共有名義の不動産は分筆できる?流れやメリット・デメリットを解説

共有名義の不動産は分筆できる?流れやメリット・デメリットを解説
執筆者: 中西孝志

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はじめに

相続で取得した不動産が共有名義になっており、「売却したいのに自由に動かせない」「他の共有者と意見が合わない」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。共有名義のままでは、不動産の売却や活用には原則として全員の同意が必要となるため、思うように進められないケースも少なくありません。その結果、固定資産税の負担だけが続いたり、将来的にさらに権利関係が複雑になったりするリスクもあります。

こうした問題を解消する方法の一つが「分筆」です。土地を物理的に分割し、それぞれを単独名義にすることで、売却や活用の自由度を高めることができます。ただし、分筆には一定の条件があり、手続きや費用もかかるため、事前に全体像を理解しておくことが重要です。

この記事では、共有名義の不動産を分筆するための条件や具体的な流れ、メリット・デメリット、かかる費用について分かりやすく解説します。自分にとって分筆が適切な選択かどうかを判断するための参考にしてください。

第1章 共有名義の不動産を分筆するための条件

共有名義の不動産は、全て自由に分けられるわけではありません。分筆を行うためには、以下のような条件を満たす必要があります。

  • 共有者の過半数が同意している
  • 分筆後の面積が0.01㎡以上になる
  • 隣地の所有者から協力が得られる

ここでは、共有名義の不動産を分筆するために押さえておきたい基本的な条件を解説します。

1-1 共有者の過半数が同意している

共有名義の不動産を分筆するには、共有者の同意が必要です。従来は全員の合意が前提となり、意見がまとまらないと手続きが進みませんでした。

しかし、2023年4月の民法改正により、共有物の管理や変更に関するルールが見直され、共有者の持分の過半数の同意で決定できるケースが認められるようになっています。

そのため、行方不明の共有者がいる場合や、一部の共有者が反対している場合でも、条件によっては分筆を進められる可能性があります。

1-2 分筆後の面積が0.01㎡以上になる

土地を分筆するためには、それぞれの区画が登記できる最小単位である0.01㎡以上の面積を確保しなければなりません。極端に小さな面積に分割することはできず、土地の広さや形状によっては希望通りに分筆できないケースもあります。特に、もともとの面積が小さい土地や、細長い形状の土地では注意が必要です。

また、自治体によっては建築基準や条例により、最低敷地面積が定められている場合もあります。この場合、単に分筆できるだけでなく、「建物が建てられるかどうか」まで考慮することが重要です。

1-3 隣地の所有者から協力が得られる

土地を分筆する際には、隣接する土地との境界を明確にする必要があります。そのため、隣地の所有者の立ち会いや承認(境界確認)が求められるのが一般的です。

境界が確定していない状態では、分筆後の土地の範囲が曖昧になってしまい、将来的なトラブルの原因になります。そのため、分筆手続きの中では、隣地所有者との合意形成が重要なポイントとなります。

しかし、隣地所有者と連絡が取れない場合や、境界について意見が対立する場合には、手続きが進まないこともあります。特に、古くからの土地で境界が不明確なケースでは、調整に時間がかかる可能性が高いでしょう。

このように、分筆は自分だけで完結する手続きではなく、周囲の協力が必要になる点に注意が必要です。スムーズに進めるためにも、早い段階で隣地所有者との関係性や状況を確認しておきましょう。

第2章 共有名義の不動産を分筆する流れ

共有名義の不動産を分筆する流れは以下の通りです。

  1. 土地家屋調査士に依頼する
  2. 登記簿上の境界と土地の状態を確認する
  3. 分筆案を作成する
  4. 土地に境界標を設置する
  5. 隣地の所有者からサインをもらう
  6. 土地分筆登記を申請する
  7. 所有権移転登記を申請する

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

2-1 土地家屋調査士に依頼する

共有名義の不動産を分筆する場合、まずは土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。土地家屋調査士は、土地の測量や境界確定、分筆登記を専門とする資格者であり、分筆手続きの中心的な役割を担います。

分筆では、正確な測量や境界の確認が求められるため、専門知識がないまま個人で進めるのは現実的ではありません。特に相続不動産の場合は、古い図面や不明確な境界が原因でトラブルになることもあるため、早い段階で専門家に相談することが重要です。

なお、土地家屋調査士は、日本土地家屋調査士連合会のホームページから探せます。専門家ごとに費用が異なるため、依頼前には相見積もりを取っておくのが望ましいでしょう。

2-2 登記簿上の境界と土地の状態を確認する

土地家屋調査士に依頼した後は、登記簿や図面などの資料をもとに、土地の境界や現況を確認します。まず、法務局に登記されている情報と、実際の土地の状態が一致しているかを確認することが重要です。そのためには、公図や地積測量図、登記事項証明書などが必要です。

