生前贈与された不動産の一部売却は可能?手続きや税金・費用を解説

生前贈与された不動産の一部売却は可能?手続きや税金・費用を解説
執筆者: 中西孝志

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はじめに

生前贈与で取得した不動産について、「一部だけ売却できるのか」「どの範囲まで売れるのか」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

結論からいうと、生前贈与された不動産でも、名義変更が完了しており、売却する範囲が明確であれば一部売却は可能です。ただし、土地の一部を売却する場合は、測量や境界確認、分筆登記などが必要になるケースがあります。

この記事では、生前贈与された不動産の一部売却が可能なケースや、売却を検討すべき状況、具体的な流れ、かかる税金・費用について分かりやすく解説します。

第1章 生前贈与された不動産の一部売却は可能

生前贈与された不動産であっても、一部だけを売却することは可能です。生活資金の確保や維持管理の負担軽減などを目的として、一部売却が検討されることがあります。

ただし、不動産を一部だけ売却する場合は、通常の不動産売却よりも手続きが複雑になる点に注意が必要です。「どの範囲を売るのか」を明確にするために、測量や境界確認、分筆登記などが必要になります。

また、土地であれば必ず自由に分筆できるわけではありません。接道義務や最低敷地面積などの建築基準法・自治体の条例に抵触する場合は、分筆後の土地が建築不可となったり、分筆自体が実質的に難しくなったりするケースもあります。そのため、一部売却を検討する際は、「そもそも分筆できる土地なのか」を事前に確認することが重要です。

さらに、生前贈与された不動産であっても、名義変更が完了していなければ売却できません。まずは、現在の登記名義が誰になっているかを確認する必要があります。

第2章 生前贈与された不動産の一部売却を検討すべきケース

生前贈与された不動産の一部売却を検討すべきケースは以下の通りです。

  • 贈与税や相続税の支払い資金を確保したい
  • 生活費や介護費用などまとまった資金が必要
  • 維持管理に手間・費用がかかる
  • 活用するのが難しい

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

2-1 贈与税や相続税の支払い資金を確保したい

生前贈与で不動産を取得した場合、贈与税が発生するケースがあります。また、将来的に相続が発生した際には、相続税の納税が必要になる場合もあるでしょう。

しかし、不動産は現金のようにそのまま納税へ充てることができません。そのため、「資産はあるが、納税資金が足りない」という状況に陥るケースもあります。

特に相続税は、原則として相続開始から10ヶ月以内に納付しなければなりません。そのため、相続発生後に慌てて不動産を売却しようとしても、期限に間に合わなかったり、急いで安く売却せざるを得なくなったりする可能性があります。

このような場合、不動産の一部を事前に売却して現金化しておくことで、贈与税や将来の相続税の支払い資金を確保しやすくなります。

2-2 生活費や介護費用などまとまった資金が必要

結婚費用や教育費、老後資金など、まとまった現金が必要になった場合も、不動産の一部売却を検討すべきタイミングの一つです。生前贈与を受けた直後は、「とりあえず保有しておこう」と考えていても、生活環境の変化によって急に資金が必要になるケースは少なくありません。

例えば、以下のようなケースです。

  • 自分や家族の医療費・介護費用の支払いが発生した
  • 学費や塾代などの子供の教育資金を用意したい
  • 金利が上がっているので住宅ローンを繰上返済したい
  • 老後に向けた資金を確保しておきたい
  • 住み替え資金を準備したい

不動産は資産価値が大きい一方で、現金のようにすぐ使えるわけではなく、生活の変化に対応しにくい側面があります。そのため、「手元資金に余裕を持ちたい」「将来の支出に備えたい」と感じている場合は、一部売却による現金化を検討しても良いでしょう。

2-3 維持管理に手間・費用がかかる

生前贈与された不動産を所有していると、維持管理のために継続的な手間や費用が発生します。例えば、マンションであれば管理費や修繕積立金の支払いが必要となり、築年数が古くなるほど修繕費用が増えるケースもあります。土地の場合でも、草刈りや清掃、境界管理などの対応が必要です。

また、遠方に住んでいる場合には、郵便物の確認や各種手続き、管理対応などが負担になることも少なくありません。さらに、利用予定がないまま放置すると、空き家・空き地化による老朽化や、突発的な修繕費が発生するリスクもあります。

このように、維持管理の負担が大きい不動産は、保有し続けるメリットよりも負担の方が上回ります。そのため、一部売却によって管理対象を減らし、負担軽減を図ることも選択肢の一つです。

2-4 活用するのが難しい

生前贈与された不動産であっても、立地条件や物件の状況によっては、有効活用ができません。例えば、駅から遠い土地や、形状が不整形な土地、築年数が古い建物などは、賃貸や事業利用に繋げにくいことがあります。

また、「自分で利用する予定がない」「賃貸に出したいが借り手が見つからない」といったケースも少なくありません。賃貸に出しても、築年数や立地条件によっては、思うように収益化できない場合もあるでしょう。

活用できないまま維持し続ければ、固定資産税や管理費などの負担だけが発生してしまいます。そのため、活用が難しいと感じている場合には、一部売却によって不要な部分を整理し、資産全体を見直すのが望ましいでしょう。

