不動産の相続は遺言書があっても揉める?原因とトラブルを防ぐ方法

不動産の相続は遺言書があっても揉める?原因とトラブルを防ぐ方法
執筆者: 山田愼一

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目次

はじめに

相続トラブルと聞くと「遺言書さえあれば安心」と考える方は多いでしょう。

遺言書は相続トラブルを防ぐ有効な手段ですが、実際には遺言があったのに揉めてしまったケースはありがちです。特に自宅や賃貸物件などの不動産は分けにくく、評価額も分かりづらいため、争いに発展しやすい傾向があります。

本記事では、遺言書の効力と遺産相続で揉める原因を解説します。将来の相続で家族が争わないために、今から何をしておくべきかを確認していきましょう。

第1章 遺言書の効力はどれくらいある?

遺言書は、被相続人の最終的な意思を示す法的文書です。

法的要件を満たしていれば、原則としてその内容は尊重され、相続は遺言書に基づいて行われます。不動産の相続では「長男に自宅を相続させる」など具体的に指定できるため、遺産分割協議を行わずに済むケースもあるでしょう。

ただし、遺言書があれば必ず争いが起きないわけではありません。

内容の曖昧さや形式不備などによって無効やトラブルの原因になることもあるため、遺言書の効力の範囲を確認することが大切です。

1-1 遺言の効力が認められるのは死亡後

遺言は、作成した時点では効力を持ちません。

効力が発生するのは、遺言者が亡くなったあとです。したがって、生前に内容を変更することも可能ですし、複数の遺言がある場合は、後の遺言が前の遺言と矛盾する部分を撤回する形になります。

相続開始後は、遺言書の内容に従って不動産の名義変更や預貯金の解約手続きが行われます。ただし、遺言の内容が不明確だったり、実際の財産状況と一致していなかったりすると、相続人同士の解釈の違いによって対立しやすいため注意が必要です。

1-2 遺言書が無効になるケース

遺言書は、法律で定められた方式を守らなければ無効になります。

自筆証書遺言の場合、全文を自筆で書いていない、日付が不明確、署名押印がないといった形式不備があると無効になる可能性があります。

また、認知症などで判断能力が十分ではない状態で作成された場合や、内容が曖昧で特定できない場合も争いの原因になりがちです。

遺言書を作成する際は、形式と内容の両面で注意が必要です。

1-3 遺言書は勝手に開封してはいけない

自筆証書遺言が自宅などで見つかった場合、家庭裁判所での検認手続きを経ずに開封してはいけません。勝手に開封すると、5万円以下の過料が科される可能性があります。

また、検認手続きは遺言の有効無効を判断する手続きではなく、内容を確認し改ざんを防ぐためのものです。

不動産が含まれている場合、検認後でなければ名義変更手続きが進まないこともあるため、相続開始後は慌てず、法的手続きを踏むことが重要です。

第2章 遺産相続で揉める原因

相続トラブルは、財産が多いか少ないかよりも人間関係の対立が原因で起こりがちです。

特に不動産は分けにくい財産のため「誰が住むのか」「売却するのか」といった判断で対立しやすい傾向があります。遺言書があっても、その内容に納得できない相続人がいれば争いは避けられません。

では、遺産相続で揉めやすい原因を見ていきましょう。

2-1 生前対策が不十分で話し合いが足りない

生前に家族で相続について話し合う機会がないまま相続が発生すると、各自が思い描く分け方にズレが生じます。

例えば「同居していたから自分が家をもらえるはず」と思っていた相続人と「法定相続分で平等に分けるべき」と考える相続人では立場が異なります。

被相続人としては当然のつもりで決めていたことでも、相続人に伝わっていなければ意味がありません。生前の丁寧な説明と合意形成が、争いの予防策になるでしょう。

2-2 遺言書の未作成や内容に不備がある

遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

全員の合意が得られなければ、不動産の名義変更もできません。また、遺言書があっても「不動産を適切に分ける」といった曖昧な表現では解釈の違いで争いになります。

財産の特定が不十分だったり、相続人の記載が間違っていたりする場合も同様です。形式的に作るだけでなく、専門家のアドバイスを取り入れながら作成することを意識しましょう。

2-3 分割しにくい不動産や事業資産がある

不動産は現金と違い、簡単に等分できません。

売却して現金化すれば平等に分けやすいですが、思い出のある実家を売りたくないという意見もありがちです。

また、事業用不動産の場合は、後継者がそのまま引き継がなければ事業継続が困難になるケースもあります。他の相続人からすれば、価値の高い財産を一人が取得する形になり、不公平と感じる方も珍しくありません。

このように、分割困難な財産があると、相続は一気に難しくなるでしょう。

第3章 遺言書があっても相続で揉めるケース

遺言書の未作成で揉めるケースはありがちですが「遺言書があれば安心」といった考えも危険です。

不動産相続は、特定の相続人に集中させる内容が多いため、遺言が原因でかえって対立が深まることも多くあります。

ここでは、遺言書があっても相続で揉めるケースを紹介します。

3-1 相続人同士の仲が悪い

もともと兄弟姉妹の仲が悪い場合、遺言の内容にかかわらず争いに発展しやすくなります。

特に長年疎遠だった相続人がいる場合や過去に金銭トラブルがあった場合は、遺言の真意そのものが疑われることもありがちです。些細な文言の違いでも疑念を抱いて「誰かが親を誘導したのではないか」といった、対立が起こることもあるでしょう。