これらの資料と現地の状況を照らし合わせ、境界や土地の状態にズレがないかを確認します。もし、隣地との境界が不明確な場合や図面と現地の状態が一致しない場合は、境界確定測量を行う必要があります。

境界確定測量とは、隣地所有者や道路管理者(自治体など)と立ち会いのもとで境界を確認し、合意を得る手続きです。関係者が多くなるほど調整に時間がかかるため、分筆手続き全体の中でも時間を要する工程です。

また、共有名義の場合は共有者全員で立ち会うのが原則ですが、代表者のみで対応するケースもあります。さらに、公道との境界を確定する場合は、役所への申請や確認作業が必要となるため、追加で時間がかかる点にも注意が必要です。

2-3 分筆案を作成する

隣地や道路との境界がすべて確定した後、どのように土地を分けるかを決める分筆案を作成します。分筆案は単なる下書きではなく、役所や隣地所有者への説明資料としても使われるため、正確かつ慎重に作成する必要があります。

また、分筆案を検討する際は、単に面積を均等に分ければよいわけではありません。分筆後の土地の形状や道路との関係によって、資産価値や活用のしやすさが大きく変わるためです。

例えば、不整形な土地や間口が狭く奥行きが長い土地は、建物の配置が難しく、活用しづらいため評価が下がる傾向があります。さらに、前面道路との接道状況が悪い場合は、「日当たりが悪い」「車の出し入れがしづらい」といった理由から、資産価値が低くなる可能性があります。

さらに、建物を建てるためには、原則として幅員4m以上の道路に2m以上接している必要があります。この条件を満たさない場合、再建築ができないなど利用制限が生じ、土地の価値に大きく影響します。

このように、分筆案の作成では単純な面積だけでなく、分筆後の土地がどのように使えるかまで考慮することが重要です。共有者全員にとって納得感のある分け方にするためにも、専門家と相談しながら慎重に検討しましょう。

2-4 土地に境界標を設置する

分筆案が確定した後は、実際の土地に境界標を設置します。境界標とは、土地の境界を示すための目印であり、コンクリート杭や金属プレートなどが使用されます。

境界標を設置することで、分筆後の土地の範囲が明確になり、将来的なトラブルを防ぐことに繋がります。図面上だけでなく、現地でも境界が確認できる状態にしておくことが重要です。

2-5 隣地の所有者からサインをもらう

境界標の設置が完了した後は、隣地所有者に境界の内容を確認してもらい、承認(署名・押印)を得る必要があります。隣地所有者と連絡が取れない場合や意見が合わない場合には、手続きが進まないため、協力を得られるように事前に相談しておきましょう。

2-6 土地分筆登記を申請する

必要書類が揃ったら、法務局に対して土地分筆登記を申請します。土地分筆登記に必要な書類は以下の通りです。

  • 登記申請書
  • 境界を確認できる書類(​​境界確認書や道路境界確定証明書など)
  • 地積測量図
  • 現地案内図
  • 委任状

この手続きにより、1つの土地が複数の土地として正式に分けられ、それぞれが独立した不動産として扱われるようになります。分筆登記は専門的な書類作成が必要となるため、通常は土地家屋調査士が代理で申請を行います。

2-7 所有権移転登記を申請する

土地の分筆をしただけで、共有名義の土地が単独名義になるわけではありません。分筆登記が完了した後は、それぞれの土地を単独名義にするために所有権移転登記を行う必要があります。

所有権移転登記は、司法書士に依頼して進めるのが一般的です。必要書類の作成や申請手続きを代行してもらえるため、スムーズに所有権移転登記を終えられるでしょう。

第3章 共有名義の不動産を分筆するメリット

共有名義の不動産を分筆するメリットは以下の通りです。

3-1 共有状態を解消できる

分筆を行う最大のメリットは、共有状態を解消できる点です。

共有名義のままでは、不動産の売却や活用には原則として共有者全員の同意が必要となります。そのため、意見が合わない場合には何も決められない状況に陥ることもあります。

分筆によって単独名義になれば、他の共有者の意向に左右されることなく、自分の判断で意思決定ができるようになります。

3-2 共有持分の状態より高値で売れる

共有名義のままでは、共有持分だけを売却することも可能ですが、買い手が限定されるため、一般的に売却が難しくなります。

共有持分は「他人と共同で所有する権利」であるため、購入後に自由に使えないリスクがあり、個人の買主から敬遠されやすいのが実情です。そのため、専門の買取業者に安く買い取られるケースも少なくありません。