第3章 生前贈与された不動産を一部売却する流れ

生前贈与された不動産を一部売却する流れは以下の通りです。

  1. 贈与契約書や登記名義を確認する
  2. 売却する範囲を決める
  3. 測量・境界確認を行う
  4. 分筆登記をする
  5. 不動産会社に査定を依頼する
  6. 購入希望者と売買契約を結ぶ
  7. 代金を受け取って不動産を受け渡す

それぞれ詳しく解説します。

3-1 贈与契約書や登記名義を確認する

まずは、生前贈与の内容と、不動産の名義状況を確認しましょう。

不動産の贈与は、口約束だけでも成立します。しかし、契約内容を書面で残していないと、「本当に贈与されたのか」を巡って後からトラブルになる可能性があります。そのため、贈与契約書が作成されているか、不動産の所在地や贈与日などの内容に問題がないか確認しておくことが大切です。

また、不動産を売却するには、受贈者への所有権移転登記が完了している必要があります。なぜなら、登記名義が贈与者のままでは、原則として売却できないためです。事前準備として、登記事項証明書を取得し、現在の所有者名義を確認しておきましょう。

3-2 売却する範囲を決める

次に、不動産のどの部分を売却するのか決めます。土地の一部を売却する場合は、「どこを残し、どこを売るのか」を明確にする必要があります。

また、土地であれば自由に分筆できるとは限りません。分筆後の土地が接道義務や最低敷地面積などの条件を満たさなくなると、建築制限がかかったり、資産価値が下がったりする可能性があります。

そのため、単純に「不要な部分だけ切り離す」のではなく、将来的な活用や売却後の使い勝手まで考慮して範囲を決めることが重要です。

3-3 測量・境界確認を行う

売却する範囲が決まったら、土地の測量や境界確認を行います。土地の一部を売却する場合は、「どこまでが売却対象なのか」を明確にする必要があります。境界が曖昧なまま進めてしまうと、売却後に隣地所有者とのトラブルへ発展する可能性もあるため注意が必要です。

一般的には、土地家屋調査士へ依頼し、隣地所有者の立会いのもとで境界確認や確定測量を行います。特に古い土地では、登記上の境界と実際の利用状況が異なっているケースも少なくありません。

また、測量結果によっては、当初想定していた面積で売却できないケースもあります。そのため、一部売却では「まず測量して現状を正確に把握すること」が重要になります。

3-4 分筆登記をする

分筆登記とは、1つの土地を複数の土地として登記し直す手続きです。これにより、売却する部分だけを独立した土地として扱えるようになります。

分筆登記は、一般的に土地家屋調査士へ依頼して進めます。測量図や境界確認の内容をもとに法務局へ申請し、新たな地番が付与されます。

ただし、土地であれば必ず分筆できるわけではありません。分筆後に接道義務や最低敷地面積などの条件を満たさなくなる場合は、建築制限がかかったり、資産価値が下がったりする可能性があります。

3-5 不動産会社に査定を依頼する

分筆登記が完了したら、不動産会社へ査定を依頼し、売却価格の目安を確認します。査定を受けることで、「いくらで売れそうか」だけでなく、「その土地に需要があるか」「どのように売却するのが適切か」といった点も把握しやすくなります。

査定方法には、周辺の取引事例などをもとに概算価格を算出する「机上査定」と、実際に現地を確認して価格を見積もる「訪問査定」があります。

特に一部売却では、土地の形状や接道状況によって価格が大きく変わるため、より正確に把握したい場合は訪問査定を依頼するのがおすすめです。

また、不動産会社によって査定額や販売方針が異なることもあります。そのため、複数社へ査定を依頼し、「どのような売却方法を提案してくれるか」まで比較しながら進めることが重要です。

3-6 購入希望者と売買契約を結ぶ

購入希望者が見つかったら、売買条件を調整したうえで不動産売買契約を締結します。

契約時には、売買価格や引渡し時期、売却範囲などを契約書へ明記します。土地の一部売却では、「どこまでが売却対象なのか」が重要になるため、測量図や境界確認書類なども併せて確認しながら進めるのが一般的です。

また、土地の状況や法令上の制限について、買主へ事前に説明する必要があります。例えば、接道状況や建築制限、越境物の有無などは、後々のトラブル防止のためにも重要な確認事項です。

3-7 代金を受け取って不動産を受け渡す

売買契約を締結した後は、買主から売買代金を受け取り、不動産を引き渡します。一般的には、残代金の受領と同時に所有権移転登記の手続きを行い、正式に買主へ名義を移転します。併せて、鍵や関係書類なども引き渡します。

また、住宅ローンが残っている場合は、抵当権抹消手続きが必要になるケースもあります。
なお、不動産を売却して利益が出た場合には、譲渡所得税が発生する可能性があります。そのため、売却後は確定申告が必要になるケースもあるため注意しましょう。
特に、生前贈与された不動産は、取得費や所有期間の考え方が通常の売却と異なる場合があるため、税理士などの専門家へ相談しながら進めると安心です。

