国税庁HPで確認できます。
評価額=路線価×土地の面積
例えば、路線価が20万円/㎡で、土地の面積が100㎡の場合、評価額は2,000万円となります。ただし、土地の形状や接道状況に応じて補正が必要です。
奥行価格補正率や側方路線影響加算率などの補正率を適用し、正確な評価額を算出します。これらの補正率は、国税庁HPの路線価図や評価倍率表で確認できます。
倍率方式
倍率方式は、路線価が設定されていない地域の土地評価に適用される方法です。以下の式のように、固定資産税評価額に国税局が定めた倍率を乗じて評価額を算出します。
評価額=固定資産税評価額×倍率
例えば、固定資産税評価額が1,000万円で、評価倍率が1.1の場合、相続税評価額は1,100万円となります。固定資産税評価額は、市区町村から送付される課税明細書や、固定資産評価証明書で確認できます。
なお、地目が雑種地などで評価倍率が定められていない場合は、類似する地目に比準して評価しなければなりません。
3-2 現状ごとの各種控除
借地の場合
被相続人が土地を借りていた場合、借りた土地であっても財産評価が必要です。借地権(使用できる権利)として評価され、前述の方式で求めた額に一定の割合を掛けたものとなります。
都市部においては借りているだけであっても大きな税負担となることがあるので、注意が必要です。
計算例
- 自用地評価額:1,000万円
- 借地権割合:60%
- 借地権評価額 = 1,000万円 × 60% = 600万円
貸地の場合
被相続人が死亡時に土地を賃貸しており、その上に借主が建物を建てていた場合、貸宅地(底地)として評価されます。評価額は、自用地評価額から借地権相当額を控除して算出されます。
計算例
- 自用地評価額:1,000万円
- 借地権割合:60%
- 貸宅地評価額 = 1,000万円 × (1 − 60%) = 400万円
第4章 建物の相続税評価額を計算する方法
建物の相続税評価額は、固定資産税評価額を基準に算出されます。
被相続人が自宅や事業用として使用していた建物の場合、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。
この評価額は、毎年市区町村から送付される「固定資産税課税明細書」や、役所で取得できる「固定資産評価証明書」で確認できます。
一方、建物を第三者に賃貸していた場合、借家権割合を考慮して評価額が減額されます。借家権割合は全国一律で30%と定められています。
評価額は以下のように計算します。
評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合)
また、賃貸アパートやマンションなどの場合は賃貸割合も考慮し、以下のように計算します。
評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
計算例)
【例1:自用建物の場合】
固定資産税評価額が2,000万円の自宅を相続した場合の相続税評価額
2,000万円×1.0=2,000万円
【例2:貸家の場合】
固定資産税評価額が2,000万円の家屋を第三者に貸していた場合の相続税評価額
2,000万円×(1-0.3)=1,400万円
【例3:賃貸アパートの場合】
固定資産税評価額が1億円の賃貸アパートで、賃貸割合が50%の場合の相続税評価額
1億円×(1-0.3×0.5)=8,500万円
第5章 不動産を相続したときの注意点
不動産を相続した際には、以下の3点に注意が必要です。
5-1 相続税申告だけでなく相続登記も必要である
相続税の申告は、相続開始から10か月以内に行う必要がありますが、相続登記についても注意が必要です。
2024年4月1日の法改正により、相続登記が義務化され、相続人は不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記申請を行わなければなりません。これを怠ると、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
また、相続登記をせずに放置すると、不動産の売却や担保設定ができなくなるなどの不利益が生じることもあるでしょう。さらに、時間が経過することで相続人が増え、諸々の手続が複雑化するリスクもあります。
相続が発生した際は専門家の助言を受け、相続税の申告と併せて相続登記も速やかに行うのが賢明です。
5-2 小規模宅地等の特例を適用するには遺産分割を完了させておく必要がある
小規模宅地等の特例を適用するためには、相続税の申告期限までに遺産分割を完了させなければなりません。ただし、申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出すれば、猶予期間が設けられます。
また、対象の宅地を複数の相続人が取得する場合は全員の同意が必要です。相続税申告書に、対象の宅地を取得した全相続人の氏名を記載し、同意を証する書類を添付します。
5-3 相続税申告に不安がある場合には税理士に相談する
相続税申告には専門的な知識を要するため、不安を感じる場合には税理士に相談することが重要です。特に、不動産の評価や特例の適用に関しては、専門家のアドバイスを受ける方がよいでしょう。
税理士による相続財産の適切な評価を受け、適用可能な特例や控除を最大限に活用すれば、相続税の節税につながります。また、煩雑な手続をサポートしてくれるため、安心して相続手続を進められます。
まとめ:不動産の相続税申告は税理士に相談しよう
不動産の相続税申告は、評価方法や特例の適用など専門的な知識が求められる複雑な手続です。特に、土地や建物の評価は状況によって大きく異なるため、適切な評価を行わなければ、相続税額が過大になる可能性があります。
また、申告期限内に正確な申告を行わないと、加算税や延滞税が課せられるリスクもあります。このようなリスクを回避し、適切な節税対策を講じるためには、相続税に精通した税理士に相談することが重要です。
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