一方で、分筆によって単独名義の土地にすれば、通常の不動産と同じように市場で売却できるようになります。買主の対象が広がることで、売却のハードルが下がり、結果として有利な条件で売却できる可能性が高まります。

3-3 土地を自由に活用できる

分筆によって単独名義になると、その土地を自分の判断で自由に活用できるようになります。例えば、売却だけでなく、賃貸として貸し出したり、建物を建てたりといった活用も、自分の意思で進めることが可能です。共有名義のままでは制限されていた活用が可能になることで、不動産の価値を引き出しやすくなります。

第4章 共有名義の不動産を分筆するデメリット

共有名義の不動産を分筆するデメリットは以下の通りです。

4-1 共有者から同意を得るのに時間がかかる

共有名義の不動産を分筆するためには、共有者の同意を得る必要があります。2023年の民法改正により、持分の過半数の同意で進められるようにはなりましたが、話し合いが長期化するケースもあるでしょう。さらに、相続によって共有者の人数が多い場合や、遠方に住んでいる場合、連絡や調整に時間がかかることもあります。

4-2 分筆方法によっては価値が低下する

分筆は共有状態を解消できる一方で、分け方によっては土地の資産価値が下がります。面積を均等に分けたとしても、不整形な土地になったり、間口が狭くなったりすることで建物が建てにくくなるケースがあります。

また、前面道路との接道条件が悪くなると、日当たりや使い勝手が悪くなり、評価が下がってしまうでしょう。さらに、建築基準法上の接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接する)を満たさない土地になってしまうと、再建築ができなくなり、資産価値が下がります。

4-3 固定資産税が上がる可能性がある

分筆を行うことで、固定資産税が上がる可能性がある点にも注意が必要です。住宅が建っている土地は、小規模宅地の特例や一般住宅用地の特例によって固定資産税が軽減されています。

しかし、分筆によって建物のない土地(更地)を取得すれば、特例は適用されません。その結果、これまで軽減されていた部分の税額が上がり、固定資産税の負担が増えます。

第5章 共有名義の不動産の分筆にかかる費用

共有名義の不動産の分筆にかかる費用は以下の通りです。

5-1 土地家屋調査士への依頼費用

分筆にかかる費用の中でも大きな割合を占めるのが、土地家屋調査士への報酬です。費用の目安は25万円〜100万円程度ですが、土地の状況によって大きく変動します。

特に、境界が確定していない土地では境界確定測量が必要となり、費用は数十万円〜100万円程度、土地の面積が広い場合には100万円〜数百万円になるケースもあります。一方で、すでに境界が確定している土地であれば、測量の手間が少なく、10万円〜20万円程度で完了する場合もあるでしょう。

5-2 登録免許税

分筆登記の登録免許税は、分筆後に増える土地1筆につき1,000円が課税されます。例えば、1つの土地を2つに分ける場合は2,000円、3つに分ける場合は3,000円がかかります。

5-3 所有権移転登記費用

分筆後に土地を単独名義にするためには、所有権移転登記が必要になります。登録免許税として固定資産税評価額の0.4%(4/1,000)が課税されます。

また、登記手続きは専門知識が必要となるため、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士への報酬は、5万円〜10万円程度かかります。その他、登記に必要な書類(境界確認書・地積測量図・現地案内図など)の取得費用として、数千円の実費がかかります。

まとめ

共有名義の不動産は分筆することが可能です。ただし、手続きは複雑で専門的な知識が必要になるケースが多いため、土地家屋調査士や司法書士に相談しながら進めるのが望ましいでしょう。

住まいの賢者では、相続不動産の分筆や売却に関する無料相談を受け付けています。自分のケースで分筆が最適かどうか迷っている方は、まずはお気軽にご相談ください。

共有名義の不動産の分筆に関してよくある質問

ここでは、共有名義の不動産の分筆に関してよくある質問に回答します。

共有者が反対していても分筆できますか?

2023年の民法改正により、共有者の持分の過半数の同意があれば分筆を進めることが可能です。そのため、一部の共有者が反対していても、他に同意する共有者がいれば分筆ができるでしょう。

分筆以外に共有名義を解消する方法はありますか?

共有名義を解消する方法は、分筆だけではありません。例えば、他の共有者に持分を買い取ってもらったり、不動産全体を売却して現金で分けたりする方法があります。また、共有持分のみを売却することも可能です。

それぞれメリット・デメリットが異なるため、自分の状況に合った方法を選ぶことが重要です。迷った場合は、不動産会社や専門家に相談して最適な進め方を検討しましょう。

この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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