第4章 生前贈与された不動産の一部売却でかかる税金・費用

生前贈与された不動産を一部売却する際には、売却代金を受け取れる一方で、様々な税金や費用が発生します。特に、一部売却では通常の不動産売却に加えて、測量や分筆登記などの費用が必要になるケースもあるため、事前に把握しておくことが重要です。

また、売却によって利益が出た場合には譲渡所得税が発生する可能性もあります。想定より手元に残るお金が少なくなるケースもあるため、費用を踏まえたうえで売却計画を立てることが大切です。

ここでは、生前贈与された不動産を一部売却する際に発生する主な税金・費用について解説します。

4-1 仲介手数料

不動産会社を通じて売却する場合は、仲介手数料が発生します。仲介手数料とは、不動産会社が買主探しや契約手続きなどを仲介した際に支払う成功報酬です。

仲介手数料の上限は法律で定められており、売買価格が400万円を超える場合は、一般的に「売却価格×3%+6万円+消費税」で計算されます。例えば、2,000万円で不動産を売却した場合、仲介手数料の上限は「2,000万円×3%+6万円+消費税」となり、72.6万円(税込)が目安となります。

4-2 印紙税

不動産売買契約書を作成する際には、印紙税がかかります。印紙税とは、契約書や領収書などの文書に対して課される税金で、不動産売買契約書には契約金額に応じた収入印紙を貼付して納税します。

印紙税額は、契約金額によって異なるのが特徴です。例えば、契約金額が1,000万円超5,000万円以下の場合、本則税率では2万円、軽減措置適用時では1万円です。

なお、不動産売買契約書には一定期間、軽減税率が適用されています。ただし、適用期限が設けられているため、契約時点で最新の制度を確認しておきましょう。

4-3 譲渡所得税

不動産を売却して利益が出た場合には、譲渡所得税が発生します。譲渡所得税は、「売却価格−(取得費+譲渡費用)」で計算した譲渡所得に対して課税される税金です。

取得費には、不動産の購入代金や購入時の諸費用などが含まれます。また、譲渡費用には、不動産会社へ支払う仲介手数料や測量費など、売却のために直接かかった費用が含まれます。

なお、生前贈与された不動産の場合、取得費や所有期間は贈与した人のものを引き継ぎます。また、所有期間によって税率が異なり、所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年超の場合は長期譲渡所得として扱われます。税率は以下の通りです。

所有期間税率
5年超(長期譲渡所得)所得税:15.315%
住民税:5%
合計:20.315%
5年以下(短期譲渡所得)所得税:30.63%
住民税:9%
合計:39.63%

4-4 測量費

土地の一部を売却する場合は、売却範囲を明確にするために測量が必要になるケースがあります。特に、隣地との境界が確定していない土地では、境界確定測量を行う必要があり、土地家屋調査士へ依頼するのが一般的です。

費用は土地の広さや形状、隣地の状況などによって異なりますが、目安としては25万円〜100万円程度かかるケースが多くなっています。

また、土地が広い場合や、境界確認に時間を要する場合には、さらに高額になることもあります。一方で、すでに境界が確定している土地であれば、費用を抑えやすいでしょう。

4-5 分筆登記費用

分筆登記では登録免許税もかかります。登録免許税は、分筆後の土地1筆につき1,000円が課税されます。例えば、1つの土地を2つに分ける場合は2,000円、3つに分ける場合は3,000円が必要です。

まとめ

生前贈与された不動産でも、一部だけを売却することは可能です。

ただし、通常の不動産売却とは異なり、測量や境界確認、分筆登記などが必要になるケースがあります。また、分筆方法によっては資産価値が下がったり、希望通りに売却できなかったりする可能性もあるため注意が必要です。

さらに、売却時には譲渡所得税や仲介手数料、測量費などの費用も発生します。そのため、「どの範囲を売るべきか」「そもそも売却すべきか」を含め、事前に慎重に検討することが重要です。

住まいの賢者では、生前贈与や相続による不動産の分筆や売却に関する無料相談を受け付けています。不動産の一部売却を検討している方は、まずはお気軽にご相談ください。

生前贈与された不動産の一部売却によくある質問

ここでは、生前贈与された不動産の一部売却によくある質問に回答します。

名義変更が終わっていなくても一部売却できますか?

原則として、名義変更(所有権移転登記)が完了していなければ売却できません。不動産を売却できるのは、登記上の所有者であるためです。

生前贈与を受けていても、登記名義が贈与者のままでは、受贈者が自由に売却を進めることはできません。そのため、まずは贈与契約の内容を確認し、所有権移転登記を済ませておく必要があります。

一部売却で損をする可能性はありますか?

土地を一部だけ売却すると、分筆後の土地形状や接道状況によっては、残った土地の資産価値が下がります。例えば、土地が細長くなったり、使い勝手が悪くなったりすると、将来的に活用しにくくなるケースもあります。

また、一部売却では、測量費や分筆登記費用など通常の不動産売却にはない費用が発生します。さらに、売却益が出た場合には譲渡所得税もかかるため、想定より手元に残る金額が少なくなることもあるでしょう。

この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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