不動産のように金額が大きい財産が絡むと、より揉めやすいため注意が必要です。

3-2 相続人が多く複雑な家族関係である

再婚や認知した子どもがいる場合など、相続人が多いと利害関係が複雑になります。

相続人が多いと連絡が取りづらく、全員の合意形成は難しくなるため、遺言の内容に対する不満も表面化しやすくなるでしょう。また、戸籍の収集や意思確認も時間がかかり、その間に不動産の管理費や固定資産税の負担が発生し続けます。

関係者が多いほど調整の労力がかかるため、より不満を抱えがちです。

3-3 介護負担や生前贈与への不公平を感じている

長年介護をしてきた相続人がいる場合、その努力が遺言に十分反映されていないと不満が生じやすいでしょう。

逆に、生前贈与を多く受けていた相続人がさらに多くの財産を相続する内容になっていると、他の相続人が不公平に感じやすくなります。

法律上は特別受益や寄与分といった制度がありますが、感情面で納得が得られなければ争いは続きます。金額の問題だけではなく、気持ちの整理がついていないことが争いの根本原因になるケースは珍しくありません。

3-4 特定の相続人が財産管理をしていた

親と同居し、預貯金や不動産の管理を任されていた相続人がいる場合、他の相続人から使い込みを疑われることがあります。

特に遺言でその人に不動産を相続させる内容になっていると、なおさら疑念が強まるでしょう。実際には正当な支出であっても、証拠がなければ疑いは晴れません。

透明性のある財産管理と記録がなければ、無用な争いを招いてしまいがちです。

3-5 相続財産が不動産しかない

相続財産のほとんどが自宅などの不動産の場合、不動産を取得した相続人が、他の相続人に対して遺留分として金銭を支払わなければならないケースがあります。

特に評価額が高い都市部の不動産では、遺留分侵害額が高額になる可能性も高いでしょう。

現金が不足していれば、結局売却せざるを得ない可能性もあるため、不動産中心の相続では、現金の準備や生命保険の活用など事前の資金対策が重要です。

第4章 相続不動産を分ける際の注意点

相続不動産は、分け方を誤ると将来にわたって問題が続きます。

一度決めた分割方法は、簡単にはやり直せません。共有にした結果、次の世代で権利関係がさらに複雑化するケースも多く見られます。短期的な目線で公平に分けるのではなく、将来の売却や活用まで見据えて判断することが大切です。

では、相続不動産を分ける際の注意点を解説します。

4-1 共有名義を避ける

「とりあえず平等に」という理由で共有名義にすると、将来売却や建て替えをする際に全員の同意が必要になります。

さらに、共有者の一人が亡くなって相続人が増えると、その持分がさらに細分化され、権利関係が雪だるま式に増えていきます。

管理費や固定資産税の負担割合でも揉めやすいため、できる限り単独名義にし、代償金で調整する方法を検討しましょう。

4-2 分割手法を確認する

不動産の分け方には、さまざまな方法があります。

分割方法内容
現物分割遺産をそのままの形で分ける方法
代償分割特定の相続人が財産を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法
換価分割遺産を売却し、売却代金を分配する方法
共有分割遺産を相続人で共有名義にする方法

現物分割はそのまま取得する方法、代償分割は取得者が他の相続人に金銭を支払う方法、換価分割は売却して現金で分ける方法です。

例えば、代償分割を選ぶ場合は、取得者が他の相続人に金銭を支払うため、支払い能力がポイントになります。換価分割は、遺産を売却する方法のため、売却価格や売却時期で意見が対立することも珍しくありません。

それぞれメリットとデメリットがあるため、どの方法が納得感を得られるかを検討して状況に応じた選択が重要です。

4-3 相続登記が完了するまでの間も税金が発生する

不動産の名義変更が済んでいなくても、固定資産税などの税金は発生し続けます。

不動産の相続人が決まっていなくても、誰かが納税義務を負うことになるため、トラブルの原因になりかねません。また、2024年から相続登記の申請が義務化されたことから、正当な理由なく放置すると過料の対象になる可能性もあります。

手続きを先送りにせずに、早めに相続人を確定させて相続登記を行いましょう。

4-4 売却する場合は全員の合意が必要

遺産分割前の不動産は、相続人全員の共有状態です。

したがって、売却には全員の同意が必要です。一人でも反対すれば売却できません。

価格や時期を巡って対立する可能性もあるため、売却を前提とするなら、早期に方向性を共有することが大切です。

また、不動産会社の選定や売出価格の設定は意見が分かれやすいため、相続人同士で対立した場合は、第三者の専門家を交えて進めることで合意しやすくなります。

第5章 相続で揉めた場合の対処法

相続は、どれだけ準備をしても揉めてしまう可能性はあります。

その場合、法的な手続きを踏んで解決を目指すことがポイントです。放置すればするほど対立は深まるため、早い段階で適切な手続きを選択しましょう。

では、相続で揉めた場合の対処法を解説します。

5-1 遺産分割協議を行う

まずは、相続人全員で話し合いを行いましょう。

遺産分割協議では、財産の全体を正確に確認することが出発点です。不動産の評価額やローン残債の有無などを確認して、合意できれば遺産分割協議書を作成しましょう。

口約束だけではなく、書面に残して将来のトラブルを防ぐことが重要です。

5-2 弁護士に相談する

話し合いが難航する場合は、早めに弁護士へ相談することが有効です。

特に遺言無効の主張や遺留分侵害額請求が絡む場合は、専門的な対応が不可欠です。法的な視点から主張を整理することで、対立を和らげる役割も期待できます。

不利な合意を避けるためにも、交渉の窓口を弁護士に一本化するとよいでしょう。

5-3 遺産分割調停を行う

協議でまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。

遺産分割調停では、調停委員が間に入り、双方の主張を整理しながら現実的な合意形成を目指します。合意に至れば、判決と同じ効力を持つ調停調書が作成されます。

第三者が入ることで冷静に話し合える点がメリットですが、期間は半年から1年程度と期間が長いため、不動産の売却時期には注意が必要です。

5-4 遺産分割審判を行う

調停でも合意できない場合は、裁判官が判断を下す遺産分割審判に移行します。

遺産分割審判では、法定相続分や事情を踏まえて裁判所が分割方法を決定するため、当事者の意思にかかわらず結論が出ます。

不動産の場合は、競売や換価分割が命じられることも多く、最終的な解決手段となるでしょう。長期化を避けるためにも、早期解決を目指すことが重要です。

第6章 相続トラブルを防ぐための生前対策

相続トラブルを防ぐには、生前の準備が重要です。

特に不動産を含む相続は、遺言書の作成だけではなく、総合的な対策が求められます。家族構成や財産内容に応じた設計を行って、将来のトラブルを防ぎましょう。

では、相続トラブルを防ぐための生前対策を解説します。

6-1 公正証書遺言を作成する

公正証書遺言とは、公証人が作成し、証人2人以上の立会いのもとで作成する遺言です。

不動産の表示も正確に記載できるため形式不備のリスクが低く、原本が公証役場に保管されるため安心です。ただし、遺言能力などをめぐって争いになる可能性は残るため、状況に応じて医師の診断書を添えるなど工夫するとよりよいでしょう。

費用はかかりますが、将来のトラブルを防げると考えれば有効な投資といえます。

6-2 財産と相続人を正確に調査する

思い込みで財産や相続人を判断すると、あとから新たな相続人が判明することもあります。

財産目録を作成し、不動産の登記事項証明書を確認するなど、正確な情報を把握することが重要です。相続人の範囲も戸籍で確認して、正確な情報をもとに判断しましょう。

正確な情報があってこそ、適切な生前対策となります。

6-3 相続人同士で話し合っておく

遺言内容を生前に説明して、相続人に理解を求めておきましょう。

不動産を誰に承継させるのか、その代わりにどのような配慮をするのかを明確にしておくことが大切です。

突然知らされるよりも、事前に共有しておくほうが争いは起きにくくなります。全員が完全に賛成しなくても、理由を説明することで不信感を減らせるでしょう。

6-4 家族信託・成年後見制度を活用する

判断能力が低下した場合に備え、家族信託や成年後見制度を活用する方法もあります。

家族信託では、あらかじめ管理者を定めておくことで、認知症発症後も不動産の売却や活用が可能になります。

成年後見制度は財産保護に有効ですが、柔軟性に制限があるため注意が必要です。それぞれ目的に応じて制度を選択しましょう。

6-5 生命保険を活用する

生命保険金は受取人固有の財産となるため、代償金の支払い原資として活用できます。

特に不動産中心の相続では、現金不足が争いの原因になります。あらかじめ保険金を用意しておくことで、不動産を取得する相続人が他の相続人へ支払う資金を確保できるでしょう。

なお、保障額や受取人の設定は、相続全体のバランスを考えて決めることが重要です。

まとめ:遺言は万能ではない!トラブルを防ぐには事前の準備が大切

遺言書は相続対策の基本ですが、不動産相続のトラブルを完全に防ぐことはできません。

不動産は金額が大きく、感情も絡みやすい財産です。「遺言があるから大丈夫」と安心するのではなく、生前の話し合いと資金対策を行うことが、円満な相続への近道です。

大切な家族が争わないよう、今できる対策から始めていきましょう。

「住まいの賢者」では、司法書士と連携して、相続登記を始めとする相続の相談を一括で対応しています。不動産の相続問題にお悩みの方は、ぜひ無料相談をご活用ください。

この記事の執筆者

山田 愼一(やまだ しんいち)

山田 愼一(やまだ しんいち)

グリーン司法書士法人 代表社員/司法書士/行政書士

長年にわたりお客様と誠実に向き合い、幅広い課題解決を支えてきた実績を持つ。読者の「頼んでよかった」に応えることを信条とし、専門性に基づいた“プラスワン”の情報提供を心がけている